国家資格でもある土木施工管理技士ですが、どのような資格か知っているでしょうか。土木施工管理技士は、生活をするうえで欠かせないライフラインの整備を行なっています。
仕事内容も幅が広く、災害復旧工事や古くなった建築物の建て直しなどさまざま。この記事では、土木施工管理技士の資格概要をはじめ、合格率や難易度などに触れていきます。
土木施工管理技士とはどんな資格?
土木施工管理技士は、工事現場の責任者としての仕事がメインです。主にどのような職業になり、どのような作業があるのか詳しく解説していきます。
そもそも施工管理とはどんな仕事か
施工管理とは、施工計画に基づいて、工事を計画通りに施工するための管理業務のことです。建設業界では、さまざまな分野の技能者・技術者たちが協力して、現場でひとつの建物・構造物を作り上げていきます。そのため、建設現場の作業を円滑に進めるには、現場全体を統率し、工程や品質などを管理する監督が必須となります。
施工管理は資格がなくてもできる仕事なので、未経験の方でも施工管理に就くことは可能です。ただし、将来は中規模・大規模な現場の責任者として活躍したい、スキルアップしたいと考えている方は、国家資格である「施工管理技士」を取得しておくと良いでしょう。資格を持っていることで、施工管理者としての技術・知識を証明することができます。
土木現場の重要な仕事に携われる
土木施工管理技士が携わる現場は幅広く、道路や河川、トンネル、ダムなど現場によって作業が異なることが多くあります。その際に、現場の計画を立てる重要な役割になるのが土木施工管理技士です。
発注のあった現場のスケジュールを立て、スムーズに進行できるように努めます。その他にも、工程管理から品質管理、作業員の安全管理など土木現場の主軸となる職業です。
1級土木施工管理技士と2級土木施工管理技士で分かれる
土木施工管理技士は1級と2級で分かれており、施工管理技士の資格を取得することで1級は監理技術者、1級もしくは2級であれば主任技術者として認められます。
監理技術者は、下請契約の請負代金総額4,000万円以上(建築一式の場合6,000万円以上)の現場では配置が必要となり、それ以外の現場では主任技術者を配置する必要があります。
需要が高まっており、年収アップも期待できる
土木工事では、専任技術者を営業所に配置する必要があり、施工管理技士の有資格者になることで、専任技術者の要件を満たすことができます。特定建設業は1級のみ、一般建設業は1級もしくは2級取得者が対象です。専任技術者の配置は義務になるため、継続的に必要とされる人材といえるでしょう。
近年、土木現場では人材不足が懸念されています。資格保持者はどの企業も求めているため、需要がとても高まっています。
また、1級土木施工管理技士の平均年収は約400万円、2級土木施工管理技士の平均年収は350万円前後と言われています。資格の難易度や、受験に必要となる実務経験の違いから、1級土木施工管理技士のほうが年収が高くなっています。
上記で記載した年収はあくまで平均年収です。建設業界では施工管理技士のニーズが非常に高いため、企業によっては資格手当てなどもあります。そのため、給与のベースアップや年収アップも期待できるでしょう。また、転職にも大いに役立ちます。
土木施工管理技士を取得するメリットとは
土木施工管理技士の資格を取得することで、いくつかのメリットを得ることができます。メリットを把握すると、資格を取得するためのモチベーションアップにも繋がるでしょう。ここからは、土木施工管理技士を取得するメリットについて紹介します。
昇給や昇進に有利
土木施工管理技士の中でも、1級は最高位の資格として認められ、資格取得後に昇給や昇進が期待できます。
また、土木施工管理技士の資格を持っていることで、国から企業に対して技術評価点が与えられます。1級の場合は5点、2級の場合は2点の加算がされることからも、昇給や昇進に繋がるといえるでしょう。
転職するときにも活かせる
建設業は人手が足りないといわれています。資格がなくても人材を求めている企業も多いですが、資格があることで、さらに転職には有利になるでしょう。
中でも、1級土木施工管理技士で若い世代の人材を求めている企業が多いので、資格を取得する際には1級を視野に入れるのがおすすめです。
土木施工管理技士の試験概要とは
土木施工管理技士の試験を受けるためには、日程や費用、概要を知っておく必要があります。1級と2級では少々内容が異なるので、チェックしておきましょう。
受験内容
土木施工管理技士の受験では、1級と2級どちらも一次検定はマークシート方式です。1級は96問の出題の中から65問を選択して解答、2級は61問の出題の中から40問を選択して解答しましょう。必要解答数のうち、60%以上が合格ラインとなります。
年度で補正されることもありますが、大きく合格ラインが変わるわけではないので、比較的挑みやすいのが特徴です。「土木一般」「専門土木」「法規」「共通工学」「施工管理法」といった幅広い分野から出題されるため、全ての分野を取り入れて勉強する必要があります。
二次検定では全て記述式になり、こちらも幅広い分野から出題されます。土木施工管理技士の受験には実技はありません。
また、一次検定の合格者には、2021年4月から「技士補」という新しい資格が付与されます。技士補を取得すると、二次検定から何度でも受験することができるのが特徴です。
受験資格・費用・試験日
土木施工管理技士の受験資格は、1級と2級で異なります。まずは、1級土木施工管理技士の受験資格を見ていきましょう。受験は一次検定と二次検定があり、そこでも受験資格が必要になります。満たしているのかを確認のうえ、資格取得に努めてください。
【1級土木施工管理技士・一次検定】
区分 | 学歴/資格 | 実務経験年数 (指定学科) |
実務経験年数 (指定学科以外) |
|
A | 大学卒業者 専門学校卒業者 ※高度専門士に限る |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 | |
短期大学卒業者 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者 ※専門士に限る |
卒業後5年以上 | 卒業後7年6ヶ月以上 | ||
高等学校 中等教育学校卒業者 専門学校卒業者 ※高度専門士・専門士を除く |
卒業後10年以上 | 卒業後11年6ヶ月以上 | ||
その他の者 | 15年以上 | |||
B | 高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専門学校卒業者 ※高度専門士・専門士を除く |
卒業後8年以上の実務経験(実務経験には、指導監督的実務経験を含み、かつ5年以上の実務経験の後、専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む) | – | |
C | 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 | 高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専門学校卒業者 ※高度専門士・専門士を除く |
卒業後8年以上 | 卒業後9年6ヶ月以上 |
その他の者 | 13年以上 | |||
D | 2級合格者 |
(一般財団法人 全国建設研修センターより引用)
【1級土木施工管理技士・二次検定】
- 1級土木施工管理技術検定・一次検定の合格者
- 上記「D」に該当をして一次検定に合格し、「A~C」もしくは以下(1、2)に該当する者
- 一次検定免除者
区分 | 学歴/資格 | 実務経験年数 (指定学科) |
実務経験年数 (指定学科以外) |
|||
1 | 2級合格後3年以上の者 | 合格後1年以上の指導監督的実務経験と専任の監理技術者の指導を受けた実務経験が2年以上を含む3年以上 | ||||
2級合格後5年以上の者 | 合格後5年以上 | |||||
2級合格後5年未満の者 | 高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専門学校卒業者 ※高度専門士・専門士を除く |
卒業後9年以上 | 卒業後10年6ヶ月以上 | |||
その他の者 | 14年以上 | |||||
2 | 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 | 2級合格者 | 合格後3年以上の者 | 合格後1年以上の専任の主任技術者実務経験を含む3年以上 | ||
合格後3年未満の者 | 短期大学卒業者 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者 ※専門士に限る |
– | 卒業後7年以上 | |||
高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専門学校卒業者 ※高度専門士・専門士を除く |
卒業後7年以上 | 卒業後8年6ヶ月以上 | ||||
その他の者 | 12年以上 |
(一般財団法人 全国建設研修センターより引用)
このように1級は、細かく受験資格が定められています。1級の資格取得を考えている方は、まず受験資格があるのかを確認しましょう。その他にも「一次検定免除者」の詳細や、細かい注意点がありますので、必ず事前に一般財団法人 全国建設研修センターのHPを確認してください。
次に、2級土木施工管理技士の受験資格について紹介します。
【2級土木施工管理技士・一次検定】
資格試験の実施年度において、満17歳以上になる方
【2級土木施工管理技士・二次検定】
- 2級土木施工管理技術検定・一次検定の合格者で、下記のいずれかに該当する者
- 一次検定免除者
学歴 | 実務経験年数 (指定学科) |
実務経験年数 (指定学科以外) |
大学卒業者 専門学校卒業者 ※高度専門士に限る |
卒業後1年以上 | 卒業後1年6ヶ月以上 |
短期大学卒業者 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者 ※専門士に限る |
卒業後2年以上 | 卒業後3年以上 |
高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専門学校卒業者 ※高度専門士・専門士を除く |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 |
その他の者 | 8年以上 |
(一般財団法人 全国建設研修センターより引用)
2級土木施工管理技士は、1級に比べると受験しやすいのが特徴です。そのため1級を目指している方は、まず2級取得を目指すのがいいでしょう。
さらに、試験を受けるために把握しておきたいのが費用と試験日ではないでしょうか。それぞれの試験日と費用は、以下を参考にしてください。
試験日 | 合格発表日 | 費用 | |
1級 一次検定 | 7月上旬 | 8月下旬 | 10,500円 |
1級 二次検定 | 10月上旬 | 1月中旬 | 10,500円 |
2級 一次検定(前期) | 6月上旬 | 7月上旬 | 5,250円 |
2級 一次検定(後期) | 10月下旬 | 1月中旬 | 5,250円 |
2級 二次検定 | 10月下旬 | 2月上旬 | 5,250円 |
2級 一次・二次検定(同日試験) | 10月下旬 | 2月上旬 | 10,500円 |
難易度
難易度は1級と2級で異なり、上位資格でもある1級は難しいとされています。それに比べて2級は、基本的な問題が多く出題されるため、事務員の方も多く取得しています。対策テキストや講習会も頻繁に行なわれているので、しっかりと基礎を学習することで資格取得できるでしょう。
1級は2級よりもさらに奥が深い問題が多いですが、基礎と応用をしっかり学習することで合格に繋がります。
過去の合格率推移
土木施工管理技士の合格率は、1級と2級で大きく違いはありません。年度によって合格率は変動しますが、1級も2級も学科試験では55~65%、実地試験では両方とも35%ほどの合格率です。(※令和2年度までは、一次検定は学科試験、二次検定は実地試験という名称でした)
1級のほうが難易度は高いといわれていますが、実際に試験を受けた方の中には、2級のほうが難しかったという声も少なくありません。そのため、比較的簡単な2級を先に受けるのも良いですが、受験資格がある場合は1級に挑戦してみるのもおすすめです。
土木施工管理技士を取得してキャリアアップ
土木施工管理技士の資格は、取得すると転職に有利になり、昇給や昇進も期待できます。現場仕事を行なう方には有利な資格になるので、取得して損はないでしょう。
加えて、新たに誕生した技士補の資格は、一次検定に受かれば資格取得となるため、受験に向けてのモチベーションもあがります。
土木施工管理技士は1級と2級がありますが、合格率は大きく変わらないので、上位資格でもある1級土木施工管理技士への挑戦も視野に入れてみてください。
1級土木施工管理技士と言っても、運転免許みたいなもんで、土木を生業とする者なら持ってて当たり前。
技術者で持ってる人と持ってない人を
収入面で比べても、資格手当の2〜3万円程度。
そんなにたいそうな資格ではない。