工事の進捗状況、コスト管理もできる施工管理支援システム「T-BIM 5D」
コンピュータ上にある3次元の建物デジタルモデルに、仕上げ、管理情報などの属性データを追加したBIM(Building Information Modeling)データ。
そこに、さらに工期・コストに関する情報を連動させた施工管理支援システム「T-BIM 5D」を、大成建設が開発しました。
このシステムの最大のポイントは、工事の進捗状況や出来形などが「見える化」できることです。「T-BIM 5D」では工期の遅延などを瞬時に把握することができ、そこに注力して遅れを取り戻すことができます。
一目見るだけで、誰でも工事の進捗状況を感覚的に把握しやすく、非常に効率的な施工管理が可能になりました。
問題は「計画工程」と「実際の施工状況」のズレ
通常の工事現場では、計画工程と実際の施工状況を常に照らし合わせて進捗管理します。しかし、必ずそこにはズレが生じてしまいます。
建設工事の現場では、土工の掘削、鳶工の仮設足場組立、鉄筋工の配筋作業、大工の型枠組み立て、生コン(コンクリート)の注入、左官屋の均し、サッシ工の建具取付けなど、数多くの専門工事業者が、仮囲いの中、各持ち場で同時に作業をしています。
ゼネコンでは、それぞれの専門工事業者の仕事がスムーズに進められるようにトラックでの資材の搬入、資機材のクレーン揚重などを調整し、工程に遅れが出ないように管理しているのですが、これまでは経験豊富な工事関係者でなければ、正確な状況把握がなかなか困難でした。
そこで、大成建設では、工事の進捗状況を迅速、かつ確実に把握できるよう「T-BIM 5D」による「見える化」を実現。さらに、数値化を導入することで、工事の専門家でなくても正確な進捗状況を容易に確認できるようにしたのです。
大成建設の「T-BIM 5D」の3つの特徴
「T-BIM 5D」の大きな特徴は以下の3つです。
- 工程表のスライドバーを動かすと、計画工程と実施工程、それぞれの施工状況をアニメーション化したものを見て把握することができます。さらに、特定の日時における工事の進捗状況の確認も日時を入力するだけで簡単に行えます。
- 工程について、工事が順調に進捗している場合はグリーン、完了した部分は黒、遅れている作業は赤に、それぞれ色分けされています。そのため、たちまちのうちに施工状況を把握することが可能です。特に、遅延している場合でもひと目で確認できるので、早期に対策を講じるのに役立ちます。また、視覚を使って感覚的に確認できるということは、誰が見ても進捗を把握、瞬時に対応することが可能になったという意味でも工事の進捗に大きな影響を及ぼします。「T-BIM 5D」がもたらした成果は、それだけではありません。進捗段階におけるコストも画面に表示されるので、コスト管理も容易に行えるようになったのです。
- 動画ファイルで出力が可能「T-BIM 5D」に登録されたデータは、動画ファイルとして出力することも可能です。客先等の工事関係者に工事の進捗状況をアニメーション化して見せることができ、視覚的に訴えられます。
このシステムは、競技場や事務所ビル、商業ビルなどさまざまな建設現場において実例があり、工程遅延防止のため出来形(既に工事が出来上がった部分)、出来高(出来形に相応する請負代金)を視覚的に管理することができる効率的な施工管理ツールです。
直接コストの圧縮に影響を及ぼすものではありませんが、工事における10%以上の生産性の向上という効果を期待するものとして開発されています。
大成建設では現在、このシステムをBIM活用プロジェクトに適用。より効率的な施工管理のために活用するとともに、工事の進捗状況の説明や、工事における生産性向上のためのツールとして役立てていく方針です。