工事監理を生業としている私が感じたこと
先日、しめさんの「なぜ設計士は建築現場で嫌われるのか?よくある7つの共通点」の記事を拝読して、現在専ら工事監理を生業としている私個人が感じるところがありましたので、つらつら書かせていただきたいと思います。やや便乗気味、かつ被る内容があるとは思いますがご容赦ください。
建築物を設計する建築士が工事監理を行う「設計・監理業務」一式業務となることが契約上多いと思います。当然、設計どおりに工事が行われているかを照合・確認することを、設計者である建築士が確認するのが普通の流れです。
しかし、何かしらの事情で、設計した建築士が監理できなかったり、会社の都合で設計した建築士が忙しかったり、設計と工事監理の部署が別々であったりすると、設計者と工事監理者が異なる建築士となる場合があります。私の会社は部署が分かれていることから、設計者ではない建築士が工事監理に従事しています。
今回の記事については、民間工事に軸足を置いて記載していきます。公共工事と民間工事は施工に係る考え方が異なるため、公共建築工事はまた後日記事にさせていただければと思います。
そもそも「工事監理」とは?
工事監理とは、建築士の独占業務で、建築士法第2条7項で「その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」と定義されています。
また、混同しやすい業務として、監理と呼ばれる業務もあります。監理業務委託契約によりその業務内容が定められおり、監理の業務内容は工事監理よりも幅広いものとなります。
監理は、工事監理の他に、建築主と施工者の間に入り調整業務を行うとともに、中間検査や完成検査等、建築に係る書類作成代行業務を行います。
設計と工事監理者が異なる場合に起こる問題
前述したとおり、私の会社では部署が分かれていることから、設計者ではない建築士が工事監理に従事しています。
設計と工事監理者が同じであれば、施工時に問題が生じた場合でも、自分自身で設計変更の対応ができるため、建築士自身の中で問題を処理することが可能です(ただし、計画変更が生じる際は当然、建築主の承諾を得る必要があります)。
設計と工事監理者が異なる場合、監理者の業務は設計図書がすべてのバイブルとなります。監理者の仕事は、設計図書どおりに建築物が施工されているかどうかを照合・確認することが全てです。現場で問題が生じた際、設計意図を設計した建築士に確認する必要があります。
ここで大きな障壁となるのは、設計した建築士の能力です。しめさんの記事にもありましたが、よくある問題として「図面に間違いや不明点が多い」というのがあります。この小さな間違いや不明点をいちいち確認するのが、本当に手間がかかるのです。
すべての設計者が設計時にディテールを考えているわけではない、ということが現場で問題が発生する大きな要因であると私は感じています。確認すると多いのが、「なんとなくそうした」とか「忙しくて何も考えておらず、確認申請を通すためにそうした」という無神経なものばかりです。建築士には現場を知らない方が多いというのが、施工時のしわ寄せとなっています。
今回は、工事監理業務に係る概要について述べました。今後、具体的な体験談もご紹介できればと思っています。コメント欄にてご意見を頂戴できれば幸いです。