住宅の骨組みが出来上がると、「上棟式(じょうとうしき)」を実施することがあります。具体的にどのようなタイミングで行うのかご存知ですか?
また、ご祝儀などの金額にもよりますが、10万円ほどの費用がかかる場合があります。「結構費用もかかるけど、上棟式は必ずしなくてはいけないのかな…?」と不安に思われている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、上棟式までに準備しておくものや服装、ご祝儀の相場、当日の流れなどの基礎的なことから、上棟式は必ず行わなければならないのかなど、知っておくべきポイントを全てご紹介します。
上棟式や棟上げとは?
上棟式とは?
木造住宅を建築する場合、柱や梁を組み立てた後で、屋根のもっとも高い部分に横たわる「棟木(むなぎ)」を取り付けることで骨組み部分の工程が完成します。
この最後の作業を「棟上げ(むねあげ)」と呼び、上棟式を開催してお祝いします。「棟上げ(むねあげ)」以外には、「建前(たてまえ)」や「上棟」と呼ばれることもあります。
つまり、上棟式とは、棟上げまでが無事に済んだこと、また、これからも問題なく工事が進むことを願って実施するイベントです。
施主(工事の発注者)はもちろんのこと、家族や親戚などの参加者もお祝いの場であることを意識し、喜ばしい気持ちで参加するようにしましょう。
ちなみに、家を建てる際には、上棟式のほかにも地鎮祭というイベントを行う場合もあります。地鎮祭は、工事を始める前にその土地の氏神様に土地を使用する許しを請い、工事の安全を祈願する神事です。地鎮祭を詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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必ずしも上棟式を行うわけではない
ただし、木造住宅であっても、必ず棟上げがあるというわけではありません。2×4工法や2×6工法、プレハブ住宅の場合、棟上げという工程自体がないため、上棟式を行わないというケースもあります。また、現代では施主の金銭的負担や、工事関係者への日程調整の負担などから、そもそも上棟式を実施しない場合も増えています。ですので、開催するかどうか悩んだら、まずは依頼しているハウスメーカーや施工会社に相談してみてください。
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上棟式の主催者は施主、進行は工事関係者
上棟式の主催者は施主が行うことが一般的ですが、基本的な段取りは、現場監督や棟梁などの工事責任者が行います。
進行も、段取りをした工事責任者などの工事関係者が中心となって行いますので、実際のところ、施主が主体的に準備することはほとんどありません。
上棟式の服装はセミフォーマルがおすすめ
上棟式はお祝いの場のため、服装はきちんとした印象のものを選ぶようにしましょう。フォーマルすぎる必要はありませんが、男性であればスーツにネクタイ、女性であればスーツかワンピースなどのセミフォーマルがおすすめです。
色合いも、男性であれば紺やグレーなどのオフィスにも相応しいもの、女性も紺やグレー、淡いパステルカラーなどの派手になり過ぎないものを選んでください。上棟式では、記念に写真を撮影することもあります。後で見返すことも考えて服装を選ぶようにしましょう。
ただし、靴はあまり高級ではないものが良いでしょう。まだ住宅が完成していないため、足元は土で、場合によってはぬかるんでいることもあります。ヒールが低くて歩きやすく、なおかつセミフォーマルな衣装に合うものを選んでください。また、雨の日は長靴も準備しておきましょう。
お祝い事である上棟式は、早めの日程調整を
上棟式はお祝い事なので、建築事において縁起が良いとされる日が選ばれます。開催できる日時が限定されるため、早めに現場監督や棟梁と話し合って調整しておくようにしましょう。
なお、当日雨が降っても、よほど激しい雨でない限り、そのまま上棟式は行います。上棟式を延期すると工事日程も調整しなくてはいけなくなるので、当日の変更はあまり現実的ではありません。
また、上棟式に雨が降ると「家が火事にならない」「福が家に降り込む」などと言われており、縁起が良いとされています。濡れても大丈夫な靴に履き替え、予定通り参加しましょう。
上棟式の当日の流れ
神主を呼んで上棟式を神事として行うこともありますが、近年では、施主とその家族、工事関係者だけで進めることも珍しくありません。神事においては祓いの儀式などがあるため、簡略化して行う上棟式よりは少し時間が長くなるでしょう。
とはいえ、式の大まかな流れは神事も簡略式もほぼ同じです。次の3つの段階に沿って進行します。
- 供え物を準備する
- 棟梁が清めの儀式と挨拶をする
- 施主や関係者が挨拶をする
1.供え物を準備する
上棟式を始める前に、布と台で簡易的な祭壇を作って供え物を整えます。工事関係者がすべて整えることもありますが、用意しているときに居合わせた場合は、施主や家族も手伝う意思を示すことができるでしょう。
場合によっては、施主が供え物を準備することもあります。その場合は工事関係者に供え物を渡してから、指示に従って海の幸や山の幸、お神酒などを配置してください。
2.棟梁が清めの儀式と挨拶をする
神主を呼ばずに上棟式を行う場合は棟梁が、神主に依頼して神事として上棟式を行う場合は神主が、清めの儀式を行います。清めの儀式とは建物や土地の四隅に水と米、酒、塩などをまいて建物や土地を清める行為のことです。
清めの儀式が滞りなく終わってから、棟梁や現場監督が祭壇の前に進み出て、工事の無事を祈願する挨拶をします。
3.施主や関係者が挨拶をする
上棟式の段取りを行った棟梁や現場監督の挨拶が終わった後に、施主が挨拶を行います。工事関係者をはじめとする多くの方の協力があったことで、無事に今日という日を迎えられたことに対する感謝の気持ちを伝えましょう。
最後に、上棟式を開催してくれた工事関係者に対して、お礼と今後の工事の安全祈願を伝えてください。その後、住宅メーカーや工務店のスタッフが挨拶することもあります。
上棟式で施主が準備するもの。ご祝儀の費用は?
上棟式には様々な準備が必要です。とはいえ、「うまくできるだろうか」と心配する必要はありません。上棟式を何度も経験している棟梁や現場監督が指南してくれるので、指示に従って必要なものを買い整えるだけで準備は完了します。
中には棟梁や現場監督が準備してくれるものもあるので、必ず相談してから購入するようにしましょう。
供え物
祭壇の供え物には、以下のものがあります。
- 海の幸:鯛、昆布などを添えることもある
- 山の幸:リンゴやモモなどの旬の果物
- 野の幸:トマトやかぼちゃなどの地面の上にできる野菜と、ニンジンや大根などの地面の下で育つ野菜
- その他:清酒、米、塩、水
お昼ご飯と宴会用の食事
上棟式が終わってから、工事関係者にお昼ご飯を差し入れることもあります。仕出し弁当に手作りのお味噌汁、あるいは、お蕎麦屋さんなど出前をしてくれるお店に頼んで、お昼ご飯を持ってきてもらうこともできるでしょう。
その後、宴会をする場合には、宴会用の食事とお酒などが必要になることもあります。分からないときは、建築会社などに相談してみましょう。
宴会をしないときは持ち帰り用の食事を準備
お昼ご飯を食べた後に、宴会をしないで解散するというケースも少なくありません。その場合には、持ち帰り用の食事を準備することもあります。
家で食べられるお弁当やお酒、おつまみなどをセットにして渡しましょう。ただし、必要かどうかは地域の風習や業者の方針にもよるので、まずは建築会社に相談してください。
参列者への手土産(引き出物)
上棟式に参列してくれた工事関係者や親戚などには、引き出物として手土産を渡すことが多いです。お酒と紅白のお餅、赤飯の3つをセットにすることが一般的ですが、お餅ではなく紅白のお饅頭をセットにすることもあります。
引き出物であることが分かるように、これらのすべてにのしをつけるようにしましょう。紅白の水引で表書きは「御祝」、下には施主の名字を記載します。
棟梁や大工さんなど、工事関係者へのご祝儀
棟梁や大工さんなど、工事関係者にはご祝儀を渡すことも多いです。しかし、中には受け取らない方針の業者もあるので、事前に建築会社に相談し、渡す場合は人数も確認しておきましょう。
棟梁に対しては1万円~5万円、現場監督には5千円~3万円ほど、大工さんなどその他の工事関係者には3千円~5千円ほどが相場です。新札を紅白の水引ののし袋に入れて、表書きは「ご祝儀」、下には施主の名字を記しましょう。
餅まきを行うこともある
上棟式では、餅まきを行うこともあります。餅まきの由来は、神様にお餅をお供えすることで厄災を祓ってもらうためと言われていますが、近年では、近所の方を招き、餅まきをすることで、「福をお裾分けする」「お世話になった方々へ感謝を示す」という意味も込められています。
餅まきを行う場合は、餅は奇数で、丸餅が良いとされています。
理由は、偶数=割り切れる、つまり縁を切る・別れを連想させるためです。また、丸餅を選ぶ理由は、四角い餅は餅まきの時に危ないことと、角が立つという言葉を連想させるため、避けたほうが良いとされています。
「上棟式をしない」という選択肢もある
上棟式をすることで、棟梁や現場監督と話す機会が得られるだけでなく、住宅に思い入れが生まれたり、一生に一度の忘れられないイベントになったりすることもあります。
しかし、ご祝儀などの金額にもよりますが、10万円ほどの費用がかかる場合もあるので、予算的に厳しいと感じることもあるでしょう。
上棟式は、必ずしなくてはいけないわけではありません。開催が難しい場合やしたくない場合などは、建築会社の担当者に相談してみてください。