都会育ちの若者には耐えられなかった山奥の仕事
楽な仕事で高額な報酬を貰えるケースはまずあり得ない。でも、稀にそんな美味しい話があるのも派遣社員ならでは、なのかもしれません。私が派遣社員の時に実際に経験した、山奥の現場についてご紹介します。
現場が一段落して、派遣会社のオフィスに出社した時、私は営業部長から「3ヶ月だけ山奥に行ってくれない」と声をかけられました。「山奥って、どの程度ですか?」と訊くと、営業部長はニヤニヤしながら「ほんとに何にもない山の中」。私が返事を渋っていると、「給料を○○万円出すから、頼む」と真顔で言うのです。私はあまりの破格の給料に、どんな仕事なのか不安になりました。
ところが、仕事は「施工管理」ではなく、宿舎の「管理事務」だというのです。
私が「その程度の仕事なら、施工管理経験のない若いヤツで充分でしょう」と言うと、「実はそれじゃ収まらない事態になっている」と部長が困惑した表情で語り始めました。その現場には既に2名の若者を派遣していて、その2人が1ヶ月も経たずに逃げ出したとのこと。当然、派遣先の現場所長はカンカンで、「もう、今後の付き合いはしない!」と、ご立腹らしいのです。部長が言うには、「ここまでくると信用に関わるので、信頼回復が最優先」とのこと。
要するに「○○万円払うから信用を回復してこい」というわけです。山奥とはいえ、宿舎の管理事務で月給○○万円は美味しい。ということで、私は3ヶ月という期限付きで、この仕事を引き受けました。
何もないけど自然豊かで空気は綺麗
現場は本当に山奥、宿舎は標高700メートルの山の上で麓の町から車で約40分。周りには人家どころか田畑ひとつないところで、携帯電話は圏外という人里から遮断された世界。プレハブの事務所兼宿舎が4棟あって、1次下請け会社が3社、さらに、その下請けが数社入っていました。
私が派遣されたのは1次下請けでしたが、元請けゼネコンの子会社なので、他社よりほんの少しだけ設備が充実していました。といっても、個室があるのと外部に繋がる電話があるくらい。ちなみに、他の棟には内線電話しかありませんでした。
確かに何もない山の中で、買い物をするにも車で片道40分もかかる不便な環境です。でも、ものは考えようで、仕事は楽だし自然に囲まれた綺麗な空気の中で3ヶ月も暮らせるわけです。