建築士とひとことでいっても種類があり、仕事の内容も別物です。資格は3種類ありそれぞれ受験資格や仕事の範囲が決められいるので、ビジョンと照らし合わせて目標を立てましょう。これから建築士の仕事内容の違いや、試験概要を紹介するのでチェックしてください。
建築士ってどんな資格?
建築士資格といっても一級建築士・二級建築士・木造建築士と3種類に分かれており、どれも国家資格の扱いなので相応の受験資格や実務経験が必要です。また携われる大きさや仕事の内容も違うので、やりたいこととズレが出ないように注意しましょう。1つの資格を取得したからといって、いきなりスタジアムのような巨大建造物を手がけることはできません。
また、実務経験年数が必要になるケースもあるため、ビジョンが崩れないように資格概要を把握しておくことが重要です。これからの選択肢を広げるためにもしっかりと把握し、自身の就きたい仕事を目指していきましょう。
資格の種類を解説
上記で紹介したように、同じ建築士の中でも一級・二級・木造と3種類に分かれていることが把握できたと思います。資格によって扱える建築物の大きさや材質も変わってくるので、それぞれの資格でできる範囲を把握しておきましょう。ここからは3種類の業務の範囲に加えて、必要な受験資格を紹介していくのでチェックしていきましょう。
一級建築士
設計する建築物に制限がないのが特徴的です。建築業界から転職をしないのであれば目標にする人も多いと思います。
タワーマンションやショッピングモールなど巨大建造物に携わる事ができ、全ての建物を扱うことができます。戸建住宅の需要が減っていることから、マンションなどの巨大建造物を扱えるさまざまな経験ができる資格でしょう。
二級建築士
建築業界に身を置くのであれば、まず目指したいのが二級建築士です。建物高さ13m、軒高9m以内、建築物の延べ面積1000㎡以内の建築物設計まで手がけることができ、一般的な住宅建築に携われます。設計製図するのにも必須資格ですので、業界に携わっていくならぜひ取得したい資格です。
木造建築士
3つの中で扱える建造物の範囲が狭く、合格率が一番高いのが木造建築士です。名前の通り木造しか扱うことができなく、高さ300㎡以下の制限があり資格を活かせる場面が少ないのが難点。他の2種類を目指している人の方が多く、建築に関する資格を全て所有したい人や力試し程度で受験するといいですね。
二級建築士と受験資格は同じなので、二級以上を目指すのであれば木造建築士は一旦取らずに最短ルートで二級や一級建築士試験に挑むのがいいでしょう。
一級・二級・木造の試験概要
試験に向けてどんな内容の学習計画を立てればいいのか、合格率はどれくらいなのか不安を抱えることもあると思います。ここからはそれらの概要を紹介していくのでチェックしてみましょう。
それぞれ試験の日にちや内容、受験資格が異なるのでチェック漏れがないように確認しておくことが大切です。学科試験は次回免除されるケースもあるので、計画的に学習して資格を取得しましょう。
また、令和2年3月より、建築士法の改正で建築士の受験要件が変わり、実務経験は受験資格ではなく、原則として免許登録時の要件に改正されました。免許登録要件も合わせて紹介するので、忘れずにチェックしておきましょう。
受験資格
上記でも紹介したように、令和2年3月より受験要件の概要が変わりました。以前は受験を受けるのに学歴に応じた実務経験が必要でしたが、実務経験は免許登録のときまでに積んでいれば問題なくなったのです。学歴の中にも指定学科を修めていれば短くなるケースもあるので、現在の環境と照らし合わせてチェックしてください。
【一級建築士】
受験資格要件
(建築に関する学歴・資格) |
免許登録要件
(学歴:実務経験) |
大学・短期大学・高等専門学校 | 大学:2年以上
短期大学(3年):3年以上 短期大学(2年)・高等専門学校:4年以上 |
二級建築士 | 二級建築士:二級建築士として4年以上 |
国土交通大臣が同等と認めるもの | 国土交通大臣が同等と認めるもの:所定の年数 |
建築設備士 | 建築設備士:建築設備士として4年以上 |
【二級建築士・木造建築士】
受験資格要件
(建築に関する学歴・資格) |
免許登録要件
(学歴:実務経験) |
大学・短期大学・高等専門学校・高等学校 | 大学・短期大学・高等専門学校:なし
高等学校・中等教育学校:2年以上 |
実務経験7年 | ―:7年以上 |
都道府県知事が同等と認めるもの | 都道府県知事が同等と認めるもの:所定の年数以上 |
(公益財団法人 建築技術教育普及センターより)
試験日程・費用
科目別試験が年に2回開催しており、同日に2種の科目をするわけではないので注意してください。費用も資格によって多少異なるので、チェックしておくといいですよ。
日程(学科) | 日程(設計製図) | 費用 | |
一級建築士 | 7月中旬 | 10月中旬 | 17,000円 |
二級建築士 | 7月上旬 | 9月中旬 | 18,500円 |
木造建築士 | 7月中旬 | 10月中旬 | 18,500円 |
(公益財団法人 建築技術教育普及センターより)
試験内容・合格基準
それぞれ問題数や出題内容も異なるため、把握し合格までの最短ルートを計画しておきましょう。
学科試験は一級建築士が125問、二級・木造建築士が100問と差があります。一級建築士では、点数が125点中90~95点が合格ラインの目安になっています。二級・木造建築士は100点中60点以上必要で、問題数も合格ラインも一級より緩く設定されています。
別日に行われる設計製図試験では、それぞれの資格の「設計に必要な基本的かつ総括的な知識及び技能」について問われ専門的知識をいかに理解しているかが重要です。
難易度もそれぞれ異なり一級建築士は約10%前後、二級は20~25%前後、木造建築士は35%前後です。一級は狭き門なので1発合格を狙わず狙った学科の合格をクリアしながら分けて総合合格するといいですね。
一級・二級・木造それぞれの違いとは
木造建築士は名前の通り木造しか扱えないという分かりやすい違いがありますが、一級・二級の具体的な違いはどこなんだろうと疑問に思いますよね。公共施設の建築物がどのくらい扱えるのか、どのくらいの大きさが扱える範囲なのか資格によって違うので目標とズレがないように把握しておくことが大切です。ここからは、それぞれの違いを紹介していくのでチェックしてみましょう。
一級建築士と二級建築士の違い
一番の違いは、設計できる建築物の広さや高さに違いがあります。一級は延べ面積500㎡以上を扱えるのに対して、二級は30~300㎡しか設計することができません。高さでは一級が13m以上もしくは軒高が9m以上を扱うことができますが、二級では高さ13m軒高9m以下しか扱うことができません。
上記のように一級は大体の建築物を扱えますが、二級は戸建住宅がメインになることが多い傾向です。
ですが二級建築士であっても、病院や学校などの公共施設であれば延べ面積500㎡以下という条件付きで設計や工事監理に携わる事ができます。
二級建築士と木造建築士の違い
木造建築士は木材を使った住宅程度しか扱えず、二級よりも設計・工事監理・材質の範囲が狭くなっています。受験資格はどちらも同じなので、仕事の幅を広げるためにも二級を優先してもいいかもしれません。
合格率も上記のように違いがあり、小規模のリフォームであれば木造建築士でも扱えるのでリフォーム業に就きたい人は選択肢の1つとして試験に望んでもいいですね。
難易度の違いは?
木造建築士、二級建築士、一級建築士の順で難易度があがり、国家試験の中でも一級建築士は難易度が高い部類です。設計製図試験は事前に問題が公表されるため、合格率が一級で4割、二級で5割と高めで合格率で見るとそこまで差はないように見えます。
しかし学科試験では一級が20%前後、二級は30%と合格ラインが低い中でさらに差があり、一級は取得難易度が高い傾向です。
総合合格率も難易度順に35%・20~25%・10%前後と公表されており、それぞれの難易度を理解してしっかりと準備をして試験に挑むことが重要ですね。
建築士の資格を取得するメリット
都心ではマンション建設や再開発、地方では地方活性化を促進する建設が進んでいるので、将来的にも需要のある仕事であり、建築士資格取得はメリットの1つですね。また、やりがいも感じやすく目に見えて自分が手がけた物が完成するので、チームや関係者と喜びを共有することができるでしょう。
一級建築士を取得した人であれば経験も豊富で転職の際に需要が高く、さらなる活躍の場へ飛び込むこともできます。難易度の高い試験や年数が必要な資格ではありますが、見合ったメリットといえる部分は多いでしょう。
建築士を取得することでキャリアアップ!
建築士の資格3種類のなかの一級建築士を取得できれば、資格手当やキャリアアップの可能性にも繋がるため、ぜひ取得を目指したいですね。また、一級建築士より専門性の高い資格である「構造設計一級建築士」「設備設計一級建築士」を取得できれば、活躍の幅はさらに広がるでしょう。
将来的に建築業界が衰退する可能性は低く、建築士の資格を持っておけば人材としての価値があがります。経験が重要な業界ですが、若いうちから建築士として活躍できる土壌を築ければ、転職にも有利になるでしょう。