良い仕事をする法面屋がいる
役所が発注する工事には、法面工事というものがあります。法面工事とは、例えば、山を削って高速道路などを通す際に、山の側面が崩落しないように、コンクリートなどで覆う工事のことです。道路や橋梁、トンネル工事に比べ、日常生活で意識することが少ない、マイナーな工事分野だと言えます。
ある人から「良い仕事をする法面屋がいるよ」と指摘され、取材することにしました。「法面屋」にとって、良い仕事とはどのようなものなのか。仕事のやりがい喜びとは何なのか。サクセス工業株式会社(高知県高知市)に所属する工事部主任の篠崎敦史さんと、職人の前田浩士さんに話を聞いてみました。
ロープでぶら下がる法面工事の安全衛生管理
篠崎さんは地元工業高校を卒業後、サクセス工業に入社。今年で18年目で、現場一筋。入社前は法面工事に関するイメージは、ほとんどなかったそうで、「漠然と土木の仕事に就くんだろうなという程度で、サクセス工業のウワサを耳にして、たまたま入社」したそうです。
法面工事の現場では、施工管理に従事してきました。法面工事は、作業員がロープでぶら下がって作業をするので、常に危険と隣り合わせの現場がほとんどです。安全衛生管理は大変だろうと思われますが、「僕の場合、幸い大きな事故などには遭遇していません」と言います。安全面で気をつけていることは、「作業員さんに安全を意識させること」だそうです。
法面工事に限らないと思いますが、「こういうことをしたら、危ない」ということは誰でも理解していることです。それでも、事故が起こるのは、個人のちょっとした「意識、気の緩み」によるものだからだそうです。「いくら安全装備を充実させても不十分。最終的には個人の意識です」と話しています。
安全衛生管理には、経験もモノを言います。篠崎さんが入社して間もない頃、ある現場で、ベテランの作業員さんが山の状態を見て、「ちょっと怖いな」と言ったことがありました。言われた場所を篠崎さんが見ても、ピンときませんでしたが、「万が一、崩れたら危ない」ということで、周辺の資材などを動かしておきました。昼休みになって、現場を後にした直後、法面がドサッと崩落しました。
「作業員さんは、ロープにぶら下がって、ずっと現場を見ているので、亀裂の変化や水の出方などいろいろいなモノのちょっとした違いにすぐ気づきます。感覚的なモノですよね。施工管理をしていると、なかなかそこまでは分からない。今でも、スゴイなと思います」。
法面という言葉自体、はじめて知りましたが、こういう仕事をプロとして生業にしてくださる方に感謝です。
仕事の意識もかっこいい!
大雨警報や土砂災害警戒情報など、最近はよく耳にします。「土砂崩れで、法面ごと流されました」…など、斜面の崩落は、大きな被害となります。
災害を防ぐ、また 最小限に食い止めるためには、土木、そして 法面などの基礎工事が何より重要ですね。
地味で、ありふれた景色にしか見えないため評価されにくいけれど、とても大切な工事だと 、理解しました。
これからは 路肩の景色も、工事に関わった方々に感謝と尊敬を持ちながら、気にして見ることにします。
また、解るひとには、良いものはきちんと伝わります。どうぞ、誇りを持って、これからも良い仕事を続けてください。それが、国土全体の、そして私たちの未来の安全に繋がることですから。