地震大国である日本において、建物の耐震性は安全を確保する重要な要素です。安全を守るため、建物の耐震性は耐震改修促進法によって基準が定められており、基準に沿って建物の耐震性を評価することを耐震診断と言います。
この記事では耐震診断について解説していきます。基礎知識や費用について学び、住宅購入やリフォーム時に活かしましょう。
耐震診断とは?
耐震診断とは、建物の地震に対する強度を診断することです。資格を持った耐震診断資格者が、耐震基準を基に耐震性を評価していきます。どれくらいの揺れまで耐えられるかを把握し、具体的な対策をたてることが耐震診断の目的です。
ここでは耐震性に影響する部分や2種類の耐震基準、診断方法について詳しく解説していきます。
耐震性について
地震があった場合、その揺れに対する強度のことを耐震性と言います。似た意味の言葉として耐久性があります。
耐久性は災害が発生しない場合に、どれくらい建物が建っていられるかの強さを表したものです。それに対し、耐震性はあくまでも地震に対する強度を表すものになります。
耐震性で重要になる部分は壁です。木造軸組工法では壁内の筋交いが、2×4工法では面構造が耐震性にとって大きな役割を果たしています。
耐震診断の内容
建物の耐震性を診断することを耐震診断と言います。耐震性に影響する部分を設計図や現地調査で調べ、その情報を基に耐震性を計算します。
耐震診断には資格が必要です。建築物の耐震改修の促進に関する法律により「国土交通大臣登録耐震診断資格者講習」または「耐震改修技術者講習」を修了した耐震診断資格者が行うことと定められています。
耐震基準
耐震基準には、旧耐震基準と新耐震基準の2種類の基準があります。1981年6月1日を基準として、耐震基準が分かれています。1981年6月1日の建築基準法改正により、耐震性の要求基準が上がりました。
それにより、旧耐震基準と新耐震基準の建物では耐震性が異なります。当然、新耐震基準で建てた建物のほうが耐震性は強くなっています。
しかし、新耐震基準で建てた建物なら必ずしも安心というわけではありません。建物の劣化やバランスの悪さによって、診断結果が悪くなることもあります。
耐震診断は日本建築防災協会が認定したプログラムによって、「0.65」「1.0」「1.18」といった点数で表され、以下のように評価されます。
- 「1.0」未満の建物:「倒壊する可能性がある」「倒壊する可能性が高い」
- 「1.0」以上の建物:「一応倒壊しない」「倒壊しない」
耐震診断の方法
耐震診断の方法には、一般診断法と精密診断法があります。一般診断法は、その名の通り一般的に使用される診断方法です。目視調査と図面確認のみで耐震を診断します。建物の一部を解体するわけではないため、壁や床の内部構造までは確認しません。
精密診断法では、壁や天井、床といった部分を解体し、内部構造まで確認します。それにより現時点での劣化状況まで確認できるため、精度の高い診断ができます。
しかし、購入前の建物の一部分を解体することはできません。そのため、一般診断法しか診断方法の選択肢がないケースもあります。精密診断法ができないケースがあることや、コストが安くすむことから一般診断法を選択されることがほとんどです。
耐震診断の費用
耐震診断の費用は構造によって異なります。木造は、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べるとコストを抑えられます。鉄骨造と鉄筋コンクリート造の費用相場は同等です。
どの構造でも、竣工時の図面がある場合の相場になるため、竣工時の図面の有無を確認しておく必要があります。ここでは、それぞれの構造の場合の耐震診断費用について解説していきます。
木造の場合
木造住宅では、建物に傷をつけることなく調査を行います。そのため、壁や床といった建物の一部を解体して内部構造を調査することはありません。壁や床下、天井裏を目視で確認し、耐震計算を実施します。
鉄筋コンクリート造と比較するとコストが低く、延床面積が120㎡程の在来軸組構法の建物でも、50万円以内で診断してもらえます。ただし、竣工時の一般図や構造図がなければ図面を作成する費用が発生するため、図面の有無は確認しておきましょう。
鉄骨造の場合
鉄骨造の耐震診断の費用相場は、延床面積が1,000㎡~3,000㎡の建物で約1,000円/㎡~3,000円/㎡になります。延床面積が1,000㎡以下の場合は、約2,500円/㎡以上です。
木造と同じく、竣工時の一般図や構造図がなければ図面の再作成が必要です。その場合、現地調査の項目数も多くなるため、㎡単価は相場を上回ることになります。
鉄筋コンクリート造の場合
鉄筋コンクリート造の耐震診断費用は、延床面積が1,000㎡~3,000㎡の建物で約1,000円/㎡~約2,500 円/㎡が相場になっています。延床面積が1,000㎡以下の場合は約2,000円/㎡以上です。
ほかの構造と同じく、竣工時の一般図や構造図がなければ図面の再作成費用が必要です。1棟ワンオーナーの場合、耐震診断から工事発注までのやりとりが素早くできますが、分譲マンションの場合、管理組合での決議が必要です。そのため手続きに時間が掛かる可能性があるため、覚えておきましょう。
耐震工事の補助金
耐震工事を実施すると補助金が交付される自治体があります。補助金を利用すれば、工事費用を半額にすることも可能です。自治体によっては100万円の補助金がでるところもあるため、積極的に利用しましょう。
ただし、補助金の対象となる条件があります。多くの場合、旧耐震基準で建てられた建物が対象になるため、条件もしっかり確認しましょう。
ここでは、補助金制度の確認方法や注意点について解説していきます。
自治体の補助金制度を確認する
自治体によっては、耐震工事の補助金制度があります。耐震工事を実施する前に、自身の自治体で補助金制度がないか確認しましょう。
補助金制度の確認方法については、自治体のホームページでの確認がスムーズです。「耐震 補助金 自治体名」で検索してみましょう。ホームページで確認できなかった場合は、自治体の窓口で直接確認しましょう。
補助金利用時の注意点
補助金制度の利用には申請期間の確認が必要です。自治体によっては申請期間が決まっているケースがあります。その期間外の場合は補助金が交付されないため、事前に申請期間を確認しておきましょう。
また、必要な書類も自治体によって異なります。各自治体のホームページや窓口で確認しましょう。
補助金制度を利用する場合は、以下のような流れになります。書類の準備や工事業者の選定・報告と、補助金交付までに実施することは多いため、前もって計画を立てて動きましょう。
- 工事前に申請
- 工事実施
- 自治体に工事完了報告
- 自治体が内容確認
- 補助金交付
個人の住宅は税金控除
耐震工事の補助金制度は、個人住宅向けのものはありません。その代わり、個人の住宅で耐震工事を実施すると、「耐震改修促進税制」として、以下の2つの税金が控除されます。
- 所得税の特別控除
- 固定資産税の減税
所得税の場合は工事費用の10%相当(上限25万円)、固定資産税では耐震工事を行うことで固定資産税が半額になります。
ただし、控除の適用を受けるためには、耐震工事を行った時期に加え、建築年や面積、その他さまざまな条件があります。条件に当てはまるかを事前に確認したうえで、利用しましょう。
耐震診断を理解して住宅購入やリフォームに活かそう
耐震診断とは、建物の地震に対する強度を診断することです。耐震基準は1981年6月1日を基準として、旧耐震基準と新耐震基準に分かれています。
耐震診断の費用は構造によって異なり、木造は鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比べるとコストを抑えられます。また、耐震工事を実施すると補助金が交付される自治体があり、工事費用を半額にすることも可能です。
地震大国の日本にとって、建物の耐震性は安全を確保する重要な要素です。安全な暮らしを守るためにも、耐震診断の内容や費用について理解し、住宅購入やリフォームに活かしていきましょう。
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