広島県リフォーム売上5年連続NO.1 マエダハウジング
「地域密着住宅ワンストップサービス業」を掲げ、広島県で5年連続リフォーム売上ナンバーワンを達成した株式会社マエダハウジング(広島県広島市)。創業25周年を迎え、現在は主力の総合リフォームのほか、新築、不動産売買、空き家再活用、雑貨・インテリア販売まで多岐にわたるサービスを展開している。
マエダハウジングは、いまや中国地方を代表するリフォーム会社として知名度を高めているが、素人同然で起業した前田政登己社長の今日までの道のりは決して平坦ではなかった。困難に直面するたび、幼い頃に母から聞かされた「昨日より今日はきっとよくなる」との言葉を思い出して乗り越えてきたという。
新築ブームが沈静化して追い風を受けるリフォーム業界だが、華やかな話題の一方で工事を任せる職人の高齢化など、深刻な問題も少なくない。常にアグレッシブな姿勢でリフォーム界を席巻する前田社長に会社の足跡と近年の取り組みについて聞いてみた。
転職、夜逃げ、そしてリフォーム会社の起業
前田政登己社長は岡山県出身。国立津山工業高等専門学校卒業後、マツダ勤務を経てリフォーム業界に入り、1993年にマエダハウジングを創業。今日まで20,000件以上のリフォーム・新築・不動産などの住まいづくりに携わる。
——リフォーム業界に入られたきっかけは?
前田 学校卒業後、マツダに入社して海外サービス部門に在籍していましたが、自分の将来像が見えない気がして3年で退職、求人を探して転職した先がたまたまリフォーム会社でした。
ところが、その会社は有名タレントをCMに起用して派手な宣伝を行うものの、お客様の意向などおかまいなしで、営業マンは売りっぱなし、現場は職人さんに任せっぱなし。「リフォーム業界は、なんていい加減なんだ」と大いに失望しましたね。
その後、同じ会社にいた唯一話の分かる先輩が独立するにあたって声をかけられ、ついて行くことに。そこでは私自身が工事のことをもっと学ぶ必要があると考え、前の会社では経験できなかった作業着を着て現場を回ることからスタートしました。
最初は職人さんに「ちょっと垂木を持ってきて」と言われても、並垂木と平垂木の区別もわかりません。職人さんを捕まえては、ひとつひとつ教えていただき、現場監督兼営業としての知識を身に着けることができました。
——第一歩を踏み出されたわけですね。それから起業に至る経緯は?
前田 1年くらい経って仕事に手応えを感じはじめた新年の仕事始めの日のことです。出社すると事務所の荷物がなくなり、もぬけの殻でした。社長である先輩が夜逃げしていたんです。
一社員であった私が職人さんたちに取り囲まれ、自分も訳が分からないので責任が取れない旨を説明する羽目になってしまいました。
この出来事を機に「もう自分で起業するしかない」と腹を決めた次第です。
本屋に駆け込んで積算単価表を買う
——独り立ちを決めて、まず最初に始められたことは?
前田 とりあえず、マエダハウジングの屋号で名刺と手作りのチラシを刷って「お住まいのことで何かお困りごとはありませんか?」と個人宅を営業することから始めました。
100軒、200軒回っても門前払いばかりですが、1000軒、2000軒回ると話を聞いて下さる方が出てきたんです。
ある時、訪問先から「玄関の壁が古いので塗り替えたい」と持ち掛けられました。しかし、当時の私では見積もりの出し方もよくわかりません。本屋に駆け込んで積算単価表を買い求め、「聚楽壁は㎡単価が○○円…」といった初歩の初歩から勉強です。見積もりを納得いただけると、次は工事をお願いする内装業者を探すわけですが、私はまだ27歳の若造なので見た目からして不安ですよね。
何社か訪ねても、まず聞かれるのが「お兄ちゃん支払いの方は大丈夫?」でした。
——どうやって信頼を得ることができましたか?
前田 私としては「工事が終わってお客さんから入金があり次第、お持ちします」と告げるしかなく、ようやく一社に請けていただけたので、約束通り工事終了後、その足で代金をお届けしました。業者さんが「ほんとにすぐ持って来たね」と安心されたので「次もお願いします」と伝えると、快諾していただけました。
結局、業者さんと信頼関係を築くのはこの積み重ねだと思います。約束を違えることがあってはならないし、特にお金に関しての取り決めは何よりも重要です。
実は創業当初に一度だけ失敗したことがあります。営業から現場管理、経理に至るまで、全て私ひとりでやっていたことから忙しさに追われ、ある大工さんへの振り込みを忘れてしまいました。奥さんからの電話で入金し忘れていたことに気づき、大慌てで対応して謝罪に伺いました。
この失敗を教訓に、以降は今日に至るまで業者さんへの支払いと従業員の給料の遅配はありません。当たり前のことですが、何があっても守るべき約束ごととしています。
現場は常に見られていると意識
——地道な積み重ねで今日のマエダハウジングがあるわけですね。ほかにも創業時から特に意識されていることはありますか?
前田 リフォーム業者として信用と評判を高めるには、同じ志を持つ仲間が必要です。私は一緒に仕事をする人を探す場合、能力とか経験、実績よりも自分と同じ価値観の持ち主であるかどうか?を重要視してきました。その価値観の基準にしているのが「人の喜びが自分たちの喜びに感じられるか?」です。
「リフォームの良し悪しは職人の良し悪し」とよく言われますが、マエダハウジングの場合、職人さん選びにもこの考えを徹底しています。腕が良いのは当たり前で、人柄が良いか、人間性が好ましいかという点に比重を置きますね。「お客様に喜んでいただくことが自分の喜びだ」と感じられる職人さんと組みたいんですよ。
弊社の自慢は、そんな職人さんを集めていることですが、意思統一を図るため取引先約60社で構成する『前進会』という協力業者会を作って定期的に勉強会を開いています。
——協力業者が集って勉強する内容とは?
前田 お客様からの工事後のアンケートはがきの意見やクレーム、現場パトロールの報告など、より良い工事を行うための情報共有を行っています。現場のマナーについては、よくテーマに取り上げていますね。
例えば、以前リフォーム現場の敷地内で現場監督と職人さんが携帯で話す内容を聞いたお客様からその日の夜にクレームの電話が入ったことがあります。
「すみません!そっちに行こうと思ったのですが、今いる現場が忙しくて行けなくなったので、いいようにおさめてもらえますか」
「仕方がない。じゃあ適当にやっとくわ」
どうやら、こんなやり取りを話しているのを耳にされたらしく、「うちの家の工事を適当に片付けるとは何ごとですか!」と怒ってこられたわけです。
私としては現場を任せている職人さんたち全員に「現場は常に見られている」、「ふすま一枚で聞かれている」ということをいつも頭に入れて仕事に取り組んでいただきたい。施主さんに限らず、ご近所の方が現場作業の様子や、職人の振る舞いをカーテンのすき間から見られていることもよくありますからね。
各自が普段から自覚して行動していれば、「あの現場の職人さんたちはいつも一生懸命やってるな」と評価していただけるはずです。協力業者の皆さんとは常に「お客さんに喜んでもらいたい」という気持ちを分かち合う必要があるので、現場の様々な情報や気づきを共有して分析できる勉強会は欠かせません。
隔月定期開催する勉強会では、お客様のクレーム情報や感謝の言葉を職人さんも含め、全員で情報共有。
良い職人さんがいるだけで仕事になる時代へ
——協力業者との連携と併せて、現在は自社にも施工部門を開設して職人を育成されていますね。
前田 2年ほど前に施工を行うグループ会社として、株式会社マエダハウジングプラスを設立しました。現場の職人不足が深刻化していく中、自社で若い人材を育成しておく必要性を感じたのが設立の動機です。
調査によると日本全体の大工さんの数は2000年に60万人、2010年に39万人、2020年には20万人台に、といった推移で右肩下がりに減少しているとか。
私の周りでも大工さんの高齢化は進んでおり、20代の人はまずいないので不安が募るばかりです。もちろん大工以外の職人さんも同じ傾向にあるようで、いずれは良い職人さんを抱えていると、それだけで仕事になる時代が来るかもしれません。早めに準備しておかないと。
——建設業界全体の悩みですが、イチから育成となると時間もかかりますね。
前田 14年前にも一度、自社で大工を育成しようと試みたことがあるんですよ。20代前半の素人を腕の良い棟梁に預けたのですが、一人前になるのに10年かかりました。その間、棟梁は指導するのに時間をとられて現場の作業効率は落ちますし、もちろんお客様から二人分の賃金はいただけません。ずっと持ち出しが続いて経費がかさむことから、あとが続きませんでした。
今回の施工会社を興すにあたり、10年かかった育成期間を5年に短縮できないか?と考えてみたところ、その時の棟梁が昔ながらの徒弟制度的な考え方で技術を習得させていた点に気が付きました。大工さんに限らず、今の現場では作業の範囲も広いのでそのやり方では合っていません。若い職人の育成と同時に教える側の人材を育てることも課題ですね。
1人で複数の現場作業をこなす。時代が求める職人「多能工」を自社で育成中。
1人で複数の現場作業をこなす職人「多能工」を育成中
——職人さんの育成は順調に進んでいますか?
前田 職人といえば、昔はひとつの作業のスペシャリストとされていましたが、時代も変わり、いま現場で求められているのは複数の作業がこなせる職人なんです。私は、1人でいくつもの作業をこなすスキルを備えた「多能工」を育成したいと考えています。
例えば、トイレのリフォームを行う場合、養生、解体、水道、大工、電気、内装、掃除といった作業工程があり、それぞれ専門の職人が何人も入れ替わり、立ち替わり入って作業しなければなりません。狭いスペースなので1人ずつしか入れないことから工事に2日、3日かかってしまいますが、いくつかの作業を単独でこなせる多能工がいれば、2人くらいで請け負えるので工期が短縮できます。
また人件費が減る分、会社の負担も減りますし、お客様としても工期が早くなり、金額も安くなるのできっと喜ばれるはずです。
目下、新卒者や電気工事経験者、元現場監督経験者など4人を教育しているところですが、まずはリフォーム業に特化した多能工を1人でも多く育てていくのが目標です。
将来を見据えて自分の進むべき道を探しておられる若いみなさんには、私たちの下で「現代の職人、多能工」を目指してほしいですね。経験や実績は不問で何よりも人間性重視、価値観を共有できる人ならば大歓迎です。
株式会社マエダハウジング(本社 広島県広島市安芸郡 ※写真は安佐南店)平成5年1月創業。資本金1億円。従業員83人。年商19億4,000万円、広島県内に7店舗を展開。事業内容は 総合リフォーム、新築、不動産、空き家再活用、雑貨・インテリアまで多岐にわたる。