「K-D2 PLANNER®」の操作画面

「K-D2 PLANNER®」の操作画面

国内4社のクレーンがひとつのプラットフォーム上で対話する。コベルコ建機の「K-D2 PLANNER®」は”クレーン計画の共通言語”となるか

クレーン施工計画の策定支援ソフトにとって課題となる、クレーンメーカー間の“データの壁”。その壁を打ち破り、BIM/CIM時代のクレーン施工計画を新たなステージへと導くソフトウェアがある。コベルコ建機株式会社(山本明社長)が開発した、Autodesk社製Revit用アドイン「K-D2 PLANNER®」だ。

「K-D2 PLANNER®」は、クレーン施工計画の策定を支援する高精度なシミュレーションソフト。直感的なクリック操作だけで施工計画の断面図や平面図の作成、接地圧(※1)や負荷率などの自動計算などが可能で、設計工数の削減やクレーン計画精度の向上が期待できるほか、最適クラスのクレーン選定機能による重機コストの削減にも貢献する。

そして、「K-D2 PLANNER®」がとくに画期的なのは、自社モデルに限定しない「オープンな思想」にある。コベルコ建機のクレーンモデルはもちろん、タダノ、加藤製作所、住友重機械建機のクレーンモデルといった国内主要メーカーのモデルを標準搭載。これにより、特定の現場やメーカーに縛られることなく、高精度なシミュレーションを同一のプラットフォーム上で行える、真のユーザーフレンドリーな環境を実現した。

国土交通省が推進するBIM/CIM原則化の流れを追い風に、2023年4月に一般販売を開始。NETIS登録(登録番号:KT-220195-A)や建築BIM加速化事業(現在の建築GX・DX推進事業)の補助金対象にも選定されるなど、公的な評価も高い。

今回、「K-D2 PLANNER®」の開発を主導したコベルコ建機の新事業推進部に所属する3名のキーパーソン、新事業推進部K-D2事業推進グループ長の岡本真典氏、同グループの髙松伸広氏、小山夏美氏にその詳細を伺った。

建物とクレーンを3Dデータでつなぎ新たな価値創出を実現

コベルコ建機株式会社 新事業推進部K-D2事業推進グループ長の岡本真典氏

――まず、「K-D2 PLANNER®」開発の背景と概要を教えてください。

岡本氏 近年、建築の施工や維持管理の現場では、デジタルデータを活用する動きが本格化しています。私たちコベルコ建機は、建物の3Dデータに重機の能力や特性といった情報を掛け合わせることで価値を創出できる施工計画の策定支援ソフトを提供することで建設業に貢献したいと考え、2023年4月に「K-D2 PLANNER®」の一般販売を開始しました。

このソフトは、Autodesk社のRevit上で動作するアドインです。建築の施工計画を立てる際、クレーンは非常に重要な設備となります。そこで、建物の3Dモデルとクレーンをセットで扱うことで、どのような順序で施工するのが最も適切かを正確かつ効率的に検討できるように支援します。

【デモ操作 直感操作】3D上の資材をクリックする直感的なクレーン操作を実現 / YouTube(コベルコ建機株式会社【公式】)

――具体的にはどのような機能があるのでしょうか?

岡本氏 主な機能として、吊り荷をクリックするだけで吊り姿勢を3Dモデル上で確認できる機能があり、3D図面上で建物とクレーンの干渉の確認ができます。また、その姿勢での断面図や平面図もワンクリックで作成できます。さらに、ブームの角度等で吊り上げ能力は変化しますが、「負荷率」を常にチェックする機能も備えています。さらに、クレーンの「接地圧(※1)」の確認や、重量物を吊った際のブームの「たわみ(※1)」を精密にシミュレーションする機能もあります。

【デモ操作 施工に必要な情報開示】クレーンの姿勢に合わせた定格総荷重をはじめクレーンの後端半径、作動範囲図、接地圧(※1)を表示し、クレーン施工計画を支援 / YouTube(コベルコ建機株式会社【公式】)

一連の建て方の施工ステップをAutodesk社のNavisworksに連携し動画として出力することも可能で、現場作業員や発注者様との情報共有にも役立ちます。クレーンを熟知していないオペレータであっても直感的に扱える操作性を追求し、機能性と実用性を両立させました。

主要4社のクレーンモデル実装で、現場を選ばず使いやすく

新事業推進部新事業プロジェクトグループ 小山夏美氏

――導入企業からはどのような反響がありますか?

小山氏 やはり、国内の主要クレーンメーカー4社(タダノ、加藤製作所、住友重機械建機クレーン、コベルコ建機)のクレーンモデルを標準で実装している点が非常に大きいと評価いただいています。これにより、特定のメーカーに縛られることなく、どの現場でも使いやすくなったと好評です。

「K-D2 PLANNER®」に標準搭載されている国内主要メーカーのクレーンモデル

従来、Revit上でクレーンを動かすには、各メーカーの公式サイトから3Dモデル(ファミリ)をダウンロードし、自分で加工するか、外注する必要がありました。「K-D2 PLANNER®」を使えばその手間とコストが不要になり、作業時間の大幅な短縮につながります。

【デモ操作 標準クレーン ファミリ配置】接地圧、たわみ計算に対応したコベルコ建機の標準ファミリを配置し施工計画に活用可能 / YouTube(コベルコ建機株式会社【公式】)

最適なクレーン選定で、数百万単位のコスト削減効果も

――導入による具体的な効果について教えてください。

小山氏 あるユーザーからは、これまで4社のクレーンモデルをRevitで動かすために約1,000万円の外注費がかかっていたものが、導入後はその費用が丸々不要になったというお声をいただきました。

また、クレーンの選定機能も大きな効果を生んでいます。現場の位置や吊り荷の重さ、許容できる負荷率などの条件を入力するだけで、適合するクレーンのみをリストアップしてくれます。実際の現場では安全マージンを見て少し大きめのクレーンを選定しがちですが、本ソフトを使えば「能力的に問題のない、最適なクラス」を判断できます。

【デモ操作 クレーン選択】検索したいクレーンを選定し、現場条件を設定することで最適なクレーンの検索が可能 / YouTube(コベルコ建機株式会社【公式】)

例えば、これまで120トンクラスのクレーンを使っていた現場で、シミュレーションの結果90トンクラスで十分だと判明すれば、大幅なコスト削減が可能です。ある事例では、10ヶ月の重機レンタル費用で約400万円のコスト削減が見込まれるとの試算も出ています。

「K-D2 PLANNER®」の導入によるコスト削減シミュレーション

さらに、2Dで図面を作成していたユーザーが3D化に取り組む際のハードルも下がります。「K-D2 PLANNER®」はRevitのアドインですが、操作は「K-D2 PLANNER®」の画面上で完結できます。通常、Revitでクレーンモデルを動かすには手間がかかりますが、「K-D2 PLANNER®」は操作画面がシンプルで、モデル作成の手間もかからないため、従来の2D作図と比較して約20%も作業時間を短縮できたというお声も受けています。

最新機能「運搬経路の自動生成」で、さらなる安全性と効率化を

新事業推進部K-D2事業推進グループ 髙松伸広氏

――最近、機能がアップデートされたそうですね。

髙松氏 はい。お客様から特にご要望が多かった「運搬経路の自動生成機能」を追加した最新バージョンをリリースしました。

※バージョンアップ情報はこちら

この機能では、画面上で吊り荷の「玉掛け」と「玉外し」の位置を指定するだけで、最適な運搬経路を自動で生成します。また、足場や屋上の既設物といった干渉領域とのクリアランス(隔離距離)を設定すれば、障害物を回避する安全なルートを計算します。作成した経路データを「Navisworks」に出力すれば、アニメーションとして確認することもでき、関係者間でより具体的なイメージを共有しながら、安全で効率的な施工計画を立てるのに役立ちます。

この機能は、周辺との干渉が特に問題となるプラントの改修工事や、近接構造物に注意が必要な都市部での橋梁工事、クレーンの設置スペースが限られる現場などで特に有効です。

K-D2 PLANNER® バージョンアップのお知らせ Revit2025への対応や新機能が搭載! / YouTube(コベルコ建機株式会社【公式】)

設計段階からの活用で、現場の手戻りを抜本的に解消

――ゼネコンではどのように活用されていますか?

小山氏 あるゼネコンのお客様からは、単に吊り作業の可否を検討するだけでなく、設計段階で工区割りや建て方のシミュレーションができる点を高く評価していただいています。計画の初期段階で施工上の問題点を洗い出せるため、設計へのフィードバックが容易になり、結果として現場での大規模な手戻りを防ぎ、工期短縮に大きく貢献しているとのことです。

――BIM/CIMに踏み切れない企業もまだ多い印象です。

小山氏 「BIM案件がなければ3D化はまだ先」と考えるお客様もいらっしゃいます。しかし、最近はBIM案件が増加傾向にあり、初めて受注したことを機に3D化に踏み切り、さらに一歩進んで「K-D2 PLANNER®」を検討されるケースが増えています。一度使うと「もう手放せない」と率直な感想をいただくことも多いです。まずは30日間すべての機能が使える無料体験版からお試しいただければと思います。

※「K-D2 PLANNER®」の無料体験版はこちら

ユーザーと共に進化するソフトウェアへ

――日本のBIM/CIM市場の今後をどう見ていますか?

岡本氏 国土交通省の「i-Construction 2.0」でも指摘されている通り、BIM/CIMはまだ十分に活用されているとは言えません。しかし、政府が法整備を進める方針を示していることからも、今後市場は間違いなく拡大していくと見ています。

――その中で、コベルコ建機としてはどのように展開していきますか?

岡本氏 まずは、お客様との対話を重ね、製品価値を継続的に高めていくことが最も重要です。最近では、一括での干渉チェックや、クレーンの組立・解体時の敷地占有範囲の検討など、より高度な機能を求める声が寄せられており、こうしたニーズに一つひとつ応えていきます。

また、クラウド連携の強化や、販売代理店である大塚商会様などを通じた他のBIM関連ソフトとの連携を深め、施工計画検討の標準ソフトとしての価値も高めていきたいです。

CSPI-EXPO2025 国際 建設・測量生産性向上展での出展の様子

――最後に、今後のマーケティング戦略について教えてください。

小山氏 「K-D2 PLANNER®」は専門性の高い製品ですので、Web広告でターゲットを絞りつつ、建設DX展のような専門展示会に積極的に出展し、課題意識の高いお客様に直接情報をお届けしていきます。また、大塚商会様と共同でウェビナーを開催するなど、オンラインでの認知度向上にも力を入れています。BIM/CIMの浸透とともに、足元の販売目標を大きく超える手応えを感じています。

※1…接地圧やたわみの表示機能はコベルコ建機のクレーンのみの対応。

参考:「K-D2 PLANNER®」公式サイト

※「K-D2 PLANNERⓇ」はコベルコ建機株式会社の登録商標です。
その他の会社名や商品名、サービス名は、各社の商標、登録商標もしくは商号です。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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