型枠の支保工足場で失敗
型枠の支保工足場を計画する場合、コンクリートの荷重条件や枠組足場のピッチの検討、強度計算など、皆さんもいろいろ忙しいと思う。
そのため、あまり支保工足場の経験がない主任者は、本来検討しておくべきことに頭が回らないことも1つや2つはあるだろう。
実際、私も型枠の支保工足場に関して、何度も失敗したことがあるのだが、もう「時効」ということにして、私の失敗談を1つお伝えしたい。
余裕がない支保工足場の計画
これは私が現場監督になってから、まだ数年しか経っていない頃の失敗談である。
現場は鉄筋コンクリート造の新築の建築工事。その建設物は1階の階高が高く、梁と片持ちスラブの支保工足場を組んで、荷重を受ける計画になっていた。
当時の私は、仮設足場の計画以外にも、鉄筋や型枠、コンクリートなど様々な業務に追われて、事務所の机に座ってじっくり物事を考える余裕はなかった。今になってみれば「分からない事について質問したり、他人に確認する余裕」がなかったことが悔やまれる。
ただ、計画を立てるのは、いつも夜遅くだったので、他人に聞くタイミングもなく、「何とかなるだろう、まぁいいや」という気持ちで計画を進めていった。
コンクリート打設で支保工足場が崩壊する?
そして、実際に支保工足場の工事が始まった頃、様々な問題が発覚してきた。大きなトラブルは2つ。
まず1つ目は、支保工足場が外部足場とクランプでつながっている計画になっていたことだ。具体的には、片持ちスラブの先端部分の荷重を受けるための足場と外部足場が近接していたので、何気なく外部足場と支保工足場をクランプで抱かせてしまったのである。
支保工足場というのは文字通り、型枠支保工の荷重を地面までしっかり伝える役目があるので、ジャッキベースで建枠の荷重を受けなければいけない。しかし、足場の組み立て順序としては、建物下の支保工足場より外部足場の方が先に組むので、建枠にクランプを抱かしてジャッキベースが設置できないのは、必然的に支保工足場の方になる。
そんな感覚を持ち合わせていなかった私は、それに全く気付かず、存置期間の計算をしていない躯体の計画をしていたのである。実際に足場を組むタイミングになってから、鳶さんに「支保工足場でクランプ抱かせだったら、コンクリート打設したときに最悪崩壊するで!」と忠告されて、ようやく計画変更の必要性に気付いた。
幸いなことに、支保工足場を数字的には100ずらせば良く、ジャッキベースの不足分を別の工区で使用する材料で補うだけだったので、1つ目の問題はおおごとにはならなかった。
支保工足場に捨てコンクリートを打設しないの?
2つ目は、足場の足元について。
私は支保工足場の足元を、「埋め戻し土の上に、足場板2枚敷き」で計画していた。しかし、先程と同じ鳶さんから「支保工足場を受けるなら、足場の足元に捨てコンクリートくらい打設した方が良いよ」と忠告された。
こちらは今さら計画を変更する余裕はなかったため、「大丈夫ですよ。型枠大工さんも大抵埋め戻し土の上に足場板2枚敷きでやっているから」と忠告を無視した回答をして、支保工足場を完成させた。
ところが、型枠大工さんの支保工も組立て終わり、コンクリートの打設日がせまったある日、型枠大工さんの親分が現場にきて、作業性と安全対策について私に強い口調で苦言を呈した。
「何で支保工足場の足元に捨てコンクリート打設せんかったん?埋め戻してすぐの土だったら、絶対に足場が下がるぞ!一応パイプサポートのレベルは高めに設定させるけど、あとでそれ以上下がったら知らんぞ!」
私はかなり焦ったが、支保工足場の下に捨てコンクリートを打設するためには、いまから足場を一旦解体・撤去しなければならない。コンクリート打設を数日後に控えた現場の状態で、そんな手戻りが発生する指示を出す勇気は、私にはなかったのである。
支保工足場の足場板が地面にめり込む
さて結果はどうなったか?
それから数日後、コンクリート打設の日を迎えた。私の頭の中は、型枠大工さんの忠告にビクビクして気が気でなかった。「頼むから重大な事故にならないように!」と神様に祈るばかりだった。
そして、徐々に打ち込まれていくコンクリートは、柱・壁を2~3回まわり、梁の打設が始まると少しずつ支保工にも荷重が掛かってくる。その度に型枠大工さんも、パイプサポート使用して、レベルを見ながら調整する。
最終的に、コンクリート打設は全て終わったが、支保工足場は崩壊せず、大事故につながる最悪の事態は免れた。
しかし、土木の型枠大工さんから一言。
「やっぱ足場全体が沈下したわ、出来ることはしたけど、梁が下がってしまった部分や断面もできた」
支保工足場の足元をみると、なんと足場板が2cmほど地面にめり込んだ形跡。
私はそれを見て「支保工に掛かる荷重で、足場自体が沈下することってあるんだ」とギョッとすると共に、改めてコンクリートの荷重の大きさを知ることになった。
結果的に技術者としては「学び」にはなったが、時すでに遅しである。しかし、階高が高かったため、地上から見ても梁のレベルが気になることはなかったのが、不幸中の幸いだった。
・・・そして今でも私は、まだ経験したことがない業務を任される事がたくさんある。その際の教訓となっているのが、この現場で学んだ「とにかく分からないことは恥ずかしくても聞く」「職人さんの忠告には耳を傾ける」ということである。現場監督としては当然の事である。
ただ、それでも失敗することは今でもたくさんあるのだ。建築の現場は、まだまだ奥が深い。