耐震リフォーム業者に気をつけろ!沈下修正工事の見積金額と技術力の比較

耐震リフォーム業者に気をつけろ!沈下修正工事の見積金額と技術力の比較

悪質な耐震リフォーム業者に気をつけろ!沈下修正工事の技術力と見積金額

沈下修正工事をしないで耐震リフォーム工事するの?

最近は、耐震リフォームを検討されているお客さんも多いと思います。しかし、酷いことをする耐震リフォーム業者もいるので注意が必要です。

以前私は、高知県内のお施主さんから「耐震リフォーム工事を予定しているのだけど、その前に家が地盤沈下で傾いてしまっているのを直したい」という電話を頂きました。

ここまでは、よくある話です。そして、このお施主さんの判断は正しい。酷い耐震リフォーム業者の中には、沈下修正工事をしないで耐震リフォーム工事を行おうとするところもあるからです。

実際、私は数年前、千葉県でお会いした意匠設計の方から、こんな相談を受けたことがありました。

「自分がデザインを施工する築古住宅が地盤沈下で傾いているんだけど、耐震リフォームを担当する業者は、『傾いている家を下手にいじるとかえって弱くなるので、このまま固めてしまいましょう』と言っている。それで良いのでしょうか?」

・・・明らかに良い理由は無いですよね?

平らなテーブルの上に置いた箱と、スベリ台のように斜めになったテーブルに置いた箱、どちらが倒れやすいかなんて、小学生でも判ります。なのに、どうして耐震リフォーム業者がこういう酷い判断をするのか?

これには2つの要因があります。

1つ目は、この耐震リフォーム業者が不勉強で、どう対処すべきか判っていない。

2つ目は、判っているけど、沈下修正工事に予算を獲られると自分の受注額が減ってしまうので、ごまかしている。

耐震リフォーム業者による沈下修正工事の見積金額

お施主さんの話に戻ると、このお施主さんは私にこう説明してくれました。

「耐震リフォーム業者から、『地盤沈下していたので、先に沈下修正工事をする必要があります』と言われました。そこで沈下修正工事ができる2社から見積りを採ったところ、どちらも160万円と180万円と似たような金額でした」

うーん?高知県にそんなにも専門業者いたかな?と思いつつ、私はお施主さんのお話に耳を傾けます。

「ですが、この耐震リフォーム業者さんが、『うちで、まとめてなら沈下修正工事費は50万円で引き受けますよ。うちは外注せずに自社の大工にやらせますから』と言われていて、金額的にあまりにも魅力的なので迷っている。そこでたいへん厚かましいとは思いつつも、高知県出身の高名な曳家職人の岡本さんにアドバイスを頂きたくて、お電話してしまいました」

自分が高名かどうかは、テレビ出演が多いだけでたぶん勘違いですが(笑)、沈下修正工事の専門家ではあります。とりあえず、いつも通り「チェーン店の安いうどんと、専門店のうどんの味と価格の比較」についてお話しした上で、次のような説明をさせていただきました。

「大工さんでも丁寧に扱えば同じような工事は出来ると思いますよ。ただし、料理人は一流の食材と道具を使うように、私たちは専用の工具をたっぷり余裕を持って持ち込んで施工します。家を持ち揚げた後の据え付けに対しても、既存コンクリートと増し打ちした部分がコールドジョイントになってしまわないように、そして乾いた後に痩せて隙間が出来ないように、専用の接着剤を混ぜ込んだものを使います。これは、なかなか見事な仕上がりを見せてくれます」

耐震リフォーム業者の大工をうならせる曳家職人の沈下修正工事

電話を切ってから30分後、再びお電話を頂きました。

「母と相談したんですが、岡本さんに見て頂きたいんですがお願い出来ませんか?」

ありがたいお話です。結局こちらのお家は、私が200万円で見積りさせていただいてご依頼頂きました。他の2社さんよりも高額を頂いてますが、彼らが見積りの際に気づいていなかった問題点も修復させてもらいました。

「こりゃすごい!壁もまったく割れずに、こんなにきれいに揚げるなんて!」

その後の耐震リフォームを予定されていた大工さんたちが、今後の勉強のためにと施工中に見学に来てくれました。

「このジャッキ見てみいや。こんな小さいがで、上手いこと使いゆうぞ」

「奥さん。うちの社長がどう言うたか知らんけど、専門の職人さんに頼んで正解よ。うちらがやっても、こうはいかん」

こちらの現場はお施主さんの咄嗟の気転で良い結果となりましたが、いつもこうとは限りません。そして専門職だからと何でも鵜呑みにしてはいけません。

結局はご自分のお家のことを一番親身になって、予算や将来どう使うかまで考えられるのは、ご自分自身ですから。

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曳家岡本の二代目。日本屈指の曳家職人。テレビ出演は「真相報道バンキシャ」「心ゆさぶれ先輩rock you」「ウェークアップぷらす」など多数。漫画化もされており、雑誌「週刊漫画Times」で連載中の「解体屋ゲン」にもセミレギュラーで実名登場。
自分では「日本一小心者な曳家」だと思っているが、ある建築家からは「蚤の心臓」と呼ばれている。しかし、自分が凄いのではなく、かつて昭和南海大地震や伊勢湾台風から復興するための技術として栄えた高知県(土佐派の曳家)の技術が自分の身体に残っているだけである。
東日本大震災の直後に千葉県浦安市対策本部の招聘されて上京。近年は全国の社寺・古民家修復を中心に手掛けている。
曳家岡本HP ⇒ http://hikiyaokamoto.com
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