AIと技術者の共存・対立

東大首席、最強OSを5日で突破。そんなAIにも奪えない仕事がある

AIの進化速度が危険水域に

「ロボットは東大に入れるか」

そんな問いを掲げたプロジェクトが、国立情報学研究所によって2011年に始まりました。

13年後の2024年、AIは東大に不合格でした。ところが2026年度の東大入試では、生成AI「ChatGPT-5.2 Thinking」が理科三類を含む全科類で首席合格者を上回る約500点(550点満点)を記録、トップ合格を果たしました。たった2年で、飛躍的な進化を遂げたわけです。

そして2026年4月7日、さらに衝撃的な出来事が起きます。米国アンソロピック社が開発した「Claude Mythos Preview」が、危険すぎるとして非公開となり、AI業界に激震が走りました。
このAI・ミュトスが世界を震撼させた理由は、「27年間OpenBSDという基盤ソフトに潜んでいたゼロデイ脆弱性(未発見・未修正のまま存在するソフトウェアの欠陥)」を発見したことにあります。

OpenBSDは、徹底したセキュリティとコードの正確性を追求するオープンソースのUNIX系オペレーティングシステムで、ファイアウォールやルーターといった重要なネットワーク基盤として、世界中の企業やセキュリティ専門家に愛用されています。その堅牢なシステムに27年間誰も気づかなかった欠陥を、AIが見つけ出したのです。

他にも数千ものセキュリティホールを発見し、Appleが5年の歳月をかけて構築した最強セキュリティOSをわずか5日で破ったとされています。あらゆるOS・ブラウザへの侵入能力が人間を凌駕するとして、悪用防止を目的に公開は見送られました。

2つのAIが同時に犯したミスを見抜いた一級建築士

建築設計でも、AIの活用が広がっています。法令調査にAIを使って作業時間を短縮する設計者が増えてきた一方で、AIのもっともらしい嘘(ハルシネーション(幻覚)と呼ばれます)を信じてしまうと、確認申請の段階で大幅な修正を余儀なくされる危険性があります。

実際にこんなケースがありました。ある優秀な一級建築士が、2つのAIがまったく同じ嘘をついた場面を見破ったのです。
狭小地でのクリニック新築計画において、2つのAIがそろってこう報告しました。

「当該地域の条例により、各階に身障者用トイレを設置しなければならない」

40m2台という狭小な土地では、そんなスペースを確保してしまえば、診察室も処置室も成り立ちません。
しかしこれは、大規模な医療施設に適用される条例であり、AIが適用範囲を誤って伝えていたのです。その嘘を見破ったことで、事なきを得たそうです。

建築デザイン著作権の鍵は「美術性と芸術性」

また、生成AIで作成した建築パースやデザインが、既存の著作物と似ている場合、著作権侵害が成立する可能性があります。この点について、参考になる判例があります。

大手住宅メーカーXが、片流れ大屋根と切妻屋根を組み合わせ、2階にインナーバルコニーを配置した和風2階建ての高級注文住宅を企画・開発しました。
ところが同じく住宅メーカーのYが、この建物に類似した注文住宅を住宅展示場に展示して販売していました。
Xは、Y建物はX建物を複製または翻案したものであるとして、Y建物の建築等の差止めと損害賠償を求めて提訴しました。

第一審では、「X建物は著作権法上の『建築の著作物』に該当するということはできない」として請求を棄却しました(2003年10月30日 大阪地裁)。

この判決では、建築物が著作物として認められるには、「独立して美的鑑賞の対象となり、建築家・設計者の思想又は感情といった文化的精神性を感得せしめるような造形芸術としての美術性を備えた場合」という美術性・芸術性を要件としました。一般住宅の著作物性について、ハードルの高さを明確にした判例といえます。Xはこれを不服として控訴しました。

控訴審は、第一審の「建築の著作物」に関する判断基準を基本的に踏襲しました(平成16年9月29日 大阪高裁)。

この判断の背景には、「建築の著作物性を容易に認めると、実用的な建築物の自由な利用が妨げられ、かえって文化の発展に寄与するという著作権法の目的に反する結果になりかねない」という考慮が働いているものと解されています。AIが画像を生成する流れが加速するなか、著作権への配慮がより重要になってきそうです。

AIに奪われない技能労働の価値

もともと「ホワイトカラー」はオフィス仕事が中心の職種を指し、「ブルーカラー」は建設・運送・製造など、現場作業が中心の職人を示す言葉です。

AIはデータ分析、プログラミング、事務代行、会計・税務の単純業務といったホワイトカラー的な仕事を得意とし、すでに置き換わりつつあります。
そうした流れのなかで、米国ではホワイトカラーからブルーカラーへの転職を希望するミドル世代が増えています。

アメリカの経済紙『フォーブス』によると、エレベーター・エスカレーターの技術者の年収の中央値は約1,640万円、送電線の設置・修理業者は約1,420万円となっています。アメリカの全職種の年収中央値が約790万円ですから、それと比べても1.5倍から2倍もの年収になっています。

こうした流れを象徴する言葉として、「ブルーカラービリオネア(億万長者)」という言葉も生まれました。AIに奪われない技能労働の価値が再評価されているのです。

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関西をベースに広告コピー、取材記事、農家レポートなどさまざまな原稿を執筆しています。ギターはスケールに挑戦中です。