全く読めない図面を渡され、お手上げ状態…
皆さんは、今まで読解不可能な図面をコンサルから渡された経験はないだろうか?
私の言う読解不可能とは、施工を行ううえで最低限知りたい情報が記載されていない、またはどこの寸法を指しているのか全くわからない図面のことだ。
私は、とあるハウスメーカーから委託された宅地造成の工事で、全く読めない「事故図面」にぶち当たった経験がある(笑)。
その造成工事では、計画の道路幅員や擁壁の設計等の表記はされていたが、肝心の寸法表記が滅茶苦茶で、全く読める状態ではなかった。さらに、実際に事前測量を行うと、図面表記されている当初の地形の高さなどの数字がところどころ違うことが判明した。
すぐにハウスメーカーに問い合わせることにした。このままの設計で工事を進めれば、当然、擁壁などの構造物の設計数値がずれてくるため、検査どころではなくなるからだ。
すると、ハウスメーカーがとんでもないことを言い出した。
「市役所に申請を出して許可をもらったため、今から変更図面を提出するとなると、申請に1ヶ月近くかかってしまう。工期の問題上、施工を進めてくれないか?」
これにはお手上げだった…。全く設計と違うものを作って、後から責任を誰が取るというのだろうか。もちろんきっちりとお断りし、変更を行なって設計をし直してからでないと施工はできない、と話をつけた。
このような話は、実際に他の現場でもよく聞く。コンサルが書いた図面が現場と全く合わないなんてことは、土木の現場ではザラにある。では、こういった事態に直面した時、どのように対処すれば良いのだろうか。
図面が現場と合わない事態に直面した際の対処法
当たり前だと思うかもしれないが、まずは断固として施工を進めてはならない。
よく発注者との付き合いで、とりあえずわがままを聞いて施工を進める、という管理者がいるようだが、これは最悪の選択肢である。
言い方は悪いが、発注者や検査を行なった市役所などは、一度施工を進めてしまえば責任転嫁することなんて簡単だ。
こちらの条件で出した設計と違うものを設計した責任は管理者ですよ、と平気な顔で弁解するだろう。もし最終段階で全く数量が合わなかったとしたら、その責任は全て管理者というわけだ。
こうなってからでは、正直泣き寝入りするしかなくなってしまう。施工前の段階で図面が明らかにおかしい場合は、即座にコンサルや設計者に確認をとり、やばいと感じた場合は、絶対に施工に入ってはならない。
市役所や発注者にも必ず、何かしらの協力を得る
正直、あまりにも設計数量と実際の施工数量がかけ離れている場合、当初設計の数字を変更するというのは、土木の現場ではよくあることだ。ただし、ここで注意したいのは、絶対に当初の数量変更まで請け負わないということ。
発注者は、当初の設計数量を変更するとなると協議等にあげて、必要書類を揃える必要があるそうだ。そのため、中には必要書類の作成までも現場管理者に求める人間もいるらしい。
しかし、ここで絶対に首を縦に振ってはならない。それはあくまでも彼らの仕事だからだ。当初設計の数量が明らかに違う場合は、遠慮せず、積極的に数量の変更や対応を求めるべきである。
さらに、数量の変更が発生すると、図面の書き換えの作業も発生する。これを多くの現場管理者が自分たちで行なってしまっているのだが、私はこれもおかしいと感じている。
発注者が変更を指示したのならば、当然、図面の変更も発注者が責任を持って行い、我々に渡すべきだと思うのだが、意外とそう感じている人は少ないのだろうか。
――ここまで話したように、コンサルが書いた図面は100%正しいというわけではない。
少しくらいの間違いは誰にだってあるし、どんな現場でも起こりうる。しかし、明らかに違う図面を持って来られて、それを請け負った現場管理者が責任を取らなければならない、というのはどうかしている。
図面はいわば工事の命だ。違えば当然、全てが狂う。責任転嫁されないよう、対処方法を現場管理者自身が考えておかなければならない。