何も対策を取らなくてもいいのか?
とはいえ、何も対策を取らなくても良いということではありません。JASS5や示方書でも対策を取ることは求めています。ですので夏場のコンクリート打設が決まったら施工者側と生コン工場側が協議をすべきです。有効な対策としては、混和剤に遅延型の高性能AE剤を使用したり、使用骨材に散水するなどで温度を下げる、打設時間を考慮するなどが挙げられます。また、ミキサー車にドラムカバーをしカバーにも散水をするのも非常に効果的です。そういった対策を取った上で35℃を超える分には許容されても良いのではないでしょうか。
また、前述のZENNAMA生コン技術大会において「ミキサー車のホッパーカバーを開けると温度上昇を抑制できる」という研究結果もあり、晴れた日にはカバーを開けても異物の混入が無いように網目状のシートを装着するなどの工夫をすることも効果がありそうです。
生コン工場は今まではどうしてたのか?
では、現状を含めて今までの生コン工場はどう対処していたのでしょうか。もちろん骨材への散水をしたり、ドラムカバーをする、ミキサー車に遮熱塗装を施すなどの対策はよく取られています。また入荷直後のセメントは熱を持っているので、入荷直後のものではなく数日前に入荷したセメントを使用するのも効果があり実施されています。
そして最後に、受入れ試験時には実際の温度が出ないように設定された「マイナス温度計」を使用しています。これはメーカーに頼めば「−2℃設定」「−3℃設定」の温度計を入手することができるのです。裏を返せば、受入れ試験の結果が34℃だった生コンは、実際は36℃や37℃の生コンだったわけで、強度なども問題がなかったということになるのです。
コンクリート温度は38℃までは容認される?
暑中コンクリートのコンクリート温度に関する記述は、JASS5と標準示方書ともに改訂作業が行われており、来年度あたりには改訂されると思われます。どういう記述になるのかはまだ不明ですが、上記のような研究が進んでいることや実際の気温の上昇を考えると、38℃までは容認されることになるのではないでしょうか。そうなれば生コン工場としても、マイナス温度計の使用など詐欺めいたことをすることなく、堂々と受入れ試験ができるので安心ですし、施工者側も強度不足などの不安要素がなくなることになります。
生コンの温度は36℃までです。38℃容認といいますが現実には36℃の壁があり、なかなかこの温度を超えることはありません。特に生コン工場は単価の都合で水道水は使いません。基本中水や井戸水を使うので夏季の水道水より温度が低いです。なので練りあがる生コンも極端に温度が上がることはありません。摂氏40℃で打設した時も35超え程度で36℃までは達しません。最も打設後の内部温度は65℃から70℃近辺まで上昇しますが、水和熱反応の影響なのでBBや中庸などの水和熱を抑制したセメントを使うことで温度上昇は防げます。