改修工事より新築工事のほうが地位が高い?
「スクラップ・アンド・ビルド」の時代は終わりつつあり、これからはストックした資産を改修する工事が増えていくと言われて久しい。しかし、ゼネコンの仕事のメインは相変わらず「新築工事」だ。
ゼネコンの売上のうち、新築工事における割合はまだまだ高い。その理由は単純で、改修工事より新築工事の方が受注1件における金額が大きく、職員1人あたりの出来高を稼ぐことが出来るからである。ゼネコンの技術職員が人材不足の現状において、より多くの売上や利益を確保するために効率のよい新築工事を求めるのは当然だ。
なので、私が所属しているゼネコンでも、新築工事の地位は高く、改修工事の地位は低くなりがちだ。新築工事で人が空いてきたら、「とりあえず改修工事にでも回すか?」という感じだ。改修工事は手間ばかりかかって面倒くさい工事、というのが会社としての本音ではある。
しかし、いち建設技術者、建築施工管理技士としての施工管理スキルを考えると、いくら社内での地位が高いと言っても、新築工事の現場だけを経験していては、身に付かないスキルもある。改修工事を経験することでしか得られない、改修工事ならではのスキルアップのツボがあると私は確信している。
しかも、改修工事の現場は比較的少人数で運営されるため、若い技術者でも責任者的な立場で配置されることも少なくない。若い建築施工管理技士にとって、スキルアップのチャンスが大きいのも、改修工事の特徴だ。
建築施工管理技士がスキルアップできる改修工事
では、新築工事にはない改修工事のスキルアップのツボとは何なのか?
それは、ありふれた表現になってしまうが、「気付く力の向上」と、「コミュニケーション能力の向上」である。この2つのスキルは、建築施工管理技士にとって不可欠だ。
まずは、「気付く力の向上」について説明する。
例えば、新築工事の場合、普段の仕事は「仮囲い」の中で完結してしまう。われわれ建築施工管理技士が接触するのは工事関係者だけで、近隣住民や顧客などと折衝するのは、所長などのごく限られた人になってしまう。
しかし、改修工事は違う。住人が生活している建物を改修する「居ながら改修工事」では、工事範囲に近い所で第3者が通行したり、生活していたりする。こうした気をつかう工事では注意すべきことが非常に多い。
- 一般人の通行が多いので、作業を中断すべき時間があるか?
- 騒音や振動による苦情を出さないために、時間帯や工法を変更すべきか?
- 材料や機材を置く場所や置き方は正しいか?
- 工事で埃や悪臭が発生しないか?
- 埃や悪臭が工事エリア外に拡散しないか?
- 工事の作業する順番は今のままでよいか?
など、新築工事であれば多少は許されることが、「居ながら改修工事」では許されない。
新築工事なら、影響を与えるのは工事関係者だけで、立場的に一番偉いのは現場監督だから、「仕方ないよ」「何とかしてくれ」で済まされることも多い。しかし、改修工事ではそうもいかない。「第3者からの苦情」として自分の身に責任が降りかかってくるため、全ての事項について最大限注意しないといけない。
つまり、改修工事では「気付き」と、それを解決するための、現場管理や工法変更など高度な施工管理スキルが求められることになる。建築施工管理技士が改修工事で成長できるポイントがここにある。