年々過酷さを増す夏の猛暑。熱中症対策は建設業界において喫緊の課題ですが、スーパーゼネコンが「作業時間そのものの見直し」という踏み込んだ対策に乗り出しました。
大林組は5月21日、熱中症リスクのさらなる低減を目的に、全国の建設現場を対象として、条件が整った現場から7月から8月の猛暑期間における作業時間帯を変更する取組みを開始すると発表しました。
背景にある深刻な数字
取組みの背景には、業界の厳しい実態があります。過去5年間(2021〜2025年)の熱中症による業種別死傷者数は、建設業が製造業に次いで多く(厚生労働省調べ)、熱中症対策は建設技能者の生命・健康を守ることに直結します。
大林組はこれまでも、WBGT値(暑さ指数)に基づく作業管理や休憩時間の確保、仮設空調設備の導入などに取り組んできました。さらに昨年度からは、現場作業に従事するすべての関係者に対し、空調服と暑熱リスクを検知するウェアラブルデバイスの着用を必須化しています。
今回はこれらの対策を継続しながら、作業時間帯そのものに踏み込んだ対応を新たに加えます。
猛暑を避ける「午前7時~午後1時」へのシフト
標準的な建設現場の作業時間は、朝8時から夕方5時までです。しかし今回の取組みでは、各現場の作業環境や内容などを踏まえた上で、条件が整った現場において、これを「午前7時〜午後1時」へと大幅に前倒し、かつ短縮します。
気温やWBGT値が上昇する前の時間帯に作業を集中させることで、気温がピークに達する午後の時間帯を作業から外す仕組みです。比較的涼しい午前中に業務を集中させることで、建設技能者の身体的負担を物理的に軽減するねらいがあります。
工期への影響は「年間を通じた工程調整」でカバー
現場での作業時間が短縮されることで懸念されるのが、工期や生産性への影響です。これに対し大林組は、比較的気温の低い時期に作業時間を延長するなど、年間を通じた工程調整を行うとしています。
気候の厳しい時期に無理をして作業効率や品質を落とすのではなく、働きやすい季節に工程のウエイトを置くという、理にかなったスケジューリングへの転換です。これにより、建設技能者の安全確保と、施工品質・生産性の維持の両立を目指します。
業界の「当たり前」は変わるか?
今回の「作業時間帯の大幅変更」という運用ルール面での改革は、これまでの業界慣習に一石を投じるものです。働き手の高齢化や担い手不足が深刻化する中、より安全で働きやすい環境づくりは待ったなしの状況と言えます。
現場の熱中症リスクの抜本的な解決に踏み込んだこの取組みが、建設業界の「新たなスタンダード」として波及していくか、注目です。

