狂った躯体壁の「直角」を、仕上げで調整していた!
研究施設の改修工事で実際に一番手間取ったのは、外壁タイル工事だった。調査の段階でタイルの浮きを調べたところ、ほとんどのタイルが浮いていた。剥離、剥落してる箇所も多い。酷い箇所では、総重量にして100kgもの塊が落下していた。
調査の結果、元のコンクリートの躯体壁の直角が狂っていることが判明。それをタイル壁面の仕上げで調整したのだろう。幾層にも下地を塗った痕跡も見つかり、タイル貼代は最大120になっていた。
そこで私は、工事中のタイル落下を考え、建物への出入口を最小限に集約し、仮設屋根を設けることにした。そして落下寸前の危険なタイルを全部除去したのだが、その量が予想をはるかに上回る面積になった。
しかし、全部のタイルを貼替える予算は組まれていないという問題が出てきた。一応、公共工事であるため、予備調査が行われた上で、予算は組まれている。そこで総工事費の仕事の内訳を変更し、総工費はそのままで工事を続けることになった。
工事の中身を変えられない以上、どこかで金額の調整をしなければならないので、金額の大きい順に同等の代価品を考え、節約案を練った。が、タイルに掛けられる金額の上限が決まっただけで、必要数のタイルを全数貼替えるまでは届かなかった。
結局、浮き部分はエポキシ樹脂注入後ピン固定として、剥落部分はアンカー打設にステンレス網を絡ませ、樹脂モルタルを塗ってから新たにタイルを貼った。
タイルの色も当然焼き色が違い、自然なまだら模様になるように配置するのは相当苦労した。
改修工事は「変更」への心構えが必須
他にも、屋上の防水、各階のバルコニーの工事の時間と時期調整など、職人には随分と苦労をかけた。
フタを開けてみるまで分からないのが改修工事だが、本工事もまさしくその通りだった。どんなに事前調査をしても、いざ工事を開始すれば、予想外の事態に見舞われる。
だからこそ、住んでる人や使用している人がいる建物の改修工事では、工事の説明や時期、打ち合わせ内容が変更になることも珍しくないと肝に命じておくべきだろう。