海外の建築現場で通用しない日本の常識
私は海外の建築案件に関わることが多く、今も地球上を這いずり回っています。どの国に行ってもそうですが、まず作業員を見極めるのに、最低でも一週間は掛かります。
日本の現場でも、作業員の扱い方に頭を抱えている監督さんは多いでしょうが、海外の作業員さんは、その比ではありません。
何しろ海外の建築現場では、昨日まで農作業してた人間が、いきなり今日から建築現場にやって来るなんてことが、ちっとも珍しくありません。図面なんか見たことがないどころか、そもそも「直角、水平ってなんだ?」という概念を説明するところから始めなければならないことも多いです。
時間の観念も薄く、朝飯は現場に来てから、皆でゆっくり食べたりするので、私一人が現場の前で仁王立ちで待ってることも、しょっちゅうです。「俺は怒ってるんだぞ!」なんていうのは、一切通じません。悠々とやって来て、笑顔で手を振ってきます。
まずは、ちょっと仕事が出来そうな人間を見つけ、集中的に教えますが、少し仕事が出来るようになった時点で、それを「他の人間にも教えろ!」と言っても、まず100%教えることはありません。自分が教わったことは自分のモノで、「どうしてそれを他人に教える必要があるのか?他人が持っていないスキルを持っているから、もっと給料をくれ!」という理屈です。
鉄筋の曲げ加工時、海外の作業員から学ぶことも
「直角」という概念がないとどうなるか?日本では、そんなことは考えた事もないと思います。が、一般人の教育の程度が違えば、直角や水平は勿論、足し算、引き算だって考えながらとなります。そんな事が徐々に分かってくれば、むやみに腹が立つ事も減ってきます。
海外の建築現場では、一つ一つ全くの素人に教える要領が、海外では必要です。
時には、彼らに仕事を教えるために、私自身もネットで調べたり、日本の友人に聞いたりすることもあります。すると私自身、今まで気にしなかった基本的なことに疑問を持つ場合もあります。
例えば、鉄筋の曲げ加工時の角の寸法(主にスターラップとフープ筋)について、実際にどう曲げるべきか?角の形状は本来どうあるべきか?また、曲げは全て手作業ですから、その精度はどうあるべきか?など、そう意味では、私も彼らから勉強させてもらっているわけです。
しかし、余長分の長さを見込み、まず見本を作ってから「これと同じに作れ!」と彼らに指示したときは、彼らの作業ぶりにかなりビックリしました。私がメジャ―で何回計っても、指示した長さと違うのです。首ひねりながら、最終的には一本一本、私が直に印を付けて切って曲げました。
その後、ずいぶん経ってから、彼等が使ってるメジャーの寸法が、私のメジャーと違うことが分かりました。あの時は本当にビックリしました。1メートルで1センチ近くも長さが違うのです。本当にそんな事があるんです!