全国で進展する「戸建性能向上リノベーション」とは?
21世紀はリノベーションの時代と言われている。そこでYKK AP株式会社は地域工務店や事業者と「戸建性能向上リノベーション実証プロジェクト」を全国で13物件展開し、今後の成長事業として位置付けている。
その一環として、株式会社アイジーコンサルティング (静岡県浜松市)とともに、築41年の古家にリノベーションを施した『for LONG名古屋の家』に取り組み、このほど竣工した。
そこで、株式会社アイジーコンサルティング常務取締役の立田裕樹氏、不動産事業部所長の山田英司氏、YKK AP株式会社リノベーション本部事業企画部住宅企画室室長の岩崎武氏にそれぞれ話を聞いた。
リノベーションで”新築以上の価値”を提供する
――「戸建性能向上リノベーション実証プロジェクト」を展開している背景からお願いします。
岩崎 武さん(YKK AP) 年々、新築戸建て住宅工事が右肩下がりとなり、今後も減少傾向が変わらない一方、リフォーム市場は、横ばいで推移していくことがそれぞれ予測されています。
今後、新築やリフォームを主体に事業展開されている工務店様の売上増加は厳しくなると予測されているため、なんらかの打開策が必要です。住宅を購入する全世帯のうち、中古住宅を購入する世帯の比率は2015年では約29%にとどまりますが、2030年には約48%にも上がっていくとの予測もあります。ここに新たなビジネスチャンスが到来すると考えております。
とはいえ、中古住宅の現状は、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合の診断結果によると、90%以上が倒壊の可能性があるかもしくは高い、さらに国土交通省の推計では、窓は90%がアルミフレームと単板ガラス相当であり、住宅の断熱性能が低い状況です。このままではお施主様が安全・安心・快適に暮らせない実情があります。
そこで、古くなった建物に”新築以上の価値”をあたえるをコンセプトに、「性能向上リノベーション」のプロジェクトがスタートしました。安全・安心に暮らしていただくために耐震性能を、健康・快適・省エネ環境で暮らしていただくために断熱性能を、それぞれ向上を目指しています。
具体的には、従来のリフォームでは設備や内装のみの交換で留まることが多いのですが、既存の中古住宅を性能向上するためには、きちんと解体をし、基礎・躯体を見える状態にし、不具合のある所をきちんと改修したうえで、耐震や断熱性能を向上し、さらに優れたデザイン力で設計して完成に至るというリノベーションの流れが必要になります。
この家づくりに求められる性能は、冬の体感温度が概ね13℃を下回らない「HEAT20のG2レベル」、震度6強に数回耐え得る「耐震等級3相当」へと向上する必要があると考え、それを実現しています。