現場監督なくして、現場の調和なし!役割と意義を理解しよう
現場監督というポジションは、実際にハンマーやノコギリを持って作業をするわけではないので、業界知識のない人には、普段何をしてる人なんだろうと思われることが多い職業です。なので、いざ自分がそのポジションに着くとなると、何をすればよいのか戸惑う方が多いように見受けられます。
しかし、家づくりの中において、現場監督というのは非常に重要な役割を占めます。その重要さを本人が知らないまま工程が進めば、きっとどこかで何かしらの問題が発生してくるでしょう。まずは、現場監督の役割と意義を理解していただき、具体的に何から始めるのがベストかをお伝えしていきたいと思います。
今回は具体的なHOW TOではなく、もう少し大きなカテゴリーのお話をさせていただきます。少しでも多くの、悩める若手現場監督が救われることを願っています。
1、現場監督の役割を知る
現場監督の役割は、滞りなく建物を完成させること。とてもシンプルです。しかし、ひとつの家作りには何十人もの人々が関係してます。それぞれが好き勝手に作業を進めていけば、現場はめちゃくちゃになってしまうことは容易に想像できますよね。
そこで、その現場の一本柱として現場監督という司令塔を置くことで、多くの人々のバラバラな動きや意思を一本化させているのです。つまり、現場監督がいなければ、施主に望まれた建物を滞りなく完成させることは、不可能だと言っても過言ではないのです。
2、どのような工種があるかを知る
家作りには沢山の職人さんたちが関わっています。基礎を作る人、躯体を作る人、屋根瓦を乗せる人、天井・床・間仕切りを作る大工さん、クロス、タイル、左官屋さんなど、数を上げればキリがありません。まずは稼働している現場に足を運び、職人さんの作業を観察してください。
そして、この人はどの工種の人で、どの作業を担当しているのかを把握しましょう。もう一歩踏み込むならば、その工種は、他のどの工種と密な関係があるのか調べてみてください。それを知ることで、段取りの精度が高まります。
3、工事の流れ、順番を知る
ひとつひとつの工種ごとに、工期が分断されているわけではありません。工事には流れがあり、その流れを止めることは工程の遅延を生む原因にもなります。
例えば、内装大工さんの工事中には電気や水道、ガスなどの設備業者さんが途中でタイミング良く入らないと作業が止まってしまいます。その流れを止めないように段取り、指示するのも現場監督の役割のひとつです。
4、材料を知る
工事で使う材料には様々なものがあります。まずは材料の名前と役割を覚えてください。それを知らないことには職人さんと話ができません。また、材料には特徴や特性があります。
例えば屋内でしか使えない材料や、養生期間を設けなければならない材料、傷がついたら補修が効かない材料など、材料の特性を知ることで、注意すべき点が浮かび上がり、取り返しのつかない事態を避けることができます。
5、受注、発注金額を知る
原価管理を行い、利益を確保することも現場監督の仕事の一つです。材料費はいくらになるのか、人件費はどのくらい必要なのかなど、予算と照らし合わせながら判断していく必要があるので、相場を把握していることが、適正な運営に繋がります。
また、現在行っている作業がもし失敗した場合、損失がどのくらいになるのかを頭で想像すれば、問題の大小を考慮することができるようになります。
6、取り巻く人々の役割を知る
現場監督は、現場だけに視線を向けていてはいけません。周りを見据えて、物事をスムーズに進める能力が求められます。社内では、沢山の人がそれぞれの役割を持って動いていますし、材料を製作する工場の人々や不動産屋、施主やその家族、はたまた近隣の方々など、多くの人が交わりあって成り立っています。
誰かが歯止めをかけるような行動をとれば、たちまち現場は止まってしまいます。時には働きかけ、時には説得して、円滑に物事を進めらるよう、気配りや工夫をしなければなりません。なるべく関係者と良好な関係を保ち、協力者を一人でも多く作っておくとよいと思います。
7、相手の顔と名前を覚える
人に仕事を依頼し、指示通りに実行してもらうことができなければ、司令塔たる役割は果たせません。しかしながら、100%思った通りに動いてもらうことは不可能です。なぜなら、その人はその人の意思を持ち、他人に指図されたくないと思っているのが普通だからです。
私の経験からお話しするとすれば、人に動いてもらうには、無理矢理押したり引いたりしてもダメで、気持ちよく誘導してあげる方法が一番スムーズです。誘導するためには、相手の心をがっちりと掴まなければならず、相手の名前と顔を覚えることはその第一歩となるのです。
それができてようやく、相手の心に語りかけることができるようになります。
8、対人メンタルを鍛える
繰り返すようですが、多くの人の協力のもと現場は成り立っています。つまり人との関係を無視しては、絶対に工事は上手くいかないのです。
ただ残念ながら、あなたに対して友好的に接してくる人ばかりではありません。時には敵意を持って接してくる人もいるでしょう。しかし、それを全て真に受け、こちらも敵対心を持って接してしまえば、良好な関係は途絶えてしまいます。
どんな人が相手でも、上手く渡り合える対人力を身につけられれば、難解な出来事でも上手くかわすことができるようになるはずです。
9、中立の立場で、正しい答えを導き出すノウハウを知る
現場の司令塔であるからには、いくつも発生する問題を遅滞なく解決し、指示を出す能力が必要です。しかし、必ずしもひとつの正解だけがあるわけではなく、いくつかの解決策からベストな道を選ばなければならない時があります。
そんな時にあなたが迷い、明確な回答が出せないと現場にも混乱が生じてしまいます。その時はあくまで中立の立場に立ち、現場状況や自分を俯瞰し、冷静に進むべき方向性を見出すようにしましょう。
10、根拠のない自信を持つ
まだ経験の浅い方は、周りのベテランの方から叱咤激励をもらい、自信を無くしてしまうこともあるでしょう。しかし、自分に自信を持ってない人を誰が司令塔と認めてくれるでしょうか。知識や経験ももちろん大事ですが、それよりも大事なことは、自分自身への尊敬と信頼です。言い換えればあなたが自信を持つことです。
もちろん、自信につながる知識や経験は、現段階ではまだないかもしれません。しかし、私はそこに根拠となるものなどは不要だと考えています。なぜなら、根拠のない自信を持ち続けていれば、知識と経験は後から遅れて付いてくるからです。
自分に自信をもって全力で仕事と向き合っているうち、気がついたらあなたは立派な一人前の現場監督になっていることでしょう。