橋梁(きょうりょう)とは?構造や橋との違い、橋梁工事の手順を簡単解説

河川や海を渡るための構造物である橋梁(きょうりょう)。私たちの生活に欠かせないものとなり、日本の経済基盤を支えてきました。

近年では、老朽化が進んだ橋も見受けられ、補修工事をはじめとした取り組みが求められています。今回は、橋梁の意味や構造・種類とともに、橋梁工事の工法や手順について解説していきます。

橋梁(きょうりょう)とは

橋梁(きょうりょう)とは、移動の障害となる、河川や海などを渡るための通路となる構造物です。

橋梁にはさまざまな形のものがあり、場所や用途によって使い分けられています。橋梁と橋の違いは、「橋梁」は専門用語で、一般的には「橋」と呼ばれます。

道路や線路、水路といった自然の地形を渡るだけでなく、道路の上をまたぐように設置されている高架橋も橋梁のひとつです。ここでは、橋梁の構造や分類方法について解説していきます。

橋梁の構造

橋梁の構造は、橋を渡る車や電車、歩行者を支える上部構造と、それを支える下部構造に分かれています。

上部構造を構成しているのは、橋を渡るものを直接支える床版と、床版を通じて荷重を受ける桁や床組、対傾構、横構です。

下部構造を構成しているのは、上部構造を支える躯体と基礎です。端にあるものが橋台、間にあるものを橋脚と呼んでいます。

構造別の種類

橋梁は上部構造の形式によって、以下の6種類に分類できます。

  • 桁橋
    下部構造に梁を載せて荷重を支える構造の橋です。短い橋に使用されるため、街中で多く利用されています。
  • トラス橋
    三角形に組んだ桁が特徴的な橋です。桁橋より強度が高いため、より長い橋を作れます。
  • アーチ橋
    上向きにアーチの形をした橋です。アーチの力で荷重に抵抗しています。長さ数百mになる橋もあります。
  • ラーメン橋
    ドイツ語で「骨組み」の意味を指した橋です。斜めの柱を橋桁に設置し、橋桁と斜めの柱を一体化することで強度を上げています。
  • 斜張橋
    ケーブルを塔から斜めに張ることで、桁やトラスを吊っている橋です。桁橋やトラス橋、アーチ橋よりも長い橋を架けられます。デザイン性の高さも特徴です。そのデザイン性から、歩道橋といった小さい橋にも使われています。
  • 吊橋
    ケーブルの引張力で支える橋です。塔の間を渡るメインのケーブルから垂らした吊り材で橋桁を支えます。紹介した6種類の橋の中で最も長い橋を架けられます。

材料別の種類

橋梁は、材料別でも以下の5種類に分類できます。

  • 木橋
  • 石橋
  • 鋼橋
  • コンクリート橋
  • 複合橋

木橋は木材、石橋は石やレンガといったように、それぞれの橋の名前についた材質を主要構造部材としています。

複合橋は他の橋とは異なり、「コンクリートと鋼材」のように、別々の材料を組み合わせた構造の橋です。お互いの材料の特性を活かしています。

その他の分類

橋梁の分類はほかにもあります。通路の場所を表した「下路式・中路式・上路式」で分類された橋や、桁の断面を表した「I形・H形・T形・箱型・格子」で分類された橋もあります。

また、「ゲルバー構造・単純桁・連続桁」といった、桁のつなぎ方で分類された橋もあります。ほかにも橋梁の分類方法があるかもしれないので、探してみるとおもしろいかもしれません。

橋梁工事の手順

近年では、老朽化が進んだ橋が増えてきました。多くの人が利用し、生活に欠かせない存在となった橋。補修工事や、維持への取り組みは我々の生活にとって大切なものです。

ここでは、橋梁工事の手順について解説していきます。橋梁工事の工程は、橋の土台になる「下部工」と、橋の本体になる「上部工」の2工程に分かれています。

それぞれの手順を確認していきましょう。

下部工の手順

橋の土台となる下部工では、地中で橋を支える「基礎」を作り、橋脚を取り付けていきます。工事手順は以下の通りです。

  1. 基礎工事
    地中に杭を打ち込み、橋が倒れないようにします。
  2. 土留め工
    杭を囲むように矢板を打ち込みます。地盤を掘削したときに、土がこぼれないようにするためです。
  3. 掘削・支保工
    地面を掘削しながら、矢板の支えとなる梁を設置します。
  4. 橋脚構築工
    埋め戻し杭の上に、鉄筋フーチングの型枠を組み立てます。フーチングは土台のことです。型枠の中にコンクリートを流し込み、橋脚を作ります。コンクリートが固まったことを確認したら、型枠を外し、その上に桁橋を構築します。
  5. 埋め戻し
    掘り起こした穴を埋め戻せば、下部工は完成です。

上部工の手順

橋の本体となる上部工では、橋脚の上に桁橋を設置し、道路を作ります。工事手順は以下です。

  1. 橋桁架設工
    橋桁を橋脚の上にのせます。
  2. 床版工・橋梁付属物工
    コンクリートを使って、桁橋の上に道路の床板と側壁をつくります。
  3. 舗装工
    コンクリートが固まったことを確認したら、コーティングとアスファルト舗装をします。床板の上を車が走行できるようにするためです。
  4. 設備工
    標識や照明といった設備を設置すれば上部工も完成です。

橋梁の架設工法の種類

橋の架け方には、さまざまな条件に合わせた架設工法があります。橋の形だけで工法が決まるわけではありません。

現場の地形や周囲の環境よっても最適な工法は異なります。また、地形だけではなく、土地利用の制限や、地域事情、運搬時の安全性、作業の快適性と条件はさまざまです。

ここでは、代表的な橋梁の架設工法について解説していきます。

ベント工法

ベント工法は主流となっている工法です。仮受け台で桁ブロックを支えながら、クレーンによって上部構造を作る工法です。仮受け台のことをベントと呼ぶことから、ベント工法と呼ばれています。

ベント工法は、他の工法と比較してもコストが安く、工期も短い工法です。橋梁の構造を問わず使用できることも、一般的な工法となった理由のひとつと言われています。

ケーブルエレクション工法

ケーブルエレクション工法は、流水部や谷部といった場所で多く用いられる工法です。ベント工法での作業が困難な環境で、両岸に鉄塔やアンカーを置ける場合に使用されています。

吊り設備を組み立て、架設部材を吊り下げながら架設します。対風設備や鉄塔設備といった設備の準備や、強度計算や形状管理といった技術が必要となる工法です。

送り出し工法

送り出し工法は、桁下にトラッククレーンやベントを置くことが難しい場合に使用される工法です。橋が道路や鉄道、河川をまたぐ場合など、理由はさまざまです。

現場付近でベントを仮組みし、その上にトラッククレーンで主桁と手延機を組み立てます。送り出し装置で、組み立てた桁を所定位置まで送り出して架設します。

送り出し工法の実施には、架設現場付近で作業ができる場所の確保が必要です。また、仮設備が多く必要なため、工期が長くなる傾向があります。

トラベラークレーンベント工法

トラベラークレーンベント工法は、流水部や谷部といった場所で多く用いられている工法です。トラッククレーンの設置が困難な環境の場合に使用されています。

桁上にトラベラークレーンの走行机上設備を作り、運搬台車で部材を運びます。トラベラークレーンを前進させながら架設していく工法です。

架設計画には、架設中の応力やたわみの計算が必要です。仮設備の準備が必要で、工期も長くなります。

フローティングクレーン工法

フローティングクレーン工法は、工場の岸壁や現場付近で大ブロックに組み立てた架設桁を現地に運び、フローティングクレーンで橋体を作り上げる工法です。

大ブロックに組み立てた時点でほぼ完成に近いため、橋桁の支持がいりません。そのため工期が短くなります。風や潮流といった天候に左右されやすいため、進入経路や運搬時の荷重の検討が必要です。

橋梁は生活に欠かせない存在

橋梁(きょうりょう)とは、移動の障害となる、河川や海などを渡るための通路となる構造物です。橋梁と橋の違いは、「橋梁」は専門用語で、一般的には「橋」と呼ばれます。

橋梁は、上部構造と下部構造に分かれており、橋を架ける場所に合わせたさまざまな種類の上部構造があります。橋梁工事に関しても現場の環境に合わせた工法があります。

人と人や、街と街をつなげる橋。生活に欠かせない存在となっている橋には、より安全性や強固性が求められています。橋梁について学び、建設業従事者として、未来の生活への架け橋となる役割を担いましょう。

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