「現場で客扱い」される設計事務所に疑問。納まらない図面と施工管理者の努力

「現場で客扱い」される設計事務所に疑問。納まらない図面と施工管理者の努力

「現場で客扱い」される設計事務所に疑問。納まらない図面と施工管理者の努力

設計事務所と施工図担当者の質が落ちている

現場を管理してる人間の多くが「図面」で苦労してると思う。元の図面そのものが納まってない上に、さらに頻繁に設計変更されては、たまったもんじゃない!

全般的に、設計事務所の質が落ちているのは、疑う余地がない。納まっていない図面を平気で描き、「それを何とかするのが施工者の仕事だろう!」と平然と言う設計事務所の人間のなんと多い事か!

しかし施工者側も昔は「何とか納める提案のできる」施工図担当者がよくいたものだ。残念ながら、今はそんな施工図担当者が本当に少なくなってしまった。

なぜだろうか?


図面をCADで描く時代の弊害

そもそも「納める」という概念そのものが、若い世代の技術者たちに伝えられていないのではないか。

図面は手書きの時代から、CADの時代に移り、原図の大切さが失われ、鉛筆で描かれた一本一本の線に責任を持つ風潮が無くなってしまった。昔は、手書きの線で気持ちが読み手に伝わったものだ。

もちろんCADのせいではない。CADを扱う技術者、指導する人間の責任である。

施工管理者は設計者を唸らせるアイデアを出せ!

しかし「せめて建築図だけでも、ちゃんと出来ていればな〜」と嘆いてもしょうがない。最終的に責任を取らされるのは施工側だ。

建築に図面が必要不可欠なことに変わりはない。設計者の図面から意図を探って、施工図を起こし、散々文句を言われても、言いたい事をグッと堪えて何とか形にするのが施工者だ。そして今度は、現場からの問い合わせに追われる。それが施工管理者の実情だ。

が、しかし、特に若い施工管理者に言いたい。ぜひ、「嫌だなぁ、面倒臭いなぁ」と思わず、設計者を唸らせるようなアイデアを考えて欲しい。まともな設計者ならば、それなりに評価してくれるはずだ。何も言われなくても、自己満足できるような図面を目指して欲しい。そんな苦労が報われる日が必ず来る。

実際問題、現場を見ながら、図面を描くのは至難の技だ。職人が帰るまで現場に追われ、それから図面を描く。でも、それも若い時期だからこそ出来る。その時にどれだけ粘れるかが勝負処だ!上手くいってもいかなくても、自分の描いた図面が形になる感動を味わって欲しい。

現場管理者に必要な図面の描き方

図面と言っても、ピンからキリまである。どんな図面を目指すべきか、私の考えを述べたいと思う。

本来なら設計事務所の人間に向けて書きたいところだが、ここでは現場を管理する施工者側の必要な図面について書こうと思う。つまり、モノを造るための図面のことだ。

一番大切なのは、なんと言っても「見やすい事」これに尽きる。具体的に言うと、字はなるべく大きく、線の太さは最低限3種類の太さを使い分け、それも極力太く書くこと。

現場で図面を広げて、職人と打ち合わせする姿を想像して欲しい。事務所のきれいな机の上じゃなく、土の上に図面を広げることもある。

A1の大きさで描き、それをA3の大きさで印刷することもあるが、どっちのスケールでも十分読める図面を心がけて欲しい。最悪な図面は、線と字が重なっていたり、線と線が重なっていたり、見にくい図面だ。

いい加減な気持ちで描いた図面はすぐ分かる。それは職人のやる気にも関わって来る。

意図を伝えるために、既存の概念に縛られない事。職人の一番知りたい事は何かを常に考える事。そこをごまかした図面、描いた人間には進歩はない!

本当のプロフェショナルになりたければ、逃げずに挑戦し続ける事だと思う。

現場で「客扱いされる設計事務所」に疑問

私は今、現場の施工に関わってるが、学校を卒業した当初は、設計事務所に勤めていた。60歳を超えた今、やっと施工と設計の経験年数が半々となった。

設計事務所にいた時代、現場に行くたびに「お客さん扱い」される立場に疑問を持った。現場には現場の事情があり、図面通りに出来ない事も多い。肝心なのは、その理由を知る事だと思った。

図面が悪いのか、予算が無いのか、時間が無いのか、道具が無いのか、技術が無いのか、やれる人間が居ないのか、あるいは単にやりたくないのか。

実際に施工出来る図面じゃなければ意味が無い。現場の事情に合わせた、実現できる図面じゃなきゃ、図面の意味が無いと感じた。

そのためには、現場の中に身を置き、実際に造る側に廻らなければ、それは分からない!と思った。

これから先、私もまた図面だけを描く側に戻るかも知れないが、どうやら私には現場のほうが向いてると感じている。私は今、アフリカで新築工事に従事しているが、自分で描いた図面を元に職人と直に話をして、建築が出来ていくのを見られることは、本当に幸せだと感じている。

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工学部建築学科卒業後、A建築設計事務所に入所。その後、自ら設計事務所を立ち上げるが、設計だけでは良い建築は出来ないと判断し、施工会社に入社。それ以後、現場中心の仕事している。 設計事務所時代から海外案件が多く、現在も海外の案件に関わる事が多い。地球の上を這いずり回っているという感アリ。設計と施工に関わる年数が半々。 海外の建築現場の実態を中心に経験談を共有します。
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