多摩田園都市エリアで新たなまちづくりプロジェクトが始動
東急株式会社と株式会社シグマクシス・ホールディングス(東京・港区)は、多摩田園都市エリアにおける地域に根差した新たなまちづくりプロジェクト「nexus(ネクサス)構想」を始動。神奈川・川崎市に初弾となる「nexusチャレンジパーク早野」を4月に開業した。
この構想は、郊外で生活者起点での自由で豊かな暮らしの実現を目指し、「職」「住」「遊」「学」を融合した「歩きたくなるまち(Walkable Neighborhood)」を創り出す取組み。構想の拠点となる本施設では「農と食」というサステナブル・テーマを掲げ、地域住民が日常的に自由に活用する場、およびバディと呼ばれる本構想に共感した行政や企業の新サービス開発や実証実験の場として運営を開始する。
「nexusチャレンジパーク早野」では、東急の遊休地にシェア農園やトレーラーハウスなどを設置したが、今後、nexus構想については横浜市青葉区・川崎市宮前区周辺から本格的に進め、拠点となるチャレンジパークのような施設を3年間にわたり10か所で展開、戸建て開発も進めていくことを検討中だ。東急株式会社 沿線開発事業部開発第二グループの三渕卓担当部長は「スタートとなる両区全体規模は人口約55万人であるが、同エリアにとどまることなく、広げていきたい」と語る。
今回の新たなまちづくり構想について、三渕担当部長が全体像を、デザインについては監修した合同会社HOC(横浜市)のCEO/Designerの濱久貴氏が、施工については桃山建設株式会社専務取締役の川岸憲一氏がそれぞれ語った。
「nexusチャレンジパーク早野」がまちづくりの実験場へ
「nexus(ネクサス)」とは聞きなれない言葉だが、三渕担当部長の解説によると「つながり」などを意味する。多摩田園都市のエリアは非常に自然に恵まれた地域であり、豊かに生活したいというニーズも高く、「歩きたくなるまち」の形成に向け、さまざまな行政や企業と連携して実施することが「nexus構想」実現の根幹と言える。
今回開業した「nexusチャレンジパーク早野」は、敷地面積7,822m2で、「農と食」の循環をテーマとする。IoT機器を導入して、シェアリング型のコミュニティ農園「ニジファーム」を運営するほか、焚き火を楽しむ「ファイヤープレイス」やトレーラーハウスを中心とした「ネクサスラボ」などを設けた。先述したバディによる新サービス開発や実証実験の場としてだけでなく、農と食が身近にあるライフスタイルを実現するため、コミュニティ農園で作った作物を地域のレストランで調理して共に食すといった地域住民を巻き込んだコラボレーションを目指している。
東急は「農と食」のほか、「エネルギー」「モビリティ」などサステナブル・テーマを設けて、さまざまなバディ企業や行政と連携して社会課題の解決に向けた挑戦を進める。東急と共同で事業を進め、コンサルティングと投資の事業を核とするシグマクシス・ホールディングスの柴沼俊一執行役員は、「ここでスタートするまちづくりそのものが未来のまちの常識になっていくのではないでしょうか」と語った。
デザイン監修は合同会社HOC(横浜市)のCEO/Designerの濱久貴氏、Designerの渡部将吾氏が、施工は桃山建設株式会社(東京・世田谷区)がそれぞれ担当した。HOCは、企業の新事業や開発の全体ブランディングや、デザインを主な業務としている。代表作品に東京サマーランドのブランディング協力やデザイン監修業務がある。
「小さいものを試行錯誤してチャレンジできる場所があり、そこからまちづくりについて少しずつみなさんで話し合えることが重要だと考えています。まちの方向性を一緒に決めていくバディの一員として、今回のチャレンジパークを提案しました」(濱久貴氏)
一方、戸建て住宅工事をメインに業務を行う桃山建設と東急との出会いは、2018年に行った『青葉区を面白がる会』がキッカケ。地域工務店である一方、地域づくりにも注力する異色な企業だ。
「ものづくりを通じて、これまで場づくりを行ってきました。1年前に三渕様をご紹介いただき、全体施工をカタチにすることができました。私はこの地域で親子がかぶとむしを採集できる地元を目指して『横浜兜虫倶楽部』を設立し、腐葉土をつくり昆虫を増やし、親子が地域を楽しめる活動をしており、当施設でもこの活動を始めていきます」(桃山建設・川岸憲一専務取締役)
内覧会での説明が終わった後、各者に話を聞いた。