急傾斜地区の崩壊対策工事で「儲かるため」の3つの条件

危険が伴う急傾斜地区崩壊対策工事で儲かるための3条件

近年、土砂崩れの被害が多く目立つ。崩壊と人的被害の可能性が高い箇所では、急傾斜地区崩壊対策工事が行われるが、私は土木施工管理技士として、その急傾斜地区崩壊対策工事を主に担当している。

自然災害とその対策工事が目立つようになってから、周囲に「儲かる?」と尋ねられる機会が増えてきた。そこで急傾斜地区崩壊対策工事の現状について、利益を出すためのポイントをまとめておく。

急傾斜地区崩壊対策工事とは、崩壊の恐れがある山の地盤を掘削し、水の排水を考えた構造物を設置することである。私が携わってきた現場は、相当な困難を伴う現場がほとんどで、作業や管理の難易度が高く、危険性もかなり高い。危険が伴うのであれば、それなりに利益率も高い工事なのか、という点はやはり気になると思う。

実務経験者として結論を言うと、急傾斜地区崩壊対策工事は利益が出る。

ただし、条件付きで、だ。

その条件とは、大きく分けて以下の3つ。

  1. 誰もやりたがらないような施工難易度が高い現場
  2. 土量の多い現場
  3. 優秀なオペがいる施工会社

これらの3つの条件を満たせば、赤字をくらうことは滅多にないはずだ。しかし、この条件を理解していない施工会社や管理会社は引き受けないほうが良い。そして急傾斜地区崩壊対策工事で利益を出すために最も重要なのは、優秀なオペがいるかどうかだ。工事経験の浅いオペが、軽い考えで急傾斜地区崩壊対策工事を引き受けてはいけない。

バックホーの腕で急勾配を登る珍アイディア

誰もやりたがらないような施工難易度が高い現場で利益を出す、ということは常識はずれな施工をするのが一番近道だ。常識はずれな施工とはどんな方法なのか、私が体験した事例を紹介する。

ある急傾斜工事の施工が決まり、私は現場の下見に行った。しかし、バックホーや不整地運搬車を掘削対象の山まで運べる道がなく、すぐに私は人力でやるしかないと赤字を覚悟した。この現場は工事金額も高いのに、他の業者さんが皆揃ってやりたがらない理由を現地で悟った次第だ。

しかし、私が一緒に仕事をした施工班は驚くべき方法で施工を開始した。復旧することを前提に、道ではないブロック部分をいったん取り壊し、そこから出てきた地山の土をバックホーで削って道を作った。これで道は出来上がったが、その道は勾配が非常に急でとてもバックホーなどが上がれる道ではない。そこで優秀なオペは、勾配の道の一番上の部分に鋼管を一本打ち込み、そこにワイヤーを掛け、バックホーのバケツのフックと繋いで腕の力を利用して上がった。

普通では考えられない光景だ。オペの技術も確かに凄いが、この常識はずれな発想が私には信じられなかった。結局、この施工班は最低2ヶ月は掛かると言われていた現場を、たった3週間で終わらせ大きな利益をあげた。

「普通の施工班がやりたがらない現場をするから儲かる」と、その施工班のオペは言い放った。急傾斜地の工事は、施工方法によって大きく利益に差が出るということだ。

急傾斜地区崩壊対策工事で利益を生むカギは「優秀なオペ」

急傾斜地区崩壊対策工事で利益を出すためには、施工管理者の管理能力も大切だが、山を掘削していくオペが本当に重要となる。オペの技術次第で、利益は大きく異なってくる。

バックホーに乗って作業するオペは、現場では常に危険と隣合わせで、基本的に山を掘削すると同時にキャタが通る幅の道を作りながら進めていく。バックホーの操作を誤ると機械ごと傾斜に転落することもあり、舗装された綺麗な道路を走るのとは訳が違う。常に木の根やデコボコの山を自分で道を作りながら進まなければならないし、さらに機械が傾かないように自ら作った道を平たんに整地しければならない。

危険と隣り合わせで作業する以上、それなりの利益を出したいと思うのは当然だ。しかし、施工方法の選択や正しい判断を誤れば、平気で赤字をくらってしまうのが、急傾斜工事の怖いところでもある。

急傾斜地区崩壊対策工事は、仕事を選べ!

では、急傾斜地区崩壊対策工事で赤字になる原因は何か。最大の理由は「現場を正しく選べていない」ことにある。どういう事かというと、目先の工事金額に飛びついて施工を引き受けたのは良いが、思ったよりも現場が痛ましく、作業が捗らず結果的に赤字になるということだ。工事の話が来たら必ず、自分たちの施工技術で対応できる現場なのかを判断する必要がある。この判断を誤れば、利益が出ることはない。利益をあげるには「仕事を選ぶ目」が必要だ。

しかし実際問題、急傾斜地区崩壊対策工事は非常に危険度の高い工事で、そもそも施工できるオペが少ない(建設業の人材不足は施工管理技士だけではない)。しかも、急傾斜地区崩壊対策工事の場合、優秀なオペでも思ったように作業が進まない工事がほとんどだ。それだけのリスクがある一方、やり方によっては大きな利益をあげることが出来る。

急傾斜地区崩壊対策工事で利益を得るためには、人と違う視点から物事を見る力、施工技術が必要不可欠である。つまり、他の工事と同様、軽い気持ちで工事を請け負っても利益を出すのは難しいが、アイディア次第では儲かるという奥深さがある。工夫する甲斐があるというものだ。

しかし何よりも、急傾斜地区崩壊対策工事の結果、住民に感謝されることも、この仕事のやりがいであることを申し添えておく。

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大学卒業後に一度、建築商材会社に就職するも、その後、現場に立ちたいという想いから、建設会社に転職。 これまでに道路舗装や下水道、解体などの工事に携わってきたが、今は急傾斜地区崩壊対策事業の測量や施工を主に担当している。