大工の取り扱いをめぐる失敗事例
「大工が現場から逃げた!」ーー現場監督であれば、そんな経験は決して珍しくないだろう。
私は「大工は3日経てば逃げない」という自作のことわざを持っているほどだが、その心は「大工が逃げるのは大抵、工事に参加したての頃で、3日を過ぎると逃げない」という意味だ。
大工に逃げられただけなら、まだマシだ。大工に逃げられた後、予想外の事態に発展してしまった「大工の管理をめぐる失敗事例」を報告する。きっと現場運営の教訓になると思う。
大工が逃げたのは「2日目の朝」
これは立派な観光ホテルの建設工事に従事していたときの話だ。
職人さんも原則、朝礼に出席するはずなのだが、その日は朝礼に出ない職人さんがひとりいた。その職人を連れてきた親方に確認したが、 居場所が分からないと言う。
私は担当のJV職員から「おはよう、問題ないね」と 声を掛けられたが、「今のところ大丈夫」と答えるしかない。他の職人さんたちもいるし、今日も数人の新規入場者がいて、提出書類などで忙しい。まず朝礼が終わらないことには、ちゃんと確認しようもない。
朝礼後、携帯電話に親方から連絡が入り、道具がないから逃げたようだとの報告を受けた。この大工さんが現場から逃げたのは作業に入り2日目の朝である。私のことわざが、私の中でまた信憑性を帯びたわけだ。
予想通り、大工さん本人とは一切連絡が取れない状況である。私は一応、大工の逃亡を建前で残念がってみせるが、すでに頭の中は工程のことでいっぱいだ。
問題は逃げた理由だ。「何が原因で逃げたんでしょうね、怒らないので、どうにか連絡を取れますか?」 と親方に頼んだものの、この時点では皆目見当がつかない。単価は親方と取極めているので問題はない。あるいは現場の状態が悪く、稼げないと判断したか。いや、せっかく稼いだ1~2日分の日当を捨ててまで逃げるのであるから、工事に悪影響を及ぼすようなことをしでかしたのかもしれない。
今のご時世では、よほどのことがない限り賃金は支払われるし、むしろ賃金未払いのほうが問題になる時代だが、逃げれば本人の信用が失墜することになるのだから、何かしらの問題が現場で発生した可能性も高い。心配は増すばかりだ。
逃げた大工の担当箇所は「ホテル最大の目玉」
JV職員からは「工期に遅れのないように、しっかり頼むよ」の一言。反省の色を見せつつ、親方と現場で相談を開始した。
逃げた大工さんが手掛けていたのは、この観光ホテルで最大の目玉である、 最上階エレベーターホールの造作である。
誰が後任として手掛けるのか早く決めないと、他業者さんにも迷惑が掛かる。しかし大工さんの配置はほぼ終了し、ベストな状態なので難しい問題だ。一人を引っ張ってくれば、 今度はそこの造作に穴ができる。しかも場所が場所であるだけに、相当腕の良い大工さんでないと任せられない。
エレベーターを降りると目の前に寿司屋さんの大きい水槽が置いてあり、ホール全体が日本伝統の数寄屋風の仕上げとなっている。京都の町屋の通りを意識して設計されているのだ。実績のある職人さんなら、進んで手掛けたい仕事だ。正直、私自身も手掛けてみたい仕事である。実は私も元は大工であり、 大臣認定の建築大工一級技能士の資格を持っていて、一級建築士でもある。しかし、今の私の立場では労務管理、原価管理、安全管理、定例打合せ、本社との連絡など忙しい事この上なく、大工をやっているヒマはない。
親方と相談しているうちにも、他の大工さんから、 ひっきりなしに電話が入ってくる。とにかく早く人選を決めて、通常の状態に戻さなければならない。
逃げた大工さんが担当していた現場は、材料の確認、配置が済み、一部加工に入っている状態だ。結局、取極めの単価も把握してるし、直ぐに造作に入れるということで、後任が 現れるまでの繋ぎと言うことで親方が引き継ぐことで決着した。
この現場には、5人グループの親方、10人グループ の親方など、数人の親方がいるが、グループの問題は、その親方が処理するのは当然の筋であろう。人が足りなければ手配すればよいことだ。
これから工事が進めば、必ず職人不足が出てくる。まだまだ序の口だ。工期厳守に向け、これからどんな問題が発生するやら、考えただけでシビれる。
職人さんの生態とは?
やがて大工が逃げた原因が判明した。
造作材である京都北山杉絞丸太の桁材を、図面寸法より短く切断していたのだ。
しかし、このくらいの失敗であれば、私の経験上、「図面が分かりずらい」と逆に文句を言ってくる大工さんがほとんどだ。材料もそんなに高くないし、比較的手に入りやすい。
職人さんの多くは、契約書を交わして仕事をしている訳でなく、口約束の世界なので自己主張が強くないと生きていけない。おとなしくしていると食われてしまうのだ。建設現場では失敗は必ず発生するものであり、明らかな自分の責任でも、いろいろと他の失敗要素を見つけ出すことは、職人が生きていくための知恵でもある。
なので、これくらいのミスで責任を感じて逃げる大工さんがいることに驚いた。逃げることで、面倒くさい言い訳や、その後の後始末から逃げたのだろう。ーー定例会議があるので、私は早めの昼飯を食べながら、そう推測した。
しかし逃げれば済む話ではないし、皆に迷惑をかけ、少なからず損害も発生している。当初は、去る者は追わずという主義だったが、無責任を放置することは許されない。そこで、一部の問題と考えず、すべての大工職人を会議室に集め、講習会を開くことにした。
職人を全員招集したら不満続出!
さっそく私は、案内状を作成し、関係各位に配り、会場も確保した。親方だけでは信用できかねるので、職人全員を招集する。JV職員にも参加していただき、当社の 社長にも参加をしていただく。強制参加である。
いよいよ土曜日の夕方4時から、全体講習会を開始した。参加者は総勢約50人。しかし、これが失敗だった。
大工が逃げた経緯を説明し、今後の対策などを語る段取りであったが、初っぱなから大変なことになった。大工職人たちから、現場への不満が続出したのだ。この講習会は、たまっていた不満に油を注ぐ結果となった。不満続出で収拾がつかない状態になり、結局こちら側が職人たちの不満や現場での不具合を一つひとつ聞いて、今後は順次解決していくということでご理解いただき、ようやく解散となった次第である。
自分の首を絞める結果となったわけだが、「また問題が発生したら、お集まり願いたい」という約束だけは取り付けて、かろうじて自分の意地を見せた。職人にナメられたら最後、日々の仕事が辛くなるからだ。
こんな状態に陥ってから、ようやく私は先輩からの、ある教えを思い出した。
「大工は絶対に忘年会、新年会、社員旅行に誘うな」と。
今回のケースは状況がかなり異なるが、先輩の教訓は奥が深い。大工が集まると大変だ。
現場で職人から鼻歌が聞こえるようになれば、現場監督として一人前。職人の鼻歌を聞けるように、先人たちの教訓を自分なりに吸収して、まだまだ成長していきたいと自分を戒めた失敗だった。
みなさんも、くれぐれも職人さんたちに、ナメられませんように!
凄いです
大事なことを読み取りましたありがとうございます
大工をバカにする記事だな
なんだこの記事は。
大工にケツまくられ、大工集めたら不満爆発、忘年会、新年会には呼ぶな、しまいにゃ職人にはなめられないようにって、どんな現場管理の仕方すればそんな事になるんだよ。自分の無能さを棚に上げて、いい大人がみっともない記事を書くなよ
職人になめられないようにって 頑張っているとなめられますよ
なめると言うか 人間性を疑われますよ。くだらない。
そもそも、自社の大工で主要出来ない会社のゼネコン体質って事だよねww