リフォーム事業を中心に4社の子会社を持つ株式会社NEXTAGE GROUP(東京都港区)は、数字だけでは判断が難しい施工職人や現場監督などの従業員のスキルや技術などの能力を可視化し、適切な人事評価につなげるため、 IT企業・株式会社カオナビ(東京都港区)が提供するタレントマネジメントシステム「カオナビ」を導入、職人領域の「人事D X」に着手した。
職人の世界の公平な評価は難しく、ともすれば”好きか嫌い”かで決まることもあるが、今回の「カオナビ」の導入で、資格、ID、健康状態や履歴書、職務経歴書を可視化し、職人を正当に評価し、賃金向上などの処遇を向上させる方針だ。
さまざまな革新的な取組みを展開するNEXTAGE GROUPの広報課主任の鶴岡美保さん、同グループ情報セキュリティ課のシステム・エンジニアディレクター兼CIOの竹内玄哉さん、関連会社のMED Engineering 部長の鈴木大介さんに話を聞いた。
職人の世界のスキルの可視化
――今回導入した「カオナビ」とは?
竹内氏 「カオナビ」は、株式会社カオナビが提供する、いわゆる”タレントマネジメントシステム”になります。社員の顔や名前、経験、評価、スキル、才能などの人材情報を一元管理して可視化することで、最適な人材配置や抜擢といった戦略的なタレントマネジメント業務を推進するものです。
雇用状態、資格、ID、健康状態、履歴書、職務経歴書、車両事故違反状況、面談記録、従業員タイプ別診断や各種申請などの情報を「カオナビ」により可視化することができるようになります。
――職人のスキルを可視化することが処遇改善につながるのでしょうか。
鈴木氏 当グループでは自社に施工職人や現場監督を抱えており、年間 6,000件の住宅のリフォーム工事を実施しています。 施工職人はその住宅に合わせてさまざまな専門分野の資格や、取り扱う商品ごとに必要なIDを取得しており、幅広い知識のもと顧客宅の工事を請け負っています。
しかし、施工職人が一人前になるまでには相当な時間がかかる上、経験する現場の状況や工事件数によっても成長速度が変わっていくため、個々のスキルや技術力を判断することができず課題を感じていました。
そのため、従業員一人ひとりの特性や特徴、 技術やスキルを把握した上での適材適所の配置、評価や育成が必要でした。
――能力の可視化というのはかなり難しく感じますが。
鈴木氏 おっしゃる通り、職人の評価というものは、誰が評価するかで変わりかねませんし、一言に”手先が器用”といっても、それでは抽象的な評価になってしまいます。また、5段階で数値評価をしたとしても、なぜその評価になるのか客観的な説明は難しく、評価の言語化はハードルが高いのです。
建設業界では職人の育成が最重要課題
――これから建設業界では職人の育成が大きなテーマと言われています。
鈴木氏 当グループは年に一度の住宅のアフターメンテナンスを通じて、新たなニーズを掘り起こし、サービスの提供を行うとともに、当グループと提携する企業のアフターメンテナンスの代行や工事を請け負っており、年々提携先が増加しています。
そのため、当グループがサービスを提供する顧客が増え、施工職人の育成が急務であると考えています。しかしながら、施工職人は細かな知識だけでなく、住宅の空間や生活をイメージしながら工事を行うため、職人気質のある人材の育成が難しい上、従業員のタイプ別の情報整理もされておらず職人同士の相性を把握した上でのチームづくりに課題がありました。
今回「カオナビ」を導入し、従業員をタイプ別に診断し、従業員同士の相性を可視化する機能を利用することで、若手職人の育成や相性の良いチームづくりに役立ていく予定です。
――職人が一人前になるにはどのくらいの時間がかかるものでしょうか。
鈴木氏 年数よりもどの現場を担当するかが重要だと認識しています。エコキュートの工事ではいま、交換工事が多いのですが、そればかりやっていると確かに交換工事は得意になりますが、新たにガスから入れ替える工事は得意にはなりません。ですから何年で一人前になるかと言えば、一概には言えません。
そこで、当グループではいろいろな工事に対応できるマルチタスクの職人になるよう誘導しています。一つの工種がある程度覚えられれば別の工事を担当してもらうことによって、多能工職人の育成を目指しています。
――指導される若手職人の悩みなどはありますか?
鈴木氏 指導する職人によって、指導内容が異なる点に悩みがあるようです。あの人はこれでいいといいますが、別の人はこれではだめだという。このことが原因で統一マニュアルを作成した背景があります。若手職人も一年目は先輩職人の作業のやり方を真似ていろんな工具を試しながらベストな手法を確立するのも良いと思います。
ただし、最初のうちは安全性を重視するため、例えば、刃先が鋭いカッターを使わず、電工ナイフの使用を推奨するなど工夫を凝らしています。また、マニュアルについては現状MED Engineering社の仕事に限定しています。
――「カオナビ」は能力評価以外にも使い道がありそうですね。
鶴岡氏 やはり人間には相性がありますから、この職人とであれば相性が良いというようなことも「カオナビ」のデータを使って分かります。
当社では新卒採用に注力し、新卒者の中には施工担当希望者も多いのですが、誰をメンターにすれば良いかということも「カオナビ」を使えば判断しやすいので、マッチングしながら新卒者や後輩を指導して欲しいと思っています。
社内DXはトップダウンからスタート
――もともと社内のDX化はいつ頃からスタートされましたか。
竹内氏 当グループは、「正確なデータの基盤作り」、「業務の属人化の解消による業務の標準化」「 2 重入力など手作業の削減」「 業務ルールの明確化と情報共有の基盤づくり」の4 つの課題を抱えていました。この課題解決と、今後のレガシー化に遅れをとることに危機感を覚えてDX 推進に着手したのが2018年12月です。基幹業務のDX化から着手し、あわせて従業員の意識改革を行うことによって業務DX化が定着しています。スムーズに導入できたのはトップの決断によります。
DX化により、当グループの作業スピードは格段に上がり、無駄な時間が削減できました。作業レベルのものはなくなり、考える仕事に注力できるようになった点は、生産性向上に大きく寄与しています。
――これから「カオナビ」を施工分野ではどう活用されますか。
鈴木氏 たとえば私は工事歴20年ですが、太陽光やエコキュートの経験や保有している資格などを「カオナビ」に明記することで、得意分野が分かりやすくなります。
また、基礎工事を長く担当していた職人が転職したてきた際でも、基礎工事でのキャリアを明記することでユーザにも職人のスキルが分かりやすくなります。職人といっても万能ではありませんから、得意・不得意はあります。基礎が得意であれば、基礎の現場に派遣するなどの活用方法はあります。
竹内氏 DXに関わる取組みには終わりがありません。今後、新たな知見が当然生まれ、そこから新たな取組みも生まれます。さらに新たな評価軸や判断軸も生まれますから、今後、育成も変化していくと考えています。
こうした取組みを通じて職人の処遇改善に向けて強化していきつつ、この取組みが浸透していけば当社のブランドアップにつながり、仕事のクオリティも高まりまると考えています。
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DXだとかいっても結局は管理する側の都合ですよね。根本は労働賃金が対価に合わないから働き手が増えないのですよ。
綺麗事行っても管理体制整えて高効率で管理してもロボットじゃないのだから現場で働く人が増えない限り成りて立たない。
机上の空論ばかりで労働者の実態を甘く身過ぎ。