閑静な住宅地

“騒音クレーム案件” 閑静な住宅地の法面工事で、高得点を獲得した話

閑静な住宅地の法面工事

私が去年受注した工事で、80点という高得点を獲得した工事についてお話しようと思う。

現場は、閑静な住宅地。その一角にある急傾斜地の法面工事だった。

現場の正面にはもちろん住宅が立ち並び、建設機械の侵入も容易ではない。更に、山の地質は硬岩が確認されていた。

つまり、ペッカー機やブレーカーの使用が必要不可欠なので、工事を円滑に進めるためには、近隣住民への振動や騒音対策が一番重要なポイントだった。

実際に、以前近くの法面工事を行った際に、同じような内容の工事で多くの苦情が寄せられたという情報も入っていた。

近隣住民と良好な関係を築く方法とは?

当たり前のように、近隣住民との良好な関係を築くことは大切であると、現場監督ならば熟知していることだろう。今回のように騒音などが発生し、近隣住民の協力がなければ工事進行が難しい現場では、特に配慮が求められる。

これまで、コミュニケーションは大切だと多くの先輩に言われてきたが、私はその言葉の具体性のなさに不信感を感じていた。

コミュニケーションといっても、方法は様々である。私なりの良好な関係を築くための行動を起こそうと思い、最初に具体的な資料を作成した。

まず第一に、人間との会話で大切なのは掴みである。私の場合は、最初に手土産を持って、低姿勢で挨拶に回る。ここで勘違いしてほしくないのは、いくら低姿勢とはいえ、“できないことをできる”とは絶対に言わないことだ。

あくまでも、工事中に騒音や振動による迷惑がかかることを伝え、協力していただけるように低姿勢で誠意をもって頼むということが重要である。同時に、どういった住民が住んでいるのかもリサーチしておき、十分に注意しなければならない住民の目星をつけておくことも重要である。

具体的な対策を考え、実行する

次に、高得点をとれた要因となったのは、振動や騒音について具体的な低減対策を考案し、実際に行ったことだ。

多くの場合は、振動や騒音について、近隣住民との良好な関係を築けば、従来の工法で行うといった監督が非常に多い。しかし、ここで重要なのは、なるべく振動や騒音を発生させない措置を具体的に考案するということである。

私の場合は、まず職人と相談して、従来使用するはずだった0.7㎥のペッカー機を、0.45㎥に変更し、振動音や騒音の低減に努めた。

作業効率の低下の心配があった為、事前にオペを呼び、現場を見ながらペッカー機の小型化に問題がないことを十分に確認した。結果的には、これだけで約16dB騒音を削減することに成功した。

また事前にチェックした注意したほうが良い住民の近辺には、防護柵に防音パネルを二重で設置。さらに、吹付やペッカー機の作業時も常に騒音を測定し、各作業で騒音が低減していることを確認した(平均で10dBもの低減に成功)。

それぞれの監督にカラーがあり、やり方も十人十色

振動や騒音について対策をした後は、実際に耳による感覚も重要である。

数字上は騒音や振動を低減できていても、人間がうるさいと感じてしまえば、それは苦情につながる。私は、実際に住民の住む境界まで足を運び、工事中の騒音がどのように聞こえているのかを確認するようにしていた。

気になる箇所を見つけた場合は、その近隣の家を訪問し、「騒音はうるさくないですか?」と聞くように心がけた。そこで、「うるさい」という言葉を受けたこともあった。

その場合は、住民の方が出かけられる時間帯を狙って作業を行い、工事の作業内容をこまめに伝えるようにしているうちに、その対応に感動され、あなたの工事ならば我慢するとまで言ってくれるようになった。

ここまでしていると、先輩から「工期が最優先だからあまり気を使いすぎるな」と指摘を受けたこともあった。しかし、私の場合は結果的には、その騒音の低減対策や実施状況が評価され、なんと創意工夫の項目で満点を獲得することができたのだ。

確かに、工期や工事における作業効率も重要なポイントである。しかし、自分が工事を任された以上、そこは自分の現場なのだ。どこに力を入れて、高得点を獲得するのかも、自分で決めて良いのではないだろうか。

工期などは少し遅れてしまったが、私は人間的な努力が得点をカバーしてくれたと思っている。

それぞれの監督にカラーがあり、やり方も十人十色だ。人のやり方ばかり気にせず、自分のやり方を少しずつでもよいので模索すれば、この仕事はもっと楽しくやりがいを感じることができるだろう。

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