建設業は、労働時間が長い業界です。特に工事現場での仕事は朝が早く、夜は場合によって深夜まで働くこともあります。徹夜になることも珍しくありません。そりゃあ、建設業に若手入職者も増えないわけです。
そこで最近、建設業界内で働き方を変えようとする試みがなされていますが、建設業の「働き方改革」を進める上で、かなり重要な役割を担っているのが、新たな技術開発や技術促進です。
スライド式鋼製型枠を用いたコンクリート打設
たとえば、私が経験した鉄道の地下化工事では、ボックスカルバート構築時のコンクリート打設に使用する型枠を、鋼製のスライド式型枠に変更。これにより型枠設置に伴う手間を軽減し、作業員や職員の負担軽減につながりました。
このスライド式鋼製型枠を用いる方法は、従来、鉄道の地下化工事ではあまり導入実績がありませんでしたが、建設業は全体的に効率化・合理化が求められていることから導入に踏み切りました。
構造物が大きかった当現場では、型枠を組み立てるのに相当な手間と時間が掛かるため、スライド式鋼製型枠を導入することで、作業員の負担軽減と工期圧縮を実現し、結果的に職員の残業時間も短くすることができました。
通常、コンクリート打設では、パネルを所定位置に設置し、釘を打って一体化し、単管などと一体化して自立させて型枠を作ります。コンクリートの打設日が決まれば型枠を動かすことは難しく、コンクリート打設日までに型枠を作ることは“厳命”と化していました。間に合いそうにないときは残業、ときには夜20~21時まで時間がかかったり、夜勤作業がある現場の場合はそこに組み込んだりしていました。
しかし、スライド式鋼製型枠を導入することで、通常の型枠設置の場合は1週間程度と見込んでいたものが、その半分ほどで済み、しかも型枠解体時の手間を省くこともできました。また、それによって浮いた手間を他の作業に当てることができ、工事の進捗もスピードアップしました。
鋼製型枠を使った構築は試行段階であり、また地下化工事での実績はあまり多くなかったので、どのような結果になるのか、どんな効果が期待できるのかなど、手探りの段階でしたがここでの効果検証によって他の現場へも広がりを見せつつあります。
労働時間の短縮につながるR&C工法
また当現場では、主要幹線道路と鉄道が立体交差するため、R&C(ルーフ・アンド・カルバート)工法を用いました。R&C工法とは非開削工事の方法の1つです。通常、推進工事ではコンクリートを使ってトンネルを構築するのですが、この現場では手間の省略化と工期短縮を目指して鋼製セグメントを採用しました。
このR&C工法を採用することは、もともとの設計にはなく、現場で設計変更を決め、施主と相談の上、採用が決まりました。R&C工法の導入によって、作業員のさらなる負担軽減と現場職員の労働時間短縮にもつながり、隣接工区よりも早い竣工につながったのです。
「働き方改革」につながる新技術
建設技術者として工期までに工事を完成させ、結果や成果も所定の品質をクリアしなければならないのは当然ですが、そこに至る過程は臨機応変に変えることは十分に可能です。もちろん勝手に変更することはいけませんが、期間が短くなる、作業が効率化できる、安全度のさらなる向上につながる、などの理由であれば意見は通りやすいものです。
働き方を変える「働き方改革」は、従来のやり方を変えたり、ひと工夫を加えることが求められます。作業員や現場職員の負担軽減につながるのであれば、どんどん新しい技術を試し、会社の枠を超えて業界全体に貢献すべきかもしれません。そこから派生して、新たな技術開発や「働き方改革」につながることも多いと思います。