職人の動きも覚えられるオリジナル体操とは?
建設職人には腰痛持ちが多く、職業病とも言われている。重たい荷物の搬入や無理な姿勢での長時間作業により、腰にかかる負担が大きいからだ。
職人の高齢化に伴い、健康面のフォローは一層重要となっているが、この課題に対してリフォーム事業を中心に4社の子会社をもつ株式会社NEXTAGE GROUPは、「塗装」「掘削」「釘打ち」「ノコギリ」の4つのポーズという建設業に関する動きを取り入れた独特のオリジナル体操を制作。職人たちの健康に対する意識改革を進めている。
「腰痛対策は、国も推奨している。この体操を、建設業界に携わるすべての人に広めたい」と意気込む、株式会社NEXTAGE GROUPの建設業災害防止協力会事務局コンプライアンス推進本部の小松陽一主任と、広報課の鶴岡美保さんに話を聞いた。
腰痛は、建設職人の職業病
株式会社NEXTAGE GROUPの建設業災害防止協力会事務局コンプライアンス推進本部 小松陽一主任、広報課の鶴岡美保さん
――建設業に特化したオリジナル体操を制作した背景は。
小松さん 建設業はいわゆる3K(危険、汚い、きつい)とマイナスなイメージが多少なりともあると思います。当社は、健康経営の一環で禁煙運動も進めていますが、建設業の職人には喫煙者が多いという感覚もあるでしょう。
そこで当社が率先して建設業のイメージアップをしていくために、労働災害防止と健康維持に役立ち、子どもたちでもマネできるような分かりやすく、現場の作業を取り入れたユニークな体操を作りたいと考えたことがきっかけです。
また、現場で働く職人は、重たい荷物の搬入、無理な姿勢での長時間作業により、腰にかかる負担で腰痛になる方が多く、国の第13次労働災害防止計画では、腰痛対策を推奨しています。腰痛は、建設職人の職業病です。
体操には職人の意見を取り入れた4つのポーズがあり、作業開始前に行う体操としても労働災害防止に必要な動きが盛り込まれています。
「塗装」「掘削」「釘打ち」「ノコギリ」の4つのポーズ
――体操はどんな動きになっている?
小松さん 4分間の体操です。体操の中には、建設業に特化した「塗装」「掘削」「釘打ち」「ノコギリ」の4つのポーズを取れ入れています。
それぞれのポーズで効く部位や効果も違っていて、「塗装のポーズ」では、股関節を伸ばす動きがあり、可動域を広げて疲労をためにくくする効果があります。「掘削のポーズ」では、アキレス腱を伸ばす動きがあり、さらに前傾姿勢となることで太もも筋肉をほどよく刺激します。「釘打ちのポーズ」では、肩の筋肉をほぐして肩こりを解消し、集中力の低下を防ぐ効果があります。「ノコギリのポーズ」では、2人1組となり、腰をねじりほぐす動きをすることで、腰痛防止につながります。
鶴岡さん 作業に関連した動きなので、覚えやすいという意見がありましたね。
オリジナル体操の手順
――この動きで腰痛は改善する?
小松さん 当社の協力会社にも腰痛持ちの職人が多かったのですが、口酸っぱくオリジナル体操をお願いしていたら、腰痛持ちの方の割合が少々減少したので、多少なりとも腰痛対策に効果があると思いますよ。
鶴岡さん 当社の職人メンバーもほぼ腰痛持ちなんですが、冬の時期は体が強張っている状態でイキナリ作業すると、ケガをする危険が高まります。若い子は元気だから体操しないでそのまま作業に入っていることもありましたが、腰痛を経験している先輩社員が若手社員に実体験から助言をしてくれているので、徐々に体操に対する意識も高まっています。
――オリジナル体操は、誰が制作されたんですか?
小松さん 当社の施工部が中心となり、月に一度ある施工会議で意見を出し合って開発しました。
――自社にオリジナル体操があるのは珍しい。
小松さん 大手のゼネコンにも独自の体操があるかと思いますが、リフォーム事業を中心とした当社の規模だと、なかなかないかと思います。
安全大会でオリジナル体操を披露
――小松さんが所属している建設業災害防止協力会事務局ではどんなことをしている?
小松さん 当社では協力会社のことをパートナーさまと呼んでいますが、パートナーさまから預かったお金をもとに、会員の方に特別教育を無料で受講していただいたり、ヘルメットを配布するなどの活動をしています。いわば協力会の窓口にあたります。他にも、座学だけでなく、AR(拡張現実)を用いた危険察知の能力を高める取組みなども行っています。
――これから体操をどう広めたいですか。
小松さん 建設業界に携わるすべての方にこの体操をやっていただけたら嬉しいですね。そのためにも、これからブラッシュアップしていきたいと思います。
ネクステージ体操【完成版】 / YouTube