設計と施工の乖離が大きい、山岳トンネル建設
以前、山岳トンネルの設計業務を何件か担当したことがあった。山岳トンネルの設計は、地質調査の結果に依存するところがある。
特に、地山分類とか補助工法の検討とか施工計画とか、地質調査の結果が大きく影響する。対象地山の地質の状況いかんで、支保構造がガラリと変わるからだ。それはそのまま施工計画へとつながり、掘削工法にも影響する。
TBMでいけるじゃん!と思っていたところ、実はNATMじゃないと掘り進められないということがわかったとか、そんな事態が発生することがある。実際に、東海北陸道の飛騨トンネルはTBMで掘り進めていたのに、最後は地質の影響でNATMにせざるを得なかったと聞く。
これは、ゼネコンでないと対処できないように思う。設計段階では、なかなか掘削工法を途中で変えるという提案はできないものだ。施工方法変更の根拠がない、もしくは乏しいからである。
方法を途中で変えるというのは、それなりの理由があってこそだ。設計段階で読み解くのは非常に困難であり、掘ってみて初めて判明することでもある。
それぞれの強みを活かすための役割分担
山岳トンネルは、掘ってみないとわからない。ある程度想定はできるものの、隅から隅まで調査でわかるわけではないし、地質がどう変化するのかなどは実際に見ないとわからないものだ。
設計は建設コンサルタントがしっかり取りまとめるが、あくまでも想定の上での成果である。それがそのまま工事で活用できるわけではなく、設計図書を踏まえつつ、ゼネコンが工事を進めながら変更をしていかざるを得ない。
山岳トンネルに限ったことではないが、特に山岳トンネルは設計と施工の乖離が大きい。それは発注者も認識しているし、ゼネコンも認識している。とはいえ、設計をやるならできるだけ精度が高い設計図書にしたいものである。
そこで、こういう分け方はどうだろうか?
内空断面検討や坑口の検討は建設コンサルタントが担い、地山分類や施工計画、仮設備計画はゼネコンが担うといった役割分担である。
設計の要素が強いところはコンサルが、施工の要素が強いところはゼネコンがという区分けだ。それぞれの強みをできるだけ活かしてプロジェクトを進めていくことで、より効率的に、かつ合理的に進められるのではないかと考える。
ECI方式や、コンサルとゼネコンのJVもあり
現状では、設計業務においてコンサルはここ、ゼネコンはここ、というように分けることはできない。しかし、ECI方式を活用すると似たような取り組みが可能である。
建設コンサルタントは通常通り設計を進め、ゼネコンは工事受注者として施工方法や施工計画を立案し、内容を設計にフィードバックする、というやり方である。
熊本地震の災害復旧事業では、二重峠トンネルにおいてECI方式が採用された。建設コンサルタントは通常のトンネル設計を遂行し、工事を受注予定のゼネコンが施工する立場から施工方法や施工計画を検討する。
そして互いにフィードバックし合い、それぞれの成果を取りまとめていく。その際、ゼネコンは見積もりまで算出し、発注者に提示、合意が得られれば工事契約となる。
この方式によって、建設コンサルタントとゼネコンが協力してプロジェクトを進めていくことができるのだ。発注者側の負担が増すことが懸念されるが、この方式の採用をどんどん検討していくのはどうだろうか。
また、意味合いは異なるかもしれないが、コンサルとゼネコンのJVやコラボという手段もいいのではないかと思う。読者の皆様はどうお考えだろうか。
ゼネコンマンです。
コンサルがからむと、四角四面のことしか言わないから出しゃばってくるな。そもそも、ゼネコン各社、なんちゃってコンサルみたいな内勤部隊がいるのでコンサルと組む必要はない。