来る2027年9月8日から10日の3日間、東京ビッグサイトにて、建築・土木分野を横断した新たな建設業界の総合展示会「建設技術総合展 ~CONTEX(コンテックス)~」が初開催される。2026年7月28日、ベルサール六本木にて主催のBizcrew EXPO 実行委員会による開催発表会が実施された。
本記事では、既存の展示会とは一線を画す「CONTEX」の理念や全体像、そして国土交通省の担当者が登壇した特別セミナーの内容についてレポートする。
建築と土木の「隔たり」をなくし、最新技術を社会実装する場へ
2027年、分野を横断する新たな展示会として幕を開ける「CONTEX」。そもそも、なぜ「建築」と「土木」という2つの領域を融合させる必要があったのか。その背景には、業界が抱える長年の課題が存在していた。
実行委員会が同展の企画にあたり多くの建設業界関係者と対話を重ねる中で見えてきたのが、両者の間に存在する情報の隔たりだ。同じ建設業でありながら技術やノウハウの共有が難しく、生産性向上につながる解決策が生まれていないという悩みが、現場のリアルな声として寄せられていたという。これに対しCONTEXは、「建築」と「土木」の境界を越えて橋渡し役となり、情報の共有と技術の融合を通じて新たな価値を創出することを基本理念として掲げている。
会場は目的別に2つのフロアに分けられ、社会実装に向けた最新ソリューションが一堂に集結。労働力不足の解消に向けて遠隔建機やドローンなどの技術が展示される「自動・遠隔建設 EXPO」や橋梁・トンネル点検ロボットなど長寿命化の最前線が集まる「インフラリニューアル EXPO」、また「建設機材 EXPO」では現場の物理的基盤となる機材に加え、過酷な環境から作業員を守る「熱中症対策ゾーン」や「安全・セキュリティゾーン」が特設される。さらに、設計の自動化や高度化を目指す「AI建設・BIM EXPO」、脱炭素と環境配慮型建築に向けた「サステナブル建築 EXPO」、そして採用支援や育成など人への投資に焦点を当てた「建設人手不足対策 EXPO」という6つのテーマにより、業界のあらゆる課題にアプローチする。
当日は製品の展示だけでなく、現場に近いリアルな体験を重視した特別企画も予定されている。実際の現場操縦や遠隔操作、シミュレーターを体験できるドローン体験会や、実際の重機を使って現場で書道を実践しギネス記録にも挑戦するエンターテインメント性溢れる重機書道パフォーマンスが実施される。さらには、1950年創刊の専門誌『建築技術』とタッグを組んだKENGIセミナーなども開催され、来場者に実践的な学びと体験を提供する。
国土交通省が語る、インフラ分野のAI実装と脱炭素化の最前線
展示会の全体像が発表されたのち、国土交通省の担当者による特別セミナーが実施された。官民一体となって推し進めるべき建設テクノロジーの最新動向について、以下の通り語られた。
インフラ分野におけるAI現場実装への取組(国土交通省 西上康平氏)
国土交通省の西上氏は、インフラ分野が直面する課題解決に向けたAIの実装戦略について解説した。日本の生産年齢人口の減少や激甚化する災害に加え、建設後50年以上が経過する道路橋の割合が2033年には63%に達するという厳しい現実を前に、国土交通省は単なるデジタル化にとどまらない「AIトランスフォーメーション(AX)」を強力に推進している。そのデータ基盤の要となる「国土交通データプラットフォーム(DPF)」には2026年現在で35システム、約336万のデータが連携されている。さらに2025年11月にはMCP(Model Context Protocol)サーバーが公開されたことで、AIエージェントが対話形式で自律的にデータを抽出・分析できる高度な環境が整った。
具体的な現場への応用として、特定の課題解決に特化した領域特化型AI(Vertical AI)や、ロボット・自律施工建機などを活用したフィジカルAIの導入に向けた現場実証が進められている。同時に発注者側の業務プロセス変革も見据え、事業評価や設計図書の整合性確認、技術審査などを自動で行うAIエージェントの開発構想も示された。産学官協働によるオープンイノベーションの一環として、令和8年5月より総額10億円規模となる「GENIAC-PRIZE(懸賞金活用型プログラム)」の募集が開始されており、インフラ分野のエッセンシャルワーカーの人手不足解消に資するAIの実証コンテストを通じて技術の社会実装を加速させる方針だ。
住宅・建築物の脱炭素化に向けた政策の動向について(国土交通省 平山鉄也氏)
続いて登壇した平山氏は、国内のCO2排出量の約4割を建築分野が占めるというデータを示し、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた最新の制度と法改正の動向について語った。日本の次期削減目標(NDC)として、2013年度比で2035年度に温室効果ガスを60%削減、2040年度には73%削減するという極めて高い目標が掲げられている。この実現に向け、2025年4月からは戸建住宅を含む全ての新築住宅・建築物において省エネ基準への適合が全面的に義務化され、2026年4月には延床面積300m2以上2000m2未満の中規模非住宅建築物を対象に、省エネ基準がさらに引き上げられる予定だ。
今後の重要な観点として平山氏が強調したのが、建物の運用時のCO2削減(オペレーショナルカーボン)にとどまらず、資材製造から施工、解体に至るまでの全過程を総合的に評価する「ライフサイクルカーボン(LCCO2)評価」への移行だ。これを後押しするため、令和8年3月に閣議決定された建築物省エネ法の改正案では、5000m2以上の大規模な新築事務所に対する着工前のLCCO2評価結果の届出義務化が盛り込まれた。さらに、気象センサーと連動した自然換気システムや、CO2濃度による外気量制御といった先導的な省エネ技術を個別に評価する新たな大臣認定制度が創設されるなど、脱炭素化に向けた多角的な政策展開が明示された。
建設業界の未来を切り拓くプラットフォームへ
慢性的な人手不足やインフラの老朽化、気候変動への対応など、現在の建設業界を取り巻く環境はかつてない激動の真っ只中にある。これらの課題を乗り越えるためには、従来の「建築」「土木」といった枠組みにとらわれない柔軟な知見の共有と、最新テクノロジーの確実な現場実装が必要不可欠だ。
実行委員会は、これまでに培ってきたリアルとデジタルを融合した展示会のノウハウを活かし、参加企業とともに「建設技術総合展」という新しい場をつくり上げたいと強い熱意を示している。出展者と来場者の双方が確かな成果と満足感を得られる展示会となるよう、万全の支援体制で来年9月の開催に向けた準備を進めている。
「建築」と「土木」、そして「官」と「民」。あらゆる垣根を越えたテクノロジーの交差点となる「CONTEX」は、単なる製品展示の場を超え、官民が一体となって次世代の建設業のあり方を提示する新たなプラットフォームとなるかもしれない。
建設技術総合展 ~CONTEX(コンテックス)~
開催日程:2027年9月8日(水)〜10日(金)
会場:東京ビッグサイト 南1〜4ホール
公式サイト:https://www.bizcrew.jp/expo/contex-tokyo
