協力業者にとって迷惑な「追加工事」。でも、ゼネコン様には勝てっこないだろ?

スーパーゼネコンの一次協力業者の実態

元請ゼネコンも予算は厳しいだろうが、協力業者はもっと厳しい。協力業者が元請ゼネコンに出した見積金額が、最初からOKになることはまずない。民間企業の厳しさだ。

「この金額ではちょっと無理ですね」とおっしゃる元請ゼネコンの見積・積算部に対して、「では、いくらの金額ならOKなんですか?」と尋ねると、大体「この金額の半分でないと無理です」と言われる。「ふざけるなよ」と思いつつ、「いったん会社に帰って相談します」と伝えるのが常道だが、相談する相手なんかいるわけがない。毎回毎回このありさまだから、最初から手は打ってあるのだ。

正直、半額なら良いほうで、何とかなる。ひどいと「3分の1でやれ」と平気で言う元請ゼネコンもいる。鬼だ。でも3分の1は赤字ギリギリの線で、仕事がないよりマシのレベル。

……これがスーパーゼネコンの一次協力業者の実態だ。

現場は大規模な総合病院、設計は大手の組織設計事務所

この現場は大規模な総合病院で、施工はスーパーゼネコン。設計は大手の組織設計事務所、別名「××××設計」だ。おっと、これは元請ゼネコンの職員さんがおっしゃっていた悪口です。

私が担当するのは、内部木工事と建具工事と洗面関係の内装工事。それほどの金額ではないし、大工職人も常時3~5人ぐらいで対応できる規模だ。手摺り、巾木は2000mほどあるが、のりを着けてピンタッカーで止めるだけ。残りの工期4か月ぐらいで乗り込めば対応できる、楽勝な現場だ。

実行予算の検討も十分できて、なんとか利益は出せる。あとは現場が工程通りに進んでくれれば問題ないのだが、そうもゆくまい。問題なく進む現場があれば、逆に拍子抜けする今日この頃だ。

ほら、追加工事が出たよ

あれ、平面詳細図と設計図が、部分的ではあるが違っている。詳細図には、新たに洗面でのライニング工事が、追加で描かれていた。しかも数か所。設計図では確かに洗面があるのだが、ライニングは描かれていない。当然見積りはしていない、追加工事だ。

さらに、さらにである。病室にあるコンソールボックスというやつ。ベットの頭上の壁に付いている酸素やコンセント、呼び出しスイッチなどがあるプラスチックのボックスのことだが、それをなんと木でやってくれとの話、しかも全病室、6階建ての病院でだ。楽勝気分が一気にどこかへ吹っ飛んだ。お先真っ黒、お膳をひっくり返したい気分だ。

病室内は腰までタモの練り付けウレタン拭きとり仕上げで、ベット同士の間には、同業他社のパラマウントベッドの棚付きのボックスが入る設計になっている。木の木目を生かし、和風の落ち着いた雰囲気をかもし出すようになっていて豪華だ。でも、まさかコンソールボックスが木造になるとは考えも及ばない。さすが「××××設計」だ。

追加工事の施工図作成は徹夜で描いた。病室のコンソールボックスを木造にするのは日本初かもしれない。構造や取付方法の検討、設備業者との調整など寝る暇がない。言っときますけど、この現場は予算も少ないと言うことで、他の2現場との掛け持ちだった。同時に3現場を見るのはかなり過酷で、しかも3現場とも同じスーパーゼネコンさん。JV職員さんからは「〇〇さん、大ピ~ンチ!(笑)」だって、さすがに怒りが芽生えた。

とりあえず徹夜で図面を描いて、設計事務所との打ち合わせ。週に一度、東京から出張してくる担当者との貴重な時間だ。担当者の出張に間に合わせるため、徹夜で図面を描いた。初対面、心の中でコイツが原因かと思うと、怒りがふつふつと湧いてくる。顔で笑って、心で泣いて打ち合せだ。打ち合せの最後には、キツい一言、「もう追加はないでしょうね?」 と私。設計者は「もうないと思います」と。思いますだと?ないと言えないのか?でも顔はニコニコ、因果な商売だ。

勝てないよ、ゼネコンさんには

さあ、追加工事の契約だ。季節は夏真っ盛り、栄養剤を何本も飲む。問題は金額がどの程度まで切られるかだ。追加工事である。本来は追加など、あるのがおかしい。工事予算で施主に追加予算を請求できるか?ふつう出来ないでしょ。住宅工事でもお施主さんは、予算ギリギリで組んでいるんですよ、追加の金などあるはずがない。しかもこの総合病院は公共工事です、税金です。

通常は元請ゼネコンが被るしかないでしょう。しかし元請も実行予算を組んでいますからね。そら来たよ、恐ろしい言葉が「このくらいの予算しかないんだよ、頼むよ」「え、マジ」信じられない話だが、見積落ちだったらしい。コンソールボックスを見積りしていなかった。馬鹿野郎だ。

これで、この工事の利益率は大分下がった。金額は増えたが、利益は出ない。この責任は自分に来る。会社は数字しか見ていないし、現場の苦労などしらない。上手くやって当たり前の世界、何かあるとひどい目に合う。

追加工事は迷惑だ。でも必ずある。どう処理するかは経験がものを言う。

追加工事は自分の会社だけでなく、他社でもあったようで、喧嘩をしている輩がいた。無駄な喧嘩はやめよう。ゼネコン様には勝てっこないよ、もっと頭を使っていこうよ。

ピックアップコメント

>3分の1は赤字ギリギリの線でとのことですが、それだと原価率30%程度でしょうか?飲食業並みの原価率になりますが・・・。正直な感想を言えば、「どんだけボッタくってんだよ」です。毎回そんな金額を提示しているのでしょうか?ましてや、素人相手ならまだしも、ゼネコンの見積部相手なら、おおまかな原価も掴んでいるでしょうし、いくらで出来るか概算データもあるでしょうし、完全に見透かされてませんか。毎回、過剰な金額を提示してるから「値引しろ」って言われるんであって、その原因の一端はご自身にもあるような気がします。利益を出してはいけない訳ではなく、きちんと儲かって欲しいですが、原価の3倍はさすがに誠実な価格とは思えないし、適正価格だと思えません。それとも、私の感覚が狂っているだけでしょうか?「値引しろ」は、互いに腹を割って話す所まで行きつけていない結果だと思いますが・・・。

この記事のコメントをもっと見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
仕事を知らない「設計の先生」に言いたい! 木工事が寸法1~2㎜にこだわるワケとは?
「失敗しても怒られない」元・格闘家が建築施工管理技士を目指すワケとは?
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
建築現場のムダ、課題、将来とは? 志手教授(芝浦工業大学)と中島CEO(CONCORE’S社)が語る
コネでゼネコンに入社。しかし施工管理6年で退職した「公務員」の胸中…
中学を出て大工になる。ふとしたことで正社員ではないが、大手ゼネコンの社員となり頑張る。入った部が有名人や社長の高級住宅、寺社建築を手掛ける部署であった。周囲が頭の良い人ばかりなので、それにつられて自分も一級建築士、建築施工管理技士に合格する。その後、住宅メーカーやゼネコンなどに転職。今は生産設計などを手掛けている。
モバイルバージョンを終了