生コンの標準スランプを8cmから12cmに変更
現在、国土交通省が推進しているi-construction。その取り組みの中で、土木分野の生産性向上を目的として、生コンの標準スランプを8cmから12cmに変更することになり、2017年7月公示分から適用となりました。
これは国交省のコンクリート生産性向上検討協議会の「流動性を高めたコンクリートの普及検討委員会」が取りまとめて策定したものであり、この変更により時間当たりの打設量や作業人員の省力化など、生産性が約20%向上するとされています。
生コンの標準スランプ、規定見直しの背景は?
コンクリートの配合決定においては「要求される性能を満足する範囲内で、単位水量をできるだけ少なくするように定めなければならない」とされており、同時にスランプの決定においては「作業に適するワーカビリティーが得られる範囲内で、できるだけ小さい値を選ぶ」とされています。
スランプが小さければ小さいほど、締固めなど適切な施工をすればより緻密なコンクリートとなり、耐久性も向上します。とはいえ、昨今の職人不足による省力化の推進や、耐震性向上のために鉄筋量が増えたことなどもあり、これまでの8cmのスランプだと作業効率が悪くなっているという面もあるのです。
実際に、現場から「スランプ許容範囲内で柔らかくして」という要望があるのもスランプ8cmの現場も多く、特に夏場になるとポンプ圧送後のスランプロスも考えると、ポンプの筒先ではかなり固くなり、円滑な作業に支障をきたすのです。そういう観点で見るとスランプ12cmであれば、荷下し時点での許容範囲は9.5cm〜14.5cmとなり、ワーカビリティーが大幅に改善されることが期待できます。
今まではどうしていたのか?
多くの場合は設計変更をするか、スランプの上限要求をすることでしのいできたのではないかと考えますが、そうもいかないのが生コンです。現場側としては「水を入れてしまいたい!」と思うこともあるのではないでしょうか。
生コンはミキサー車への加水が禁じられています。きちんと配合設計されているものに対して水を加えるということは、コンクリートの品質低下そのものであり、強度不足をはじめとする様々な問題に直結するからです。ですので、加水をすることは今ではほとんど無くなっていますが、代わりに流動化剤や高性能AE減水剤を入れることは少なからずあるようです。
これは加水しているのとあまり変わらない行為ですが、施工者からの指示やポンプ屋の判断で最終手段として行われることがあります。私自身、施工者からの要求で、発注者に見つからないように高性能AE減水剤を忍ばせて現場に行ったことは何度もあるのです。
スランプ規定の見直しでどう変わる?
では、スランプが大きくなることで具体的に何がどう変わるのでしょうか。
生コン屋目線から見た場合、第一には単位水量が増加します。しかしながらその増加量としては、立米あたり5〜10kg程度の増加となりますし、配合にもよりますが土木の単位水量の基準である175kgを超えてくることはほぼありません。むしろ、これまでのようにスランプ上限要求が少なくなれば、生コン屋としても有難いことですし、より良い品質の生コンが納入されるので、構造物としての品質向上も見込めるのではないでしょうか。
そして、締固め不足や充填不足によるジャンカの発生など、コンクリートの初期欠陥が少なくなることも考えられます。
私としては、今回の見直しが行われた背景には、設計側が施工のことを考慮していないということも起因しているような気がします。生コン屋としては荷下しまでしか品質責任がないので、そこまで考える必要はないのかもしれませんが、より良い構造物を造るためには業界全体で共通意識を持つことが大事だと感じます。
フーチング等は特にひび割れが増加するので、何でもかんでも12cmにすればいいものではないんですよね…。
それと、高性能AE減水剤の添加が加水と同レベルというのはどういうことでしょうか?
4立米に1ℓ程度で事足りるので、強度に影響は出ないのでは?効果が切れれば普通に凝結は進む訳ですし。