「Jotoキソパッキング工法」での施工のようす

「Jotoキソパッキング工法」での施工のようす

「基礎パッキン工法」の生みの親。住宅の非常識を、常識に変えた建材会社

基礎パッキンで、非常識を常識に変える

「ユニークな建材で長持ち住まいを支えます」をコーポレートスローガンに掲げる城東テクノ株式会社は、床下換気の効果を高め地震に強い住まいに寄与する「Jotoキソパッキング工法」を開発。戸建て住宅で大きなシェアを獲得している。

一方、戸建て住宅が減少していく中、中大規模木造建築を新たにターゲットと据え、中小工務店様やビルダー様と協業すべくセミナーや事業活動を展開中だ。

これから中小工務店に迫られるのは、「防火」に関する新たな知識や技術の取得である。同社は今後中小工務店と協働し、木造非住宅建築の市場を広げていく動きを、同社マーケティング部の山田昭夫部長、新市場開発営業課非住宅営業チームの溝口陽一チーム長、戦略分析課の野辺地健太氏に話を聞いた。

他社に真似できない建材を生み出し続ける

左から城東テクノ株式会社マーケティング部の山田昭夫部長、 新市場開発営業課非住宅営業チームの溝口陽一チーム長

――城東テクノ株式会社の概要と歴史について

山田さん 1960年10月に大阪市城東区で個人創業し、独自の開発やアイディアを活用し、他社が真似できない建材製品を生み出すことを強みとしてきました。

2021年10月には創業60周年を迎えますが、歴史の大半が主力商品である「Jotoキソパッキング工法」の進化とともに歩んできました。現在は、大阪府枚方市を本社とし、北は北海道から南は鹿児島まで展開しています。工場は枚方市と茨城県にあり、キソパッキンや付随する部材を製造しています。

――メイン製品である「Jotoキソパッキング工法」とは?

山田さん まず、「基礎パッキン工法」とは何かから説明しますと、昔の古民家やお寺に使われている基礎と土台の間に挟むスペーサーを現代風にアレンジしたものになります。弊社が1976年に開発し、「Jotoキソパッキング工法」という名称で展開しています。

キソパッキンの設置イメージ

昔は「風窓」による換気が主流でした。しかし風窓では床下に換気されない空気のよどみ域ができやすく、その湿気が土台や柱の腐れに繋がることがありました。また、基礎に穴を開けるためコンクリートの基礎耐力が落ちるなどの弱点がありました。

「Jotoキソパッキング工法」では、基礎と土台の間にパッキンを挟むことで自然の気流を利用した全周換気で床下全域を乾燥させるとともに、基礎の水分を土台に伝えないように土台自体を絶縁させ、腐朽菌やカビの発生を防ぎ、シロアリ被害を受けにくい床下環境を作りだします。

従来工法と「Jotoキソパッキング工法」の違い

阪神淡路大震災で「Jotoキソパッキング工法」の効果が証明

――普及は一気に進んだのでしょうか。

山田さん 1976年には、「Jotoキソパッキング工法」が確立していました。しかし、風窓の設置は、住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)の共通仕様書にも明記されており、工務店様やビルダー様にとって風窓は常識でした。ですので、工法の普及は簡単ではなかったんです。

そこで、風窓の家と「Jotoキソパッキング工法」の家を2棟並べて実証実験を行いました。床下換気量を計測して比較したり、安全性の実証実験を実施しながら、様々な評価機関のお墨付きをいただき、実績を積み上げていきました。こうしたことが功を奏し、1994年11月に住宅金融公庫から、「Jotoキソパッキング工法」が評価承認第一号の承認を受け、ハウスメーカー様や工務店様がさらに採用しやすい状況になりました。

[PR]若手技術者をスピード派遣


さらに大きな転機は、1995年の阪神淡路大震災です。現地では、500棟ほどが「Jotoキソパッキング工法」を採用していましたが、同工法を採用していた住宅は外装等に多少の損傷はあっても家屋の倒壊はありませんでした。

一方で、風窓を採用した住宅は、シロアリの被害に起因する木部劣化による家屋倒壊が発生した事例もありました。結果として、震災によって「Jotoキソパッキング工法」が世の中に認められる大きなきっかけになったと言えます。

「Jotoキソパッキング工法」の原材料になる「Jotoコンパウンド」。炭酸カルシウムとポリオレフィンを複合させて、耐荷重性能を向上させるとともに樹脂のしなやかさを兼ね備えており、同様の製法で宅内用マンホール蓋等も製造している。

現在はとんとん拍子に普及が進み、「Jotoキソパッキング工法」の導入棟数は500万棟に及びます。かつては住宅床下工法の非常識と言われましたが、基礎パッキン工法は住宅の常識に変わりました。

木造が不慣れな設計者の課題

――シェアが高くなると、成長にも限界があるのでは。

山田さん 今、新築木造戸建て住宅の約8割がいわゆる基礎パッキン工法で、うち「Jotoキソパッキング工法」が約60%のシェアをいただいています。木造新築戸建て住宅では知名度・シェアともに拡大していますが、裏を返せば、木造戸建て住宅が減少すれば、当社の売上も比例して減少するわけです。国内では木造の非住宅市場への採用活動を進めています。また、海外市場としてアメリカに現地法人を設立し、販売を進めており、アメリカでも住宅の非常識を常識にチェンジしたいと考えています。

溝口さん  また、2020年10月からマーケティング部に新市場開発営業課を発足させました。非住宅、非新築、非木造の3チームに分け、営業、製品開発、商品企画担当者で1チームを形成、少数精鋭で新たな分野の開拓を行っています。

特に、木造の非住宅や中大規模木造を設計されている方は、過去にS造やRC造を設計されていた方が多いんです。そういった設計者の方は木造に不慣れなため、基礎パッキン工法をご存知ないことも珍しくありません。

ですが、「生物劣化」は木造住宅劣化の大きな要因の一つとなります。生物劣化とは、腐朽菌やシロアリなどによる生物が原因で木材が劣化することですが、S造やRC造の設計者は生物劣化を考慮する必要がなかったわけです。そこで当社は過去の知見や情報を提供させていただきながら、ヒアリングや商品提案をしています。

また、木造防耐火の専門家として活躍されている安井昇氏(桜設計集団一級建築士事務所代表)に顧問として参画いただき、木造防耐火についてアドバイスも受けながら、非住宅分野での商品開発を進めています。

木造非住宅への参入障壁

――安井氏のWEBセミナー「木造非住宅 超入門!防耐火技術を学ぶ。」の反響は。

野辺地さん 安井先生と講演の相談をした際に、100棟/年以下の住宅会社様も木造非住宅に取り組みたい先が増えてきているが、実際何をすればいいか分からない先が多かったので、防耐火技術の入門を学べるような企画を依頼しました。

もともと木造戸建ての知識・経験に長けている方たちが、新たなチャレンジとして木造非住宅を建築する際に想定しうる課題や注意点について説明するだけでなく、町屋の多い京都の事例も取り上げ、延焼防止の観点から、火の燃え方や木の特性も丁寧に紹介をしました。

――参加された工務店やビルダーの反響は。

野辺地さん 135名が参加されましたが、半数以上が住宅会社様や設計事務所様でした。「木造非住宅分野に参入したいが、何から手を付ければいいかと迷っている」「木造防耐火の知識に不安がある」という小規模事業者の方が多かった印象です。

「これからの木材の耐火性能に改めて期待が持てる」など、前向きな意見をたくさんいただき、当社が木造非住宅分野の窓口となることができれば、よりビジネスが広がると手応えを感じたセミナーでした。第2弾のセミナーも、3月16日に開催いたします。弊社では、これからも積極的な発信と課題解決に取り組んでいきます。

――木造の非住宅分野への参入では、壁となっているものは。

野辺地さん 東京都・神奈川県・愛知県・大阪府以外は準防火地域が少なく、防火に対する意識は低い印象があります。聞きなれない用語や技術を目にすると、抵抗を感じられるかもしれません。

防耐火の法律的な要素本などから学ぶことはできますが、実物件を施工するにあたり、特に中大規模で非住宅となると、防耐火の技術が必要になります。なおかつ、火の扱いは人命に関わりますから、慎重にならざるを得ません。

もし、知識を深め、経験値を高めることで、安井先生がおっしゃるように中大規模建築も戸建て住宅の延長線で設計・施工ができると思います。

――今後の展開は。

山田さん 当社が取り組んでいるGAISOブランドによる通気・換気・雨仕舞・防火のお困りごと解消につながる外装商品展開や、中長期的にはJotoコンパウンドを使用したキソパッキン以外の役割をもった商品「ネクストキソパッキン」の展開を検討しています。

そして、今後ますます職人不足が進む中で、当社の製品であるハウスステップに代表されるような簡易に施工ができる省施工部材の開発も行っています。

また、非住宅分野においては、当社のグループ会社である城東リプロン株式会社が、昔のため池の代わりになる雨水貯留浸透システムの製造発売をしております。昨今のゲリラ豪雨などの環境変化を背景に引き合いも増えており、城東リプロン株式会社が地盤面より下の水に関わる分野を担当し、城東テクノ株式会社が地盤面より上の部分を担当する事により非住宅分野に関してもシナジー効果を生み出していければと考えております。

将来の施工管理技士の採用なら(PR)

この記事のコメントを見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
9期連続赤字だった建設会社が「民間シフト」で8期連続黒字に。小坂田建設の挑戦
建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
モバイルバージョンを終了