プレキャストコンクリートとは、工場でコンクリート材を作成し、現場に運んで組み立てる工法です。長い間住み続ける住宅建築において、どのような施工方法を採用しているのか知ることは大切です。
この記事では、プレキャストコンクリートの特徴やRC工法との違い、メリット・デメリットを解説します。
プレキャストコンクリートとは?
プレキャストコンクリートとは、規格化された壁などを構成するコンクリート部材を事前に工場で生産し、現地で組み立てることです。
規格化された壁などはPCパネルとも呼び、プレキャストコンクリートの製品はトンネル擁壁やマンホール、杭など幅広くあります。
また、プレキャストコンクリート(PCa)工法と似ている言葉で、RC工法があります。ここではどのような違いがあるのか解説します。
プレキャストコンクリート(PCa)工法とRC工法の違い
プレキャストコンクリート工法は、工場で生産したコンクリートを使用するため、大規模な建築に適しています。現場で組み立てるだけで完成するため、超高層ビルなどの外壁に最適です。
一方、RC工法はプレキャストコンクリートとは異なり、現場でコンクリートを打設するため、対応力に優れています。小規模な建築ではRC工法が適しており、デザインにこだわる場合はおすすめです。
プレキャストコンクリートの工程
プレキャストコンクリート工法の工程は、主に工場での生産と現場での組み立てです。工場では、部材の大きさごとに鉄筋・型枠セットが組まれて、そこにコンクリートを打設します。
打設したコンクリートの表面は作業員が綺麗にし、型枠セットを抜いたら完成です。できたコンクリート部材を現地に運び、現場の作業員によって接合し組み立てるとマンションの構造体が完成します。
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プレキャストコンクリート工法のメリット
工場であらかじめ部材を完成させるプレキャストコンクリート工法には、多くのメリットがあります。現場の天候に左右されないため、計画通りに作業でき、品質がばらつきません。
工期を短縮でき、工事中に発生する騒音は少ないため、建設現場の周辺への影響を抑えることができます。では、プレキャストコンクリート工法を活用する5つのメリットを見てみましょう。
メリット1.部材が高品質で均一化している
工場内で部材を生産するプレキャストコンクリート工法では、品質管理が徹底できるため高品質で均一化が可能です。RC工法では、現場でコンクリートを打設するため天候に左右されたり、作業者によって仕上がりが異なったりとコンクリートにばらつきが生じます。
一方、プレキャストコンクリート工法では、壁も地面に寝かせてコンクリートを打てるなど、高品質の部材の安定した生産が可能です。
メリット2.断熱・防音性が高い
コンクリート材には、隙間なく断熱材が張り付けられており、熱を通さず1年中冷暖房効果を維持できる住宅を作れます。コンクリート材やPCパネルは、壁式PCマンションと呼ばれ、使用する場所は主に集合住宅です。
さらに、プレキャストコンクリートは木造建物や軽量鉄骨に比べて防音性にも優れています。そのため、隣部屋の物音を気にしない生活が送れるでしょう。
メリット3.コストが安い
プレキャストコンクリート工法では、部材を工場で製造するため現場でコンクリートを打つ手間を省けコストを抑えられます。作業効率が良く工期を短縮できるため、敷地の借地料や機材のレンタル料、人件費の削減が可能です。
一般的に建築物の規模が大きくなると、部材数が増えるためコストが高くなりますが、工場でコンクリート部材を量産し現場で組み立てるだけのプレキャストコンクリート工法ではコストを削減できます。
メリット4.少ない人手でも工期を短縮できる
プレキャストコンクリート工法では作業を分担するため、現場の人手は少なくても問題ありません。大型部材は工場で組み立てるため、現場では設置作業のみおこなうため足場の設置が不要。
建築物が大きくなっても、部材が増えるだけで、人手を増やす必要はありません。少ない人手でも効率の良い作業により工期を短縮できます。
メリット5.環境に配慮している
RC工法の場合、木材で型枠を作成しますが、再利用は難しいため、建築物ごとに新しい木材を使用します。一方、プレキャストコンクリート工法であれば工場で規格化された鋼製の型枠を繰り返し使用するため、RC工法より資源の排出を抑えることが可能です。
現場で生じるコンクリート打設音や型枠を解体する音が生じないため、環境だけでなく現場周辺にも配慮できます。
プレキャストコンクリート工法のデメリット
在来工法と比べて、工場と現場で作業を分けることで、効率化できるプレキャストコンクリート工法ですがデメリットもあります。主なデメリットは、接合部の耐久性が低い・規格外への対応が難しい・早い段階で明確な計画が必要な点です。
では、プレキャストコンクリート工法の欠点となるデメリットを3つ紹介します。
デメリット1.接合部の耐久性が低い
プレキャストコンクリート工法は、コンクリートの接合部が弱点になりやすいです。コンクリートを組み合わせて建設するため、接合部の施工が甘いと漏水などの原因になります。
漏水を防ぐには、事前に防水処理に関する計画を立て、質の高い施工をおこなうことが重要です。組立作業が簡単な分、事前準備を念入りにする必要があります。
デメリット2.規格外への対応が難しくコストが増える
プレキャストコンクリート工法では、規格外の場所や形への対応が難しく、従来の枠を利用できないため専用の型枠を準備するコストがかさみます。
プレキャストコンクリート工法は型枠を再利用してコストを軽減していますが、専用の枠が必要な場合は生産ラインの再構築など工場の稼働を停止しなくてはなりません。
工場であらかじめ規格化した枠型を使用するプレキャストコンクリート工法は、在来工法に比べてデザインの柔軟性が劣ります。
デメリット3.早い段階で明確な計画が必要
プレキャストコンクリート工法は、早い段階での綿密な設計や、施工計画の検討をします。なぜなら、工場で生産するコンクリート材を使用するため、早期段階で明確な計画を立てないと、部材全体の厳格な検査が不可能なためです。
漏水の原因になりうる接合部をどのように施工するかなど、事前にしっかりと計画を練らなければ大きな失敗を招く可能性があります。
プレキャストコンクリートの特徴を理解しよう
この記事では、プレキャストコンクリートの特徴やRC工法との違い、メリット・デメリットを解説しました。プレキャストコンクリートはRC工法とは異なり、あらかじめ工場でコンクリート部材を生産します。
現場での作業は、コンクリート部材を組み立てるだけのため、少ない人手で作業でき足場の設置が不要です。プレキャストコンクリート工法は、現場の天候に左右せず、作業者の技術によって仕上がりが異なることもありません。
工場と現場で作業を分担しているため、効率が良く少ない人員で作業できるためコスト削減にもつながります。しかし、接合部の耐久性が低く漏水する危険性や規格外への対応が難しいため、在来工法に比べてデザインに欠けてしまいます。
施工方法を一度決めると途中で変えることができません。施工方法を決める際には、各工法をしっかりと理解し検討することが重要です。