建設と建築という言葉は日常の中でもよく耳にする言葉ですが、その違いといわれると答えに詰まる方もいるのではないでしょうか。
どちらも「建」という文字が入っているように、何かを建てる仕事ですが、細かく定義を整理すると意外と違う面があることが確認できます。
この記事では建設と建築の違いや、それぞれの道を選んだ場合のキャリアプラン例について解説します。建設や建築業界についてくわしく知りたい方や、就職先としてどちらを選ぼうか迷っている方はぜひご一読ください。
建設と建築の定義
まずは建設と建築の定義について確認していきますが、建設と建築の関係は下記の図のようになります。
図でざっくりとしたイメージをつかんだら、定義を確認してみましょう。
建設の定義
建設という言葉を辞書でひくと、『建物・施設・道路などを、新たに造ること』と記載されています。建設現場の作業は地上だけに限らず、海上や地下などの土木工事も含みます。
身近な建物からインフラ施設、橋など、建設は人々の生活に必要不可欠な社会環境を整える仕事といえます。
建築の定義
建築の意味を調べると、『家屋などの建物を、土台からつくり上げること。また、その建物やその技術・技法』とあります。
つまり、建築とは家屋などの建物を作ることであり、建設の中でも建物関係に特化した工事を指します。
中には歴史的な施設や、外観はもちろん内装のデザインにまでこだわったデザイナーズマンションなど、芸術性が求められることもあります。
建設会社と建築会社の定義
まず、建設会社と似ている言葉で「建設業者」がありますが、建設業者とは、建設業法により「第3条第1項の許可を受けて建設業を営む者」と定められています。
一方、建設会社や建築会社と名乗ることを定義する法律はありません。建設会社と建築会社の違いは会社によってまちまちです。
建物の建築を中心にしたいのか、土木含めた建設業の範囲を取り扱いたいのかといった経営者の方針が影響してきます。
規模の違い、扱う仕事の範囲、経営者の方針などによって業者の定義が変わりますので注意しましょう。
建設と建築の違い
ここからは建設と建築の違いについて「会社規模」「仕事内容」「待遇」の3つの要素から違いと、それぞれの仕事例を紹介します。
企業規模の違い
建設会社と建築会社を比較した場合、一般的に建設会社のほうが会社の規模が大きいことが多いです。
理由は前章で述べたように、建設は建築を含んだ作業を行っているため必要な人数や作業も多様化し、規模が大きくなるためです。
しかし、大きな規模の建築会社や小さな規模の建設会社も存在しますので、一概に言い切ることはできません。
気になる会社があれば、過去に行った施工例や関わったプロジェクトを調べてみると企業規模を確認することが可能です。
仕事内容の違い
建設と建築の仕事内容の違いは気になる人が多い部分ですので、少しくわしくみてみましょう。
建設の仕事内容
建設は仕事の規模が大きいため、複数の専門業者を取りまとめて監督・管理する仕事が中心です。建設工事の範囲は建築からダム建設といったインフラ整備まで広範囲で、幅広い知識や技術が求められます。
各関係者と連携を取り円滑に工事を進める必要があるため、コミュニケーションスキルやスケジューリング力が必要となります。
建築の仕事内容
建築の仕事は、住宅や建築物の設計から実際の工事の監督・管理といった建物に関する総合的な業務です。
安全性だけでなくデザインの観点から、細かいディティールにまで注意が必要になることもあり、建築に関する設計、構造、設備などの深く専門性の高い知識が求められます。
職人が所属しているハウスメーカーや工務店では、自社だけで建築に関する工事を一通り行うこともあります。
待遇の違い
建設会社でも建築会社でも、どの職種のどのような立場に何年いるかによって給与など待遇は変わってきます。
給与や福利厚生などの待遇は、基本的に人の多い大企業のほうがしっかり規定されていることが多いため、規模の大きな建設会社のほうが待遇が良い傾向にあるのは事実です。その分、建設会社は求められる技術や管理能力も高くなります。
実際の仕事例
検索エンジンで「建築 実例」と検索することで、さまざまな建築会社の実際の仕事例が出てきます。
住宅の仕事例が圧倒的に多く、中でもデザイナーズ住宅のような芸術性と実用性を兼ね備えた住まいの建築が仕事の中心であることがわかります。
同様に「建設会社 施工例」で検索すると、高速道路や河川工事、トンネルなどの仕事例を見ることが可能です。
規模が大きな仕事の中でも、安全性と頑丈さに重きを置いたしっかりとした仕事で、私たちの生活全体を支えてくれていることがわかります。
建設の仕事に向いている人の特徴
建設の仕事は、地図に残る大規模なプロジェクトに挑戦する機会のある仕事です。どのような人が建設の仕事に向いているのか特徴を見てみましょう。
建物だけではなく広い経験を積みたい人
「建設と建築の定義」で解説したように、建設の中には建築はもちろん土木その他といった仕事が含まれているため、建物だけではない幅広い経験を積むことができます。
橋や発電施設などのように、まったく違うジャンルの建設を行う場合は必要な知識も変わりますので、常に勉強が必要です。
そのため、多様な経験をしてみたいという前向きな気持ちで学び続ける心を持てる人は、建設の仕事に向いています。
大規模プロジェクトに興味がある人
建設の仕事は、複数の業者や職人を監督・管理することが多くなりますので、住宅などを手掛けることが多い建築に比べて規模が大きくなります。数年単位の大規模プロジェクトになることも珍しくありません。
そういった地図に残るような大きな仕事を、たくさんの人と協力して完成させたいという方には、建設はぴったりの仕事といえます。
海外で活躍したい人
国土交通省の「建設企業の海外展開」によると、アジア大洋州の市場規模は日本の約3倍といわれているように、海外での建設需要は高い状況です。
近年では、国土交通省が海外インフラ展開人材養成プログラムを行うなど、世界各国のプロジェクトへ参加できる機会が増えてきています。
いつか海外で活躍したいという希望をお持ちの方には、建設の仕事がおすすめです。
建築の仕事に向いている人の特徴
続いては、建築の仕事に向いている人の特徴について確認してみます。
家づくりのプロを目指したい人
多くの人にとって住宅は人生で一度の大きな買い物となります。じっくりと時間をかけて依頼主からの希望を聞き取り、これからの人生を過ごすことになる空間を作り出す家づくりのプロは非常に大切な存在です。
建設のようにさまざまなジャンルに手を広げるのではなく、家づくりに集中して経験を積み知識を蓄えたいという方におすすめです。
地元に密着した仕事がしたい人
国や大企業を相手にした仕事よりも地元に貢献したいという人にも、建築が向いています。
地元に自分が手掛けた住宅が完成すると、付近を通るたびに自分の仕事に対する誇りと満足感を得ることができるでしょう。
創造性と芸術性を活かしたい人
日の入る明るい家、木のぬくもりを活かした建築物など、依頼主からこだわりの指定が入る場合もあります。
利便性と芸術性のバランスをしっかりと取ることは容易ではないですが、自分の個性を活かしつつ、依頼主の想いを形にする建築の仕事は、非常にやりがいのある仕事です。
建設の仕事のキャリアプラン例
建設の仕事に興味を持った時、就職した後のキャリアプランが気になる方もいるかと思います。どのようなキャリアプランがあるのか、資格取得例と一緒にまとめましたので参考にしてください。
技術者のトップを目指す(施工管理技士)
施工管理技士は、工事を施工する場合に工事現場に配置しなければならない主任技術者や監理技術者になるために必要な国家資格です。
施工管理技士の資格を取得することにより、周辺住民への工事の説明を含む仕事を行う施工管理のスペシャリストとして、工事現場の監督・管理を行うことができます。
技能者のトップを目指す(技能士)
技能士とは、各都道府県の職業能力開発協会が実施する技能検定に合格した人に与えられる国家資格です。131職種(令和5年4⽉1⽇時点)あり、資格を取得することによって、現場の職人としてキャリアアップすることができます。
また、技能士として経験を積み、技能者(職人)のトップを目指すこともキャリアプランの一つですが、将来的に、工事現場の適正な進行指示、品質と安全の確保、費用の管理調整などを担う技術者(施工管理)を目指すこともキャリアプランの一つです。
建築の仕事のキャリアプラン例
次は、建築の仕事のキャリアプラン例を見てみます。
一級建築士を目指す
建築関連の資格で一番に思い浮かぶのは、建築士ではないでしょうか。建築士とは、建築工事の監理や建築物の設計に従事できる国家資格で、一級・二級・木造建築士の3種類が存在します。
特に一級建築士は、取り扱える建築物に制限がありません。一級建築士を取得することで、技術者としての付加価値を高めることができます。
技術者のトップを目指す(建築施工管理技士)
建築施工管理技士とは、建築現場での監督を行うために必要な国家資格です。
建築現場で働くそれぞれの専門職に指示を出し、スケジュール管理や安全管理などのすべてをまとめて建築物の完成を目指します。
技能者のトップを目指す(技能士)
建設のキャリアプラン例でも挙げたように、建築でも技能士はキャリアアップとして有効な資格です。
建築物の漏水を防ぐ防水施工技能士や板ガラスの切断・加工、組立て・取付けを行うガラス施工技能士といった資格を取得することで、技能者(職人)としてのキャリアアップを目指すことができます。
共通するキャリアプラン例
建設と建築のどちらでも、転職や独立は基本的なキャリアプラン例となります。転職や独立のためにはどのような準備が必要となるのか、確認してみましょう。
よりよい環境を求めて転職
資格を取得し現場での経験を重ねた人材は、人手不足が進む建設業界(建築含む)では引く手あまたの存在です。
中小規模の会社で経験を積んでからゼネコンや外資系への転職を行うことにより、よりよい環境で仕事をすることも有効なキャリアプランとなります。
自分が最終的にどのような仕事をしたいのかを考え、転職に備えて資格を取得する、実績を積むといった準備を行う必要があります。
独立を目指す
ある程度キャリアを積んだ方の多くが一度は考えるのが独立です。
独立することで雇用されるよりも自由な働き方が可能ですが、その分、営業や設計、事務や現場での作業などすべての責任が自分にかかってくることになります。
独立を目指す場合は、計画的に経験を積み重ねることはもちろん、将来の顧客や自分に足りない部分を補ってもらえる仲間作りを意識して人間関係を構築する必要があります。
やってみたいこと、得意なことから選んでみよう
似た言葉である建設と建築ですが、建築が住宅やオフィスなどの建物を建てることを指す言葉であるのに対し、建設は建築や土木工事に加え、その他のインフラ施設・設備などを造り出す工事のすべてを指す言葉です。
建設と建築の仕事では、それぞれに向いている人の特徴やキャリアプランが違ってきますので、自分のやってみたいことや得意なことから選んでみるのもよいでしょう。
それぞれの専門分野の職人、作業の統括を行う施工管理といった幅広い仕事がありますので、ぜひ興味を持てる仕事を探してみてください。
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