社旗、安全旗、労働衛生旗、安全衛生旗の掲げ方
日本の建設現場では、目立つところにゼネコンの「社旗」と並んで、「安全旗」「労働衛生旗」「安全衛生旗」を掲げることが多いです。現場の皆さんはそれぞれの旗の意味をちゃんと理解して使っていますか?
意外とその理由と掲揚期間について、ご存知でない方もいらっしゃるようですので、安全旗、労働衛生旗、安全衛生旗の意味と、その使い分け方、掲揚期間について簡単にまとめておきます。
安全旗、労働衛生旗、安全衛生旗、この3旗は視覚から訴える、れっきとした「労働災害防止ツール」です。現場代理人として、施工管理技士として、旗に関する基本知識を押さえておきましょう!
安全旗とは、
“お客様からご依頼された工事を、安全を第一として、完成するという、その作業所の精神の表明であり、近隣を含めた皆様方への表明”
公益財団法人横浜市建築保全公社「工事現場における仮囲い及び足場等の安全対策」より
一番左側に掲揚する旗は何?
現場で旗を掲揚する際、一番オーソドックスなのは、社旗と安全旗を横に並べて掲げることです。その際、あなたなら左右どっちに、安全旗を掲げますか?
一般論では、複数の旗を横に並べて掲げる場合、一番左側に掲げる旗が「格上」になります。ポールで上下に掲げる場合は、一番上が格上。なので、国旗などは一番左側か、一番上に掲げるのが妥当とされています。
では、社旗と安全旗は、どっちが格上で、左側に掲揚すべきなのか?
それは現場運営あっての安全なので、一番左に社旗、右に安全旗(労働衛生旗、安全衛生旗)を掲げる、というのが私の知人たちの間では一般的です。
しかし、安全第一という普遍的な観点から、社旗より安全旗のほうが格上だという考え方もあります。そうした考えからなのか、どうかは分かりませんが、鹿島建設さんの現場では、社旗が右側に掲揚されているケースが多いようです。
また、鹿島建設さんなどを始めとした多くの企業は、社名を記した安全旗(労働衛生旗、安全衛生旗)を持っており、この社名を記した安全旗を左側に掲揚し、その右に社旗を掲げている現場もよく見かけます。
その一方で、「安全旗は現場の外から見て、右側に掲げるように先輩に教えられた」と言う、あるゼネコンの現場監督さんもいらっしゃいます。どちらが正しいのか、残念ながら薄学の私は知りません。もしご存知の方がいらっしゃいましたら、お教えください。
安全旗、労働衛生旗、安全衛生旗、3旗の概要
次に、安全旗、労働衛生旗、安全衛生旗、3旗の概要をまとめておきます。
安全旗
- 掲揚期間:6月1日~6月30日、7月1日~7月7日。
- デザイン:白地に緑十字。
- サイズ:全体縦横比1:1.5。緑十字の1辺のサイズは、旗全体の縦サイズの5分の1。
安全旗は安全週間のシンボルマークです。大正8年に発案された後、昭和2年には、内務省社会局全国工場監督官主任会議において、安全週間のシンボルマークとして使用することが認められました。
全国統一の安全週間「全国安全週間」が実施されたのは、国が安全旗をシンボルマークとして承認した昭和2年の翌年となる昭和3年の7月2日~7月7日。そして全国安全週間は昭和6年以降、7月1日~7月7日に変更されました。
労働衛生旗
- 掲揚期間:9月1日~9月30日、10月1日~10月7日。
- デザイン:緑地に白十字。
- サイズ:全体縦横比は1:1.5。白十字の1辺のサイズは、旗全体の縦サイズの5分の1。労働衛生旗と安全旗のサイズは同じです。
衛生管理者制度の成立後、昭和28年に「労働衛生」の象徴となるマークを労働省が公募し、緑地に白十字のデザインが選ばれました。安全習慣とは別に、労働衛生週間を設けようということで、労働省が全国労働衛生週間を実施しました。
安全衛生旗
- 掲揚期間:安全旗、労働衛生旗を掲げない期間。
- デザイン:緑地に白十字、その中に緑十字。
- サイズ:全体縦横比は1:1.5。白十字の1辺のサイズは、旗全体の縦サイズの3分の1。緑十字の1辺のサイズは、旗全体の縦サイズの5分の1。
安全衛生旗のデザインは、安全旗と労働衛生旗を混ぜたようなデザインです。それもそのはず、安全衛生旗は、安全と労働衛生を一体的に訴えるため、中央労働災害防止協会が公募し、昭和40年にこの安全旗と労働衛生旗を混ぜたようなデザインが選ばれました。
複雑化する旗の掲揚方法
安全旗、労働衛生旗、安全衛生旗の掲揚期間は次の通りです。「三旗掲げかえ運動」とも呼ばれます。
- 安全旗:6月1日~6月30日、7月1日~7月7日
- 労働衛生旗:9月1日~9月30日、10月1日~10月7日
- 安全衛生旗:それ以外の期間
上記を参考に3旗を掲揚しましょう。
とはいえ、最近は安全旗以外にも、「Safe work TOKYO」や「けんせつ小町」の旗なども出現し、JVの現場では、上下2段に計6旗を並べている現場も見かけるなど、旗の掲揚方法は複雑化しています。
また、日本国内の現場で国旗を掲揚する機会は滅多に見掛けませんが、海外のプロジェクトを日本のゼネコンが担当する場合は、一番格上のポジション(左・上)に、その国の国旗を掲げるケースもあるそうです。
国内の高層ビルの新築現場では、ビルの目立つところに、大々的に旗(?)を掲げている現場も多く、高層ビルの屋上クレーンに、高々と社旗を掲げているゼネコンもあるなど、広告的な役割が濃厚になってきているようにも感じます。
こうなってくると、もはや小さな旗の左右や上下などの掲揚方法などは問題ではなく、旗の常識やルールなどはあってないようなものなのかもしれません。
個人的にも社旗と安全旗(労働衛生旗、安全衛生旗)の掲揚方法に関しては、小笠原流のマナーのように厳格にすべきだとは、これっぽっちも思いません。
旗は二の次、とにかく安全第一です!ご安全に!
清水さん、戸田さん、安藤ハザマさんの例は、工事用ゲートに近い方を上位として「安全旗」を掲示しているのではないでしょうか。大半の大手ゼネコンでは掲示位置をCI基準で定めていますが、多くは左上位に「安全旗」または「安全衛生旗」とされていると思います。