各球団が地域密着やボールパーク化による施策を進め、新たなファン獲得に乗り出したことから、2019年には過去最多となる観客動員2654万人を記録。
その後、新型コロナウイルスの影響により、入場制限や声出し応援の禁止など様々な規制がありましたが、徐々に規制が解除され、各球場ではコロナ禍前の光景が戻りつつあります。
野球場やその在り方が注目されている今こそ、建設の観点も含めて球場の魅力を再発見していくため、プロ野球12球団の建設費と施工者を、ランキング形式で紹介していきます。
1位 福岡PayPayドーム 760億円
- 開場:1993年
- 建設費:760億円
- 設計者:竹中工務店、前田建設工業共同企業体
- 施工者:竹中工務店、前田建設工業共同企業体
福岡PayPayドームは、福岡県福岡市にある福岡ソフトバンクホークスの本拠地球場です。
特徴は、世界で2番目、日本では初となる大規模開閉式屋根構造です。厚さ4mにもなる3枚の金属板をスライドさせることで開閉する仕組みになっています。チタンを使うなど軽量化していますが、屋根の重さは1枚約4,000t、3枚で合計1万2,000tにもなります。これをわずか20分で開閉することができます。1994年に「第35回BCS賞」を受賞しています。
2位 ES CON FIELD HOKKAIDO 600億円
- 開場:2023年
- 建設費:600億円
- 設計者:大林組、HKS
- 施工者:大林組、岩田地崎建設
エスコンフィールドHOKKAIDOは、北海道北広島市にある北海道日本ハムファイターズの本拠地球場です。
特徴は、敷地面積5ha、収容人数3万5000人で、観客エリアは掘り込み式フィールドから地上4階まで広がります。また、球場内には、世界初となるフィールドを一望できる天然温泉とサウナが併設されています。ほかにも、日本最大級の子どもの遊び場や球場内ホテル、外にはグランピング施設もあり、野球観戦だけでなく様々な体験ができます。
3位 京セラドーム大阪 498億円
- 開場:1997年
- 建設費:498億円
- 設計者:日建設計(協力:竹中工務店、大林組、電通)
- 施工者:大阪ドーム建設共同企業体連合(大林組、竹中工務店、清水建設、前田建設工業、大日本土木、鴻池組、奥村組、フジタ、西松建設、銭高組、熊谷組)
京セラドーム大阪は、大阪府大阪市にあるオリックス・バファローズの本拠地球場です。
特徴は、世界初となる天井部分を上下に動かすシステム「スーパーリング」(ドーム屋根の周囲を包む波型の部分)です。アリーナ空間の高さを最大72mから最小36mまで上下させ、野球の試合などでは高く、コンサートでは音響効果を向上させるために低く設定することが可能な設計…だったのですが、制御装置の電子部品を製造するメーカーが部品生産を中止したため、今は動かすことなく地上60mで固定されています。
4位 札幌ドーム 422億円
- 開場:2001年
- 建設費:約422億円
- 設計者:原広司、アトリエ・ファイ建築研究所、アトリエブンク
- 施工者:大成建設、竹中工務店、シャール・ボヴィス共同企業体
札幌ドームは、北海道札幌市にある北海道日本ハムファイターズの旧本拠地で、現在はJリーグ・北海道コンサドーレ札幌のホームスタジアムです。日本ハムファイターズが本拠地を移すまでは、世界でも珍しい野球とサッカーの2つのプロチームの本拠地として使用されていました。
特徴は、日本で唯一の完全屋内天然芝サッカースタジアムで、天然芝サッカー場移動方式「ホヴァリングシステム」を世界で初めて採用しています。縦120m、横85m、重さ8,300tの巨大な天然芝のステージが、空気圧によって7.5cm浮上し、34個の車輪を使い分速4mで移動することで、サッカー用天然芝グラウンドと野球用人工芝グラウンドの併用が可能となっています。2002年に「北海道赤レンガ建築賞」、2003年に「第44回BCS賞」を受賞しています。
長くファイターズファンから愛された札幌ドームですが、北海道日本ハムファイターズの本拠地使用は、2022年をもって終了しました。
5位 バンテリンドーム ナゴヤ 405億円
- 開場:1997年3月12日
- 建設費:405億円
- 設計者:竹中工務店
- 施工者:竹中工務店、三菱重工業共同企業体
バンテリンドーム ナゴヤは、愛知県名古屋市にある中日ドラゴンズの本拠地球場です。
ドームの屋根中央部が特殊フィルムを貼った二重ガラスで作られているのが特徴で、ドーム球場ながら自然の光を採り入れることができる設計となっています。また、2016年には世界初となるドーム球場の屋根に太陽光発電システムを設置。1,152枚もの太陽電池シートを設置しました。
6位 東京ドーム 350億円
- 開場:1988年
- 建設費:350億円
- 設計者:竹中工務店、日建設計
- 施工者:竹中工務店
東京ドームは、東京都文京区にある読売ジャイアンツの本拠地球場です。
日本初のドーム球場として建てられた東京ドームの特徴は、空気の圧力差で屋根膜を支える空気膜構造です。 加圧送風ファンによってドーム内に空気を送り込むことで、ドーム内の気圧を外よりも0.3%(3hPa)高くして屋根膜を支えています。そのため、ドーム内から空気を逃がさないように、出入口が回転ドアとなっているのも有名です。
7位 QVCマリンフィールド 133億円
- 開場:1990年
- 建設費:133億円
- 設計者:富家建築事務所
- 施工者:大成建設、清水建設、西松建設、熊谷組、五洋建設
QVCマリンフィールドは、千葉県千葉市にある千葉ロッテマリーンズの本拠地球場です。
バックネット裏に海(東京湾)が位置するという立地が特徴で、場内に風向計と風速計が設置され、電光掲示板で風向と風速を確認できるようになっている珍しい球場でもあります。また、幕張新都心計画における主要構想として建設され、ランドマークとしての役割も担っています。
8位 ベルーナドーム 100億円(ドーム化費用)
- 開場:1979年
- 建設費:100億円
- 設計者: 早稲田大学池原研究室(球場建設)、石山建一(設計アドバイザー)、鹿島建設(ドーム化工事)
- 施工者:西武建設、鹿島建設(ドーム化工事)
ベルーナドームは、埼玉県所沢市にある埼玉西武ライオンズの本拠地球場です。
「屋内屋外中間型」というコンセプトで、世界初の既存球場のドーム化が行われたのがベルーナドームです。観客席部分に金属屋根が取り付けられ、屋根は24本のV字型柱で支え、壁を設けていません。そのため、ドーム球場ながら場外ホームランが生まれることもあります。また、自然豊かな狭山丘陵に位置し、環境と調和させるため、シンブルな構造となっています。
9位 MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島 90億円
- 開場:2009年
- 建設費:約90億円
- 設計者 :仙田満(環境デザイン研究所)、金箱温春(金箱構造設計事務所)
- 施工者:五洋建設・増岡組・鴻治組JV
MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島は、広島県広島市にある広島東洋カープが本拠地球場です。
これまでの球場には珍しい、様々なアイデアを取り入れたメジャーリーグ型のボールパークを目指し、設計者である仙田満氏が提唱する、人が集まる建築の7原則「遊環構造」と、構造建築家の金箱温春氏の無駄のない、徹底した合理的な構造設計により、野球観戦の楽しさと低コストを両立しています。施工者は、広島県呉市で創立した五洋建設と増岡組、広島市に本社を置く鴻治組と、広島にゆかりのある企業が担当しました。
10位 楽天生命パーク宮城 70億円(改修費用)
- 開場:1950年
- 建設費:70億円(改修費)
- 設計:鹿島建設(改修時)
- 施工:鹿島建設(改修時)
楽天生命パーク宮城は、宮城県仙台市にある東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地球場です。
その歴史は古く、過去にはロッテオリオンズ(現・千葉ロッテマリーンズ)が本拠地として使用していましたが、その後ロッテは移転。以降、著しい老朽化が問題となっていましたが、2004年の楽天の新規参入に伴い、宮城球場の本拠地利用と大規模改修が決まりました。最初の改修は「語り草になるほどの突貫工事」(鹿島建設)で行われましたが、その後も定期的に改修が行われ続け、球場内に設置された観覧車をはじめとしたボールパーク化を推進しています。
11位 横浜スタジアム 49億円
- 開場:1978年(昭和53年)
- 建設費:49億円
- 設計:創和設計
- 施工:清水建設や大成建設など11社によるJV
横浜スタジアムは、神奈川県横浜市にある横浜DeNAベイスターズの本拠地球場です。
日本初の多目的スタジアムとして建てられた横浜スタジアムは、可動式の内野スタンドとマウンドを日本で初めて取り入れています。また、建ぺい率の問題から、逆円錐の形となっています。横浜公園の中にあり、3つの最寄り駅からのアクセスはいずれも5分以内と、12球団屈指の好立地の都市型スタジアムとして、「コミュニティボールパーク化構想」を推進しています。
12位 阪神甲子園球場 250万円
- 開場:1924年(大正13年)
- 建設費:250万円
- 設計:野田誠三
- 施工:大林組
阪神甲子園球場は、兵庫県西宮市にある阪神タイガースの本拠地球場です。
全国高等学校野球選手権大会の開催を目的に、日本に初めて誕生した大規模多目的野球場で、すべての高校球児の憧れでもあり、野球の聖地と呼ばれています。設計は当時、阪神電鉄の社員で、のちに阪神タイガースのオーナーも務めた野田誠三氏。収容人数は日本の野球場の中で最大となる47,000人で、建設当時も非常に巨大でしたが、着工から竣工までわずか4.5カ月という短い工期で建てられました。
建設費は、当時の物価から概算すると約50億円となります。
13位 明治神宮野球場 53万円
- 開場:1926年(大正15年)
- 建設費:53万円
- 設計:小林政一
- 施工:大倉土木
明治神宮野球場は、東京都新宿区にある東京ヤクルトスワローズの本拠地球場です。
所有者は宗教法人明治神宮で、開場は1926年(大正15年)と、その歴史は甲子園に次いで古く、大学野球の聖地としても知られています。設計者は日本建築学会の会長も務めた小林政一氏です。歴史ある神宮球場ですが現在、神宮球場などを建て替える明治神宮外苑地区の再開発が進められています。今後は、新たな野球場は2028年に工事を開始し、2031年に完成、2032年に新たな野球場の使用が開始される予定です。
建設費は、当時の物価から概算すると約10億円となります。
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