スーパーゼネコンも絶賛する、SiftDDDの配筋支援システムサービスとは?

スーパーゼネコンも絶賛する、SiftDDDの配筋支援システムサービスとは?

設計図精査・配筋解析の注目ベンチャー企業「SiftDDD株式会社」

SiftDDD株式会社(シフト・ディーディーティー、岡山県岡山市東区)は、建築物やプラントなどの設計図精査や配筋の解析、診断を手がけるベンチャー企業です。

平成26年10月に設立された、従業員3名、売上げ4000万円ほどの小規模な会社ですが、独自開発した構造物解析ソフト「GreatMonsterシステム」を活用し、スーパーゼネコンなどの大手企業からも依頼を受ける少数精鋭の実力者集団です。このSiftDDDを率いるのが、泊美香社長。SiftDDDのサービス内容や自身のキャリアなどについて、お話を伺いました。

泊美香 SiftDDD株式会社代表取締役

健康管理と同じように、建物管理しましょう

――SiftDDDの配筋支援システムのサポートとはどのようなものですか?

 普通、建物が立ってしまった後は、建物の表面しか見えません。内部の構造がどうなっているのか、オーナーさんなどにはわかりません。ただ、建物の根幹部分なので、実は、一番重要です。SiftDDDが提供するサポートは、その構造を可視化して、問題を解析することです。オーナーさんには「健康管理と同じように、建物の管理もしましょう」と提案しています。

オーナーさんの中には、「設計図だけでは工事できない。建設できないとはどういうこと?」と疑問を持つ方は少なくありません。実際の作業では、設計図から施工図を作成して、それから加工図を作成します。複雑であれば、組立図も作成します。建築業界では施工に至るまでに段階的に詳細な図面を作成することは当たり前ですが、知らないオーナーさんもいます。

――施主の知らないところで、ミスが出ている?

 多くのオーナーさんは、確認申請が下りた図面にミスはないと思っています。事実、構造計算式上はOKなのですが、その設計図では、実際の工事の現場では施工できないという現状があります。例えば、高層ビルで施工ミスが見つかったり、構造物の鉄骨のズレ、ヒドイものになると、メディアを賑わせた検査データの改ざんといった問題が発生します。マンションが建った後に、問題が見つかり、竣工したマンションを取り崩して、もう一度建て直す、ということが、実際に発生しています。

設計や施工の人材不足で、配筋などに関するノウハウが失われている

――設計ミスが原因?

 そういう場合もあります。建築業界は、意匠、設備、構造と、それぞれで設計業務を分担している事が多く専門分野に特化した知識も必要なため、細部までリアルタイムにリンクするには、どうしても限界があるからです。

特に最近は、建築物の難易度も高くより複雑になっています。その上、人材不足が問題にあります。一昔前だと、施工者と専門業者さんで事前チェックができていました。

しかし、今はそういう技術が継承されていません。平成22年までの建設業界は縮小傾向にあり、公共工事の減少、民間需要の縮小、建設資材の高騰などが要因で、さらに、民主党政権で公共事業の廃止や予算削減を受け、建設各社の受注高が大幅に減少して、冷え込んだ状態であったと言えます。

この当時、高齢による引退のほか、「キツイけど高給取り」の業界ではなくなり、従事する若者も少なくなってしまいました。平成23年に入り、東日本大震災の復興需要、民間の設備投資が増加して、平成24年末からはアベノミクスによる公共事業投資、国内景気の回復など建設業界にとっては好材料がそろってきました。

機を同じくして、業界にはBIMの導入が加速し高需要に沸く中、今度はBIMオペレーターも不足しています。そもそも、BIMは単なるCADソフトではありません。例えばICTなどと組み合わせ、すべてヒモ付けして、建物などに問題がないか、その後は改修工事にも活用できるものです。目的を共有した一元的な活用は、発展途上にあります。

――大手でも人手が不足しているのですか?

 そのように伺っています。以前は、「有名な建設会社、有名な設計事務所に頼めば大丈夫」という風潮がありましたが、今はそういう時代ではありません。

――設計にあまりコストをかけられないから?

 予算がないのは大きな問題です。例えば、経済設計の場合、コンクリートのボリュームを減らしたとします。そうなると、そこに入る鉄筋の断面係数は一応OKだったとしても、鉄筋径が太くなります。径が太くなると重量も増しますから、現場で人が簡単に移動して調整できるレベルのシロモノではありません。

建物全体をつくるための予算配分の段階で、設計後の施工検討に時間とお金を回す必要があるのですが、往々にして設計の予算は削られています。着工前に問題を解決できないので、結果的に、現場では納まりを熟考して設計者へ大量の質疑をしながら軽微変更内で施工するといった現状があります。

納まり図(詳細図)

鉄骨孔あけ図


独自開発した「GreatMonsterシステム」で構造物を解析

――SiftDDDでは、施工に入る前に、設計上の問題点などを解析しているわけですか?

 ええ、SiftDDDのビジネス領域はそこです。建築事務所やゼネコンさんなどから建築物の設計データをいただいて、設計図精査をします。その後、独自開発した「GreatMonsterシステム」で解析し、「ここの鉄筋が干渉する」とか「ここは被覆がとれない」などの問題点をピックアップして、その問題点を3Dモデル化しデータを提供するサービスを行っています。

――SiftDDDのサービスは施工現場でも役立つ?

 意匠系の設計事務所は、構造設計に不慣れな場合があります。しかし、中規模のマンションだと、そんなにお金もかけられないので、不安を感じている設計事務所があります。そういう設計事務所の設計図であっても、SiftDDDでご支援させていただければ、余裕を持って施工者と話ができます。2次元では見えなかった問題点を事前に把握することで、安心材料としていただけます。

例えば、大型の商業ビル建築の際、設計施工に関するさまざまなシミュレーションのため、デジタルモックアップを作成しました。その結果、着工前の準備期間を4ヶ月短縮しました。また、ある物件では不祥事のため、工事が止まってしまったことがありました。全力でこの現場をサポートし、結果的に、工期内で竣工することができました。またある現場所長には、「工費的に5〜10%の圧縮効果があった」と評価していただきました。

設計図の変更によって、鉄骨の製造が間に合わないという場合があります。SiftDDDが関わった自治体庁舎案件では、3Dモデルを作った時点で、鉄骨への鉄筋孔貫通位置がデータ化されていたので、そのデータをそのまま製作図として使用していただきました。

SiftDDDが解析したデータがあれば、このように専門業者との意思の伝達などに使えます。工事担当者の経験の浅い部分をフォローすることができるわけです。実際に3Dモデルを見ながら、「配筋をこう加工しよう」などの打ち合わせができますので、この辺は、現場に役立つサービスだと自負しています。

懸案箇所ご提案の一例

注意箇所お知らせ一覧の一例

解析時にシステムが自動で干渉回避。条件の範囲で施工に近いカタチに整える

――設計図の変更の主な原因は?

 意匠に伴う変更が多いと思います。自治体庁舎ではあまりありませんが、病院は多い印象があります。例えば、CTなどの医療器材のメーカー変更や設置場所の変更の場合、器材重量が変わるので、床の積載荷重も変わります。それに伴なって、搬入経路や扉の形態も変更になり床レベルが変わると、設備に関わる配管の貫通位置も変更となるので、多岐に渡ります。

SiftDDDのサービスは、基本設計の段階でサポートする場合、確認申請が下りた直後、着工直前で施工図作成の前段階の場合などがあります。このほか、着工したけれど、熟練の専門業者さんが見つからず、設計図の精査に加えて加工図まで一元的に支援して欲しいとか、施工指示書を作成したいので問題点などをチェックして欲しい、などのニーズに応えることもあります。変わったものでは、施主さんが目玉物件を建てるので、「特殊工法による組み立アニメーションモデルを作って欲しい」という注文もありました。

――ひと口に、設計図のチェックと言っても、簡単ではないですよね。

 弊社ではまず、設計図を精査します。大きな問題は、その段階でだいたい見つかります。クライアントに質疑しながら、データ入力していき、設計図に指示のある条件、法規や規格を設定します。現場との打ち合わせシートなどを揃えたら、GreatMonsterシステムへデータを送信し、解析を実行させます。システム内部で、条件に基づいて仮想の建物を建ててしまいます。

システム内部では、より干渉が少なく問題の発生しない様に自動的に配筋するのですが、それでも自動判定できなかった箇所について情報を集約し、CAD上へ3Dモデルで可視化します。例えば、主筋同士が干渉すると、主筋の色は通常色から黄色に変わります。そこには干渉リングという名前の赤いリングが付いています。クライアントへはこの情報をご提供しています。

もう一歩進んだご提案として、ご要望があれば、SiftDDDに蓄積されたデータベースより問題解決事例をお渡ししています。例えば、設計図のまま組み立てると、鉄骨柱の柱脚を固定するボルトと梁主筋が干渉してしまう場合、「〇〇ミリの回避で避けられるが、礎柱被覆の調整が必要となります」などと問題点を指摘するとともに事例をご提案して現場施工に役立ててもらいます。


「軽微変更」という言葉が好きではない。だって「重大でしょ?」

――設計者から依頼を受けることもあるのですか?

 あります。基本設計の段階で依頼を受けることもありますし、確認申請が下りた直後のこともあります。設計側にとって、現場で納まるかどうかは自分たちの問題ではありません。あくまで施工管理側の責任なので。業務の分担です。ただ、あまりにも検討されていない設計図で、「こんなんじゃ施工できないよ」というものもありますが、設計側は「そこまでチェックできない」と主張して、そこでせめぎあいます。費用負担の問題も生じます。

設計施工であれば、話はスムーズですが、設計と施工が別だと人間関係も複雑です。施工側が設計側にお伺いをたてるわけです。「こういう問題があります」「こういう施工方法でよろしいでしょうか」などと。その上で、設計側が「よろしい」と言って、やっと結論が出るわけです。確認申請をし直さないで良い範囲の「軽微変更」を行うわけですが、私はこの言葉があまり好きではありません。だって、施工する側からすれば「重大」ですよね、コレ(笑)。

例えば、いろいろな場所で同じような建物を何棟も立てた場合には、しばしば設計図を使いまわしていたりします。前の設計図をコピペしているので、「幅が合わない」とかはザラです。ひどい場合には、平面では梁幅は柱より小さい図で書かれているのに、実寸では柱より大きいこともあります。

施工者は、非常に危機感を持っています。設計図の読み取りミスで工期が延びた場合、その費用をどこから捻出するのか、竣工まで発見できなかった場合、賠償金が発生したらどうするかなどの問題が生じます。当然、ミスに対する予算は取っていませんから。

設計事務所から型枠大工に転身。理由は「儲かるから」

――SiftDDDを起業する前は、どういったお仕事を?

 初めに就職した会社では店舗設計と施工管理を行っていました。ただ、給料が安く、やる気もゼロでダラダラと仕事をしていて、1年で退職を勧められました。クビですね。当時、現場で出会った大工さんの高給に驚きました。現場仕事って儲かるなと思いながら、実家のある岡山で型枠大工を3年やりました。理由は、すごくお金が良かったからです。

――型枠大工への転身は、自信があった?

 なんにもなかったですね。ちゃんと考えて行動したわけではなかったので、「儲かるんだったら、やってみよう」という安易な感じでした(笑)。父親の仕事の関係で、ツテはありましたし、実際にやってみると、現場の仕事は楽しかったですね。その当時、設計変更が頻繁にあることで、準備していた加工材料が無駄になる経験をしました。その時のロスを現場が支払うのか、こちらが泣くのか、請負の業者には死活問題です。設計図や施工図がフロントローディグされていればと疑問を感じたのはこのころからです。プライベートでは、子育てと仕事の両立という問題に直面していました。

――子育て?

 実は、型枠大工時代に結婚したのですが、子どもが生まれて、すぐに離婚したんです(笑)。素行が良くなくて周囲には大変迷惑をかけていました。その当時、子育てに追われている人間を雇ってくれる会社はないので、仕方なく、父親の会社に入りました。内心、イヤイヤですよ(笑)。その当時、父親の会社の従業員数は50名ほどいたのですが、ほぼ全員から「社長の娘だからって、なんだ」みたいな感じで、かなり打たれました。われながら、ムチャクチャ我慢しました。子どもがいなかったら、すぐ辞めていましたね(笑)。

――父親の会社ではどんな仕事を?

当時、父親がシステム明星株式会社という会社を経営していました。型枠の自動加工機とか、型枠の加工帳の自動出力ソフトの開発を行う会社でしたが、私は、この会社のCADオペレーターになりました。型枠大工の経験があったので、お客様へ提案しながら、オペレーション研修などを担当していました。入社して3年後からコンピュータに興味を持ち始めサーバーエンジニアの勉強をしながら、お客様のインフラ構築、システム企画や提案、開発なども担当しました。

――CADを任された理由は?

 父親は「とにかく、コンピュータ、ソフトの使い方を覚えろ」という考えだったと思います。頑張って覚えて、ソフト販売の仕事をしていました。

それから、2012年4月に、神戸にある菱井商事株式会社とシステム明星が株式会社テクノ菱明という合弁会社を設立し、その合弁会社に営業技術課長として、出向しました。

テクノ菱明の顧問が株式会社大林組の出身の方だったこともあり、大林組の生産設計部門へのシステム提案などに従事していました。顧問からは「下請けという気持ちで話をしたらダメだ。協力業者として、なにを提供できるかという姿勢で話をしろ」とアドバイスを受け、提案を聞いて下さる同社の課長をご紹介いただきました。

この課長から、工事事務所との接し方についてアドバイスいただいたり、提案の仕方や資料のまとめ方、現在に繋がる多くのことを教えていただきました。建築に対する熱量が凄かったですね。BIMの勉強会へも参加させて頂きました。

私が仕事に本気で向き合うきっかけになった時期です。今振り返ると、出向先の上司はもちろん、前述の課長や工事現場の所長にも、非常に良くしていただきました。経営者になった今でも「大丈夫か?わからんことはないか?」と声をかけていただき、心から感謝しています。


父親の会社廃業を受け、重機オペレーターと迷ったが、会社を起業

――父親の会社で仕事をするのではなく、起業した理由は?

 父親が年齢的な理由でシステム明星を廃業すると決めたからです。最初は、自分で会社を設立する考えはまったくありませんでした。プレゼンでの反応はとても良く可能性を含んだサービスだと思っていましたが、利益を生む自信はありませんでした。

その時に部下数名と呑み会をする機会がありました。ビジネス展開をしたいと頑張っていたメンバーからは、新会社設立の意見も出ましたが、私は経営者になる器もなく、恐怖心もあったので、消極的な返事に終始していたところ、「私たちにも大人ですから貯金はあります。何かあっても数か月は食べて行きますよ!誰もやって無いことをやりましょう!」とドンッと背中を押され、SifiDDDを設立することにしました。

父親が廃業すると知ったときには、退職金で、大型特殊免許を取ろうと思っていました。その頃は、娘が東京の大学に行って、親の手を離れた時期だったので「重機オペレーターをしたいな」みたいな(笑)。

――なぜに重機オペレーター?

 重機やクレーンが好きだったからです。ところが、あるゼネコンの女性課長に、「会社をたたむので、私も辞める」という話をしたら、「もったいないよ。他に無いサービスなのに…なんとか続けられない?」と言っていただき、現場で意見をもらっていた工事長にも「泊さんはお金の話が苦手だから、『これだけお金が必要です』と言うことを先に話すことを心がければ、商品は凄いんだから大丈夫。頑張ってよ」と励まされました。当時の部下からの後押しに加え起業への原動力となりました。それで、重機オペレーターをあきらめ、起業することにしたんです(笑)。

――いきなり経営者になって、戸惑いは?

 会社を設立してしばらくは、「経営って何なんだろう?」という感じで、ぼんやりしていたんですが、周りの方にいろいろと固めてもらいました。経営者がこんなことを言ってはダメなんでしょうけど、スタッフに対して、「これ大丈夫かな?」とか「この仕事したいと思うんだけど、どう思う?」とか聞いて、「やりましょう!大丈夫!」と励ましてらっていました。自分の意思ではなく、みんなに盛り上げてもらって、乗せてもらって、なんとかやってきた感じです。

設立と同じタイミングで、東京で株式会社シェルパ様主催のBIMをくつろいだ雰囲気で、オープンに語り合う場「OPEN BIM café」にゲストスピーカーで呼んでいただきました。そこで、三菱日立パワーシステムズ株式会社のモデルと弊社のモデルを合わせたものを発表しました。そこから各方面への繋がりができました。始業2年目からは、プラントの床材を自動的に割り出すシステムを開発し、敷設設計支援するサービスを開始しました。

ただ、弊社の仕事は、すごく狭い隙間の仕事なので、なかなか業態を説明するのが難しいところがあります(笑)。

――設計会社を辞めて、型枠大工をやって、結果的にシステム開発の経営者をやっている。つながっていないようで、つながっているような、不思議な感じがします。

 SifiDDDの支援サービスを注文されるお客様は、工事現場でタワークレーンの組み立てをやっていたり、大規模な敷地に門型クレーンがあったり、私の好きなものがある大きな重機を扱っている会社がほとんどどです。そういうものを見に行けるのは、楽しいです(笑)。

現場に行くと、契約のシビアな話をするわけですが、窓の外をパッと見ると、クレーンがあったり、造船所が見えたりとか、「うわー、こんなところで仕事ができるのは楽しいなあ」と。テンションが上がります。自分が大企業に就職したわけではありませんが、お仕事をいただいて、そういうものを見られるのは、なんて楽しいんだろうと。こういうものをずっと見続けるためには、どういう方々とコミュニケーションを取っていけばよいのかな。望まれるシステムをつくっていくことだな。そこは自分の中ではつながっています(笑)。

3Dプリンターによるモデルを使った提案を試行中

3Dプリンターで製作したプラント床材モデル

一応、SiftDDDの社長ですが、部下の方が人としては上

――これまでで一番楽しかった仕事は?

 今ですね。好きなことができているからです。もちろん、イヤなことはありますけど、失敗したら、自分で責任を取らないといけない立場です。文句を言う相手がいません。それが自分に合っていると思います。私が会社員だったころの上司は、とても大変な思いをされていたようなので(笑)。

――なるべくして経営者になった?

 どうでしょうかね。会社員の時は、「状況に流されて仕方なく…」といった仕事が許せず、代替え案も出さずに正論をぶつけていた、ただの文句言いだったので(笑)。「こっちが正しいでしょ!」「なんでそうなんですか!」などと怒りをぶつけるタイプでした。昔の私を知っている部下には、「昔はすごく怖かった。今は丸くなりましたね」と言われます。

会社員の時には、部下に対して非常に細かいことまで指示しなければ、気が済みませんでしたが、経営者になってからは、プロジェクトごとに仕事をコントロールしているスタッフの相談に乗るのが基本業務です。これはスタッフ自らが試行錯誤して形成した体制です。

私は一応社長ですが、スタッフの方が人としては上だと思っています。次期開発品にも、「それは違う」「問題が発生しやすくなる」などと率直に言える環境があります。私としても、異なる意見から生まれたアイデアを数多く試してみたいので、素早く方向転換が出来ることを重視しています。会議といった形骸的な場面ではなく、日常会話の中で仕事の「芯」の話が短時間でできるので、すっごく楽です。

――仕事のエリアは?

 全国ですね。逆に、岡山県は水島のプラントしかやったことがないです。今は、関西エリアのレジャー施設や、東北エリアのプラント、東海エリアの大型商業物件、九州の工場や庁舎、病院などを支援しています。発注されるお客様が全国で工事をされているので、場所や案件はバラバラですね。

今年は、また新しいデータの連携に取り組んでいます。ドローン空撮や3Dプリンターを使って提案できないかとか、いろいろ模索しているところです。今は、平成30年4月まで仕事の予定が埋まっているので、配筋支援のご依頼をお断りしている状態です。人手不足をシステムに置き換えて補っているところですが、なかなか難しい部分もあります。

SiftDDDの会社指針

「誰もしないことをやりたい!」と集まったSiftDDD社員。「どうやったら楽しくできるか」を考えたい

――ワークライフバランスについては?

 子育ての期間、私の場合は実家に助けてもらって、仕事に集中できました。子どもが熱が出たときは、背負って仕事したこともあります。急な出張があった場合には、同僚が保育園にお迎えに行ってくれたりと助けてもらいました。遠方にプレゼンに行くときに限って、子供が熱を出し、病院に併設した保育園にあずけに行ったりと、「何のために仕事をしているのか」わからなくなることもありました。

考えている余裕もなく仕事して、子どものことで休む必要がある時には「日曜日出て、やります」みたいな。父親も、私に対してはすっごく厳しかったです。今振り返ってみれば、厳しく接することで、特別待遇していないことを他の社員へ見せてくれていたのだと思っています。

仕事メインの生活の中で、子どもに「普通のお母さんがいい」と泣かれたことがありました。小学校低学年だったでしょうか。困り果てて、子どもが指名したご近所のお母さんに相談に行って慰めてもらったこともありました。今でも「普通のお母さん」のいるご家族の皆さんと会食することがありますが、「普通のお母さん事件」と話題にされて、笑って振り返ります。当時は笑えなかったですけどね。

私の場合は、実家や会社、地域に支えてもらいながら、なんとか過ごして来れたのではないかと思っています。

――子どもができたので、退職せざるをえなくなった女性の話はよく聞きます。

 私の身近にもいらっしゃいました。出向していたテクノ菱明で、若い女性が入社しました。当時結婚したばかりで、「本当は専業主婦をしたかったけど、旦那さんの収入だけだと不安なので」という方でした。オペーレーターの経験もあったので、採用しました。半年ぐらい経って、「すみません。子どもができてしまいました」と言われました。

私は「おめでとう」と言ったのですが、彼女は大泣きしました。「せっかく採用してもらったのに、すみません」と。やっと子どもができたのに、ぼろぼろ泣いて謝る姿が今でも忘れられません。「なんか違うなあ」と抱いた違和感が心に残っています。

――確かに、本来は本人が責められる話ではないですね。

 子どもに限らず、仕事を中断せざる得ないケースは親の介護もあります。私は経営者として、自宅で仕事ができるとか、子どもが会社で遊んでいてもよいのでは?と思っています。

――SiftDDDの社風づくりですね。

 会社員時代には、「他人同士が1日の3分の1を同じ空間で過ごすことになんの意味があるのか」と考えていました。「朝何時に会社に来る」というルールに「意味ないな」とも思っていました。

ところが、自分が会社をまとめていく立場になって、会社の規律も大事だとわかりました。「この人だけ良い、この人だけ悪い」というわけにはいきません。ですが、平等を追求すると面白味のない、平坦な思考になってしまいます。個々の特性や特技を生かすことも大切ですが、背中合わせで不得手も存在します。その弱点をスタッフ間で共有して理解し合えれば、ルールで縛ることなく、ある程度の個人的な都合や問題はクリアできると思っています。

スタッフは、「誰もしないことをやりたい!」ことを実現するために、毎日オフィスに足を運び、人生のうちの多くの時間を仕事に費やしているわけです。私はスタッフに対して「どうやったら楽しくできるかを常に考えよう」とよく声をかけています。どうせやるなら、楽しい方が良いに決まっていますからね。

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