9割が不合格の資格「コンクリート主任技士」
コンクリート業界以外の人には、耳なじみのない資格がある。
- コンクリート技士
- コンクリート主任技士
- コンクリート診断士
の3資格だ。これらコンクリート関連の資格は、日本コンクリート工学会が認定する民間資格でありながら、生コン業界で知らない人は一人もいない資格だ。圧倒的に不合格になる人が多い難関資格としても名が通っており、コンクリート主任技士に至っては合格率約1割である。
知名度の高いところで合格率が約1割の資格というと、一級建築士(11%)、行政書士(10%)、公認会計士(8%)などだろう。これらの資格は知名度も高い分、合格のための講習・講座も数多い。ネット上で検索すると、ヒット数はコンクリート資格の比ではない。
しかし、コンクリート技士・主任技士の受験者は、そもそも講習・講座がないので、過去問をひたすら解く以外の手法を取らざるを得ない。
- 過去問5年分をひと通り
- 知らない言葉は丸暗記
- 計算問題は捨てる
正直、コンクリート技士ならば、この手法で合格する人もいる。コンクリート技士の場合、小論文もないからだ。
しかしコンクリート主任技士の場合、この限りではない。コンクリート主任技士は体系的な知識・状況に適応する応用力・思考を伝える構成力が求められる。しかし、これらを総合して学べる講習・講座は今までどこにもなかった。
そんな中、GNN(元気な生コンネットワーク)が「技士100%、主任技士90%合格」を謳い文句に「GNNアカデミー」を開校した。
そんなGNNアカデミーのコンクリート技士・主任技士の試験合格講座の一部を「施工の神様」で連載していく。
コンクリートの大原則 「耐久的」
コンクリートの大原則として、下記の2つがある。
- 可能な限り水量を少なく
- しっかりと養生する
生コン従事者にとっては「耳にタコ」だが、では一歩踏み込んで「なぜ水が少ない方が良いのか?」「なぜ養生が重要なのか?」を説明できるだろうか。
その答えは、ひと言でいうと、「コンクリートを耐久的にするため」である。
では、「耐久的」とはどういうことか?
コンクリートの置かれる状況は過酷である。 夏は日射を受け、冬は寒風にさらされる。 豪雨に濡らされ、夜は冷やされ、雪が積もれば凍りだす。
実質、人の代わりに耐えている。 それがコンクリートの使命であり目的である。
過酷な環境で耐久的であるのに必要なことは、コンクリートを緻密にし、外部からの劣化要因の侵入を抑えることである。
では、「緻密なコンクリート」にするためにはどうするのか? その答えこそが、「可能な限り水量を少なくする」である。
水量が多いコンクリートの中には「毛細管空隙」と呼ばれる微細な隙間が多く現れるからだ。
「毛細管空隙」の化学式を覚えるコツ
コンクリートの構成材料をご存じだろう。 「砂利・砂・セメント・水」→「骨材+ペースト」である。 この中の「セメント+水」(ペースト)の量が、毛細管空隙の量に正比例する。
補足だが、骨材「砂利+砂」の中には毛細管空隙は現れない。
練り混ぜ時に必要だった水は、生コンの凝結と共になくなっていく。 浮いてきたり、反応したり、蒸発したりと様々な要因による。 この「水がなくなった跡」こそ、毛細管空隙が現れる要因のひとつ。 よって、水は少なければ少ないほど良い、という結論にたどり着く。
この「毛細管空隙」 は適切な養生により、少なくなる。
専門的な解説をすると、セメント中の「けい酸カルシウム水和物」(C-S-H)が毛細管空隙を埋める働きをするのである。
微細な隙間に膨張したC-S-Hが充満していくというイメージ。
化学式が出てきたことで気持ちが萎えただろうか?
コンクリート技士の問題では、暗記しなければいけないことが多々ある。しかし憶えるためには、コツがある。片っ端から憶えるなんてナンセンス。
そのコツはこうだ。
まず最初に覚えるのは3つだけ。
- C(Ca)カルシウム
- S(Si)ケイ素
- A(Al)アルミニウム
聞きなじみのないものは、「S(Si)ケイ素」くらいのものだろう。ケイ素なのに、なぜ Si?、と思うだろうか。
「ケイ素」とは英語名で「シリコン」(Silicon)のこと。聞きなじみのある言葉に関連付けて覚えてほしい。
実際に使うのはシリカ(二酸化ケイ素:SiO2)だが、今はいい。とりあえず、化学式を見て拒否反応するのだけを避けてほしい。
次回は「普通ポルトランドセメント」について解説したい。C、S、A、この3つを頭に入れてから臨んでほしい!
なつかしいです。