【2020年最新】第3回 技能実習・特定技能を適正に行うために必要な3つの理解(全3回)

【2021年最新】第3回 技能実習・特定技能を適正に行うために必要な3つの理解(全3回)

技能実習・特定技能を適正に行うとは?

第2回目の記事では、『技能実習・特定技能のメリット、デメリット』についてご紹介しました。最終回である今回は、技能実習・特定技能を適正に行うための重要なポイントについて掘り下げていきます。

外国籍人材を受け入れるためには、まず制度を正しく理解した上で、適正な運用が必要です。特に、将来的に特定技能の受入れを視野に入れている場合は、まず技能実習制度についての理解が必要不可欠です。

外国人技能実習生制度には、主に「出入国管理及び難民認定法」や「労働基準法」「労働安全衛生法」などの労働関係法規に関わる法律がたくさんあります。

これらに付随して、技能実習制度では禁止事項も定められています。今回のテーマでもある”適正に行う”というのは、下記のような不正行為を実習中に行わないということです。

技能実習の受入れを
停止させる不正内容
具体的な不正行為の内容 受入れ
停止期間
【1】技能実習生に対する暴行・脅迫・監禁 監理団体(組合)、実習実施機関(受入企業)において、技能実習生に対して暴行、脅迫又は監禁を行った場合 5年間
【2】旅券・在留カードの取り上げ 監理団体、実習実施機関において、技能実習生の旅券又は在留カードを預かっていた場合 5年間
【3】賃金等の不払い 監理団体又は実習実施機関において、技能実習生に対する手当又は報酬の一部又は全部を支払わなかった場合 5年間
【4】技能実習生の人権を著しく侵害する行為 監理団体、実習実施機関において、技能実習生の人権を著しく侵害する行為を行っていた場合 5年間
【5】偽造又は虚偽文書の行使・提供 監理団体、実習実施機関において、外国人に上陸許可の証印等を受けさせる目的、又は不正行為に関する事実を隠ぺいする目的で、偽造・変造された文書・図面、虚偽の文書・図面を行使又は提供していた場合 5年間
【6】保証金の徴収等 監理団体、実習実施機関又はあっせん機関が本邦において技能実習生が従事する技能実習に関連して、技能実習生やその家族から、保証金を徴収するなどしてその財産を管理していた場合や、労働契約の不履行に係る違約金を定めるなど不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結していた場合 3年間
【7】入国1ヶ月目の組合による講習期間中に業務へ従事させる行為 監理団体、実習実施機関において、講習期間中に業務に従事させていた場合 3年間
【8】二重契約 監理団体、実習実施機関において、技能実習に係る手当若しくは報酬又は実施時間について、技能実習生との間で地方入国管理局への申請内容と異なる内容の取決めをしていた場合 3年間
【9】技能実習計画との齟齬 監理団体や実習実施機関において、地方入国管理局への申請の際提出した技能実習計画と著しく異なる内容の技能実習を実施し、又は当該計画に基づく技能実習をしていなかった場合 3年間
【10】名義貸し 監理団体、実習実施機関において、地方入国管理局への申請内容と異なる他の企業で技能実習を実施させていた場合 3年間
【11】技能実習の継続が不可能となった場合の報告不履行 監理団体や実習実施機関において、技能実習の継続が不可能となる事由が生じていながら、地方入国管理局への報告を怠っていた場合 3年間
【12】監査等の不履行 監理団体において、団体要件省令に規定する監査、相談体制構築等の措置を講じていなかった場合 3年間
【13】一定の行方不明者数の発生 監理団体や実習実施機関において、上陸基準省令に規定する人数の行方不明を発生させた場合。
なお、監理団体や実習実施機関の責めに帰すべき理由がない場合は、この類型に該当しません。責めに帰すべき理由がない場合とは、技能実習が技能実習計画に沿って実施され、賃金の支払い等が雇用契約どおりに行われていることなど、監理団体や実習実施機関がその責務を果たしている場合をいいます。
3年間
【14】不法就労者の雇用等 監理団体、実習実施機関において、
①事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせる行為
②外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置く行為
③業として、①及び②の行為に関し、あっせんする行為のいずれかを行い、唆し、又はこれを助けた場合
3年間
【15】その他労働関係法令違反 監理団体や実習実施機関において、【1】、【3】及び【4】に該当しなくても、技能実習の実施に関して、労働基準法、労働安全衛生法、職業安定法等の労働関係法令について重大な違反があり、技能実習の適正な実施を妨げた場合 3年間
【16】営利目的のあっせん行為 営利を目的とするあっせん機関において、技能実習に関してあっせんを行っていた場合や、監理団体若しくは営利を目的としないあっせん機関において、技能実習に関して収益を得てあっせんを行っていた場合 3年間
【17】「不正行為に準ずる行為」の再発 地方入国管理局から「不正行為に準ずる行為」を行ったものとして指導を受けた監理団体、実習実施機関等において当該指導を受けた後3年以内に再度「不正行為に準ずる行為」を行った場合 3年間
【18】技能実習実施状況に係る日誌等の作成等不履行 監理団体や実習実施機関において、技能実習の実施状況に係る文書や技能実習の指導に係る文書の作成、備付け又は保存を怠っていた場合 1年間
【19】帰国報告の不履行 監理団体において、技能実習生の技能実習活動終了後の帰国に係る地方入国管理局への報告を怠っていた場合 1年間

不正行為が入国管理局に認められた場合、技能実習取消し・受入れ停止期間を定められるケースもあります。詳細については、後半部分でご説明します。

外国人技能実習機構の実地検査、FITSの巡回訪問

技能実習では、外国人技能実習機構が実地検査を行います。

    • 外国人技能実習機構の義務
      外国人技能実習機構の義務として、機構の職員は、主務大臣からの委任を受けて、実習実施者に対して実地検査を行うことが技能実習法に定められています(技能実習法第14条)。
    • 実地検査の回数
      実地検査には、関係者から相談、申告、情報提供があった場合等に直ちに行う臨時検査や、原則、監理団体に1年に1度、実習実施者に3年に1度実施する定期検査があります。
    • 実地検査の内容
      実地検査において、認定計画に従って技能実習が適正に行われているか確認するため、実習実施者に報告を求め、必要な帳簿書類等を確認します。技能実習法違反の場合や出入国・労働関係法令違反が疑われる場合などには、改善勧告・改善指導を行います。
    • 実習実施者の注意点
      実習実施者は、機構の実地検査に際して、虚偽の報告や虚偽の必要書類の提出等をした場合には、認定計画の認定が取消される場合がありますのでご注意下さい。
    • 実地検査の一般的な流れ

一方、特定技能では、国際建設技能振興機構(FITS)が巡回訪問を行います。

FITSは、建設特定技能・特定活動が適正かつ円滑に実施されるよう、特定監理団体及び受入建設企業に対して巡回指導を行うほか、「FITS相談ホットライン」を開設し、外国籍人材の母国語による電話相談などを行っています。

建設業界には、外国人技能実習機構やFITSのように、人材の受入れや育成等が適正に実施されるために必要な支援等を行う団体が存在しますので、自社のためにも適正な運用を心がけましょう。

受入れを適正に行わなかった場合のリスク

受入けを適正に行わなかった場合、下記のような3つのリスクがあります。

【リスク1:行政処分(企業名・監理団体名公開)】

行政処分には、大きく分けて下記の2つがあります。

  • 改善命令(技能実習法第15条)
    認定計画に従って技能実習を行っていない場合や技能実習法令、出入国・労働関係法令に違反した場合に、必要な措置と期限を定めて命令します。
  • 許可、認定の取消し(技能実習法第16条)
    下記の不正行為は監理団体の許可、技能実習計画の認定が取消しの対象になります。
    ―認定計画に従って技能実習を行っていない場合
    ―欠格事由に該当した場合
    ―実地検査に際して虚偽の報告等をした場合
    ―改善命令に違反した場合

上記の行政処分を受けた企業は、外国人技能実習機構HP内(改善命令許可・認定の取消し)に企業名・監理団体名が公開されます。

【リスク2:受入れ停止期間】

外国人技能実習機構の実地検査等により「不正行為」と入国管理局に判断された場合は、不正行為が終了した後から一定期間、技能実習生の受入れができなくなります。不正の内容により受入れ停止期間が異なります。(技能実習・特定技能を適正に行うとは?の表を参照)

【リスク3:特定技能の受入れ計画の審査が通りにくくなる】

下記の図は、特定技能を受入れる際の申請の流れです。ポイントは、「建設特定技能受入計画の認定申請」を国土交通省へ提出するという点です。

そのため、その企業に過去、技能実習の認定取消し等が発生した経験があると、国土交通省からの特定技能の受入れ計画の審査が通りにくくなります。

引用:建設業しんこうWEB

受入れを適正に行うため、企業側に必要な3つの理解

ここまで、技能実習・特定技能を適正に行うためのポイントについて深掘りしてきましたが、最後は、企業側に必要な3つの理解についてお話します。

 【必要な理解1:適正な運用】

これまで説明させて頂いたように、技能実習・特定技能は適正な運用が求められます。これに対して、理解がない状態で雇用をしてしまうと、企業として大きなリスクを長期間背負うことになります。自社の将来のためにも正しい運用が必須です。

【必要な理解2:言葉遣い】

言葉遣いにも理解が必要です。例えば、外国籍人材へ「お前」などと呼ぶ行為は注意が必要です。

建設現場等で、日本人同士でも相手に対して「お前」と呼ぶ行為はよく見かけますが、外国籍の方々は「お前」と呼ばれると、「怒られているのか」等と間違った理解をしてしまうこともあります。

その背景として、まず技能実習生の場合、入国前に日本語の教育を現地の送り出し機関で受講します。その際、相手を指す言葉は「あなた」と学び入国するため、「お前」と呼ばれると当然、違和感や恐怖を感じます。

このような小さな言葉の積み重ねが、失踪という最悪な結末を引き起こすケースも多々あります。

【必要な理解3:教育】

技能検定合格のための教育

技能実習1号から2号へ移行する際や、技能実習2号から特定技能1号へ移行する(作業変更がある場合)際には、技能検定の受験が必須になります(ただし、技能実習から特定技能への移行の場合、通常、同作業を特定技能でも行うことが多いです)。

試験に不合格の場合は、技能実習1号から技能実習2号への移行の技能検定は、一度だけ再試験が可能です。再試験に不合格の場合は、強制帰国となります。

また、試験日の設定が在留期間終了の直前となってしまい再受験ができない場合があるので、在留資格の滞在期間の半分(6カ月)を過ぎる前までに、必ず技能検定(基礎級)の受検申請が必要です。

そして、技能実習2号から特定技能1号への移行の技能検定は、実習実施者により良好に技能実習を行っていた旨の評価証(仮称)を変更申請時に提出することで、在留資格移行が許可されることがあります。ただし、試験合格が原則となります。

技能検定への主な教育としては、下記の2つです。

  • 過去問題を徹底的に解かせること(学科試験対策)
  • 模擬試験を行い、時間内に終了できるようにすること(実技試験対策)

検定受験料も企業負担であり、不合格の際は帰国というケースもありますので、自社の技能実習生と協力して共に合格を目指してください。

現場での教育

建設現場では、上司が部下を教育する際、「背中を見て覚えろ」という教育風景が見受けられます。教えてもらう立場の場合は、日本人でも初めは理解するのに難しさを感じることでしょう。

教えてもらう立場が外国籍人材の場合は当然、理解することがさらに難しいと思います。日本に来て間もない外国籍人材の立場を理解した上で教育を行うことで、失踪などの最悪な結末を防げる可能性が高まります。

技能実習・特定技能を適正に行うためのまとめ

第3回では、技能実習・特定技能の受入れを適正に行うために必要な理解や、受入れ時の禁止事項や企業側が背負うリスクなどについてご説明しました。

外国籍人材は、会社、建設業界、そして日本のためにも、今後さらに必要不可欠な存在になっていきます。企業側や外国籍人材がお互いに幸せになるためにも、適正な運用が求められ、互いに理解し合い家族のような関係構築が重要になります。

外国人雇用に関するご不明点などについては、下記のURLからお問い合わせ下さい。

技能実習・特定技能のお問い合わせは、下記まで

グローバルキャリア職業訓練法⼈:https://gca.ac.jp/profile/
お問い合わせフォーム:https://gca.ac.jp/contact/
※弊社にお問い合わせいただければ優良団体の紹介が可能です。技能実習から特定技能までワンストップでサポートいたします。

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拓殖大学卒業。大学時代は体育会サッカー部に所属し、全国ベスト16を経験。部活を引退後は、語学留学でフィリピンへ。
留学で得た経験からインバウンド事業に興味を持ち、2020年4月に株式会社ウィルグループに新卒入社。
グローバルキャリア職業訓練法人に配属となり、現在は技能実習生の監理団体の運営及び、技能実習生の建設業に特化した就労支援・サポートを展開している。
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