施工管理の仕事をしている人の中には、病んでいる人、もしくは病んだことがある人が比較的多いように思う。
仕事柄、若い年齢で責任の大きいポジションに就くことも多く、その重圧から精神的に病んでいく若手も多いのだろう。それは他人事ではなく、私もあまりの激務と責任で病みかけた時期があった。
だが、あることをきっかけに全く病むことなく仕事ができるようになった。その理由について話そうと思う。
精神的に疲れきっていた当時の私
当時、私は精神的に疲れきっていた…。
毎日の残業、現場では職人と発注者の板挟み状態、毎日頭が一杯一杯だった。歳が若いということで、職人からかなり舐められ、自分の考えをなかなか汲み取ってもらえない日々が続いた。
毎日、休憩時間になるとGoogleで「転職」というキーワードを打っては、他の業種の求人サイトを呆然と眺めていた。それだけ、施工管理という仕事が嫌になっていた時期だった。
ある現場所長に出会って考えが一変
そんなある日、他の現場へ臨時で応援に行くことになった。現場に行き、非常に驚いた。
そこの現場所長が、”異常に”明るい人だったからだ。
当時の私にとっては鬱陶しいぐらい、楽しそうに、生き生きと仕事をしていた。私はなぜ同じ仕事をしていて、ここまで違うのだろうと疑問だった。
あまりにも気になったので、自分との違いを見つけようと思い、現場での業務に臨んだ。すると、業務を行っていく中であることに気が付いた。
『ん?この所長、別に能力があるわけじゃないぞ?』
今思うとなんとも失礼な話だ(笑)。
現場では、下請けの職人がある程度の段取りを行い、現場を進めていた。彼らはイヤイヤやっている素振りもなく、所長とコミュニケーションを取りながら、納得して自分たちから率先して業務を行っていたのだ。
“頼る力がある人間”を目指そう
実はこの所長、会社内では「サボり魔」とレッテルを貼られている所長だった。確かに傍から見ればサボっているように思われるだろう。しかし、実際は違う。
この所長は、「人を頼る力」が非常に素晴らしかったのだ。
私たち施工管理の業務の天敵は、抱え込むことである。できないと思われたらどうしよう、自分ができなければ現場が止まってしまうと思い、責任の重さを一人で抱え込んでしまう。
確かに、現場管理の基本的な知識はある程度必要だが、自分が全てできなければ現場が進まないということは全くない。施工においては職人さんが形にしてくれるし、自分でできないことは発注者や周りを頼ることで解決できることがほとんどだ。
人を頼れることは武器
さらに、この所長の凄さは「人の使い方」にあった。
例えば、書類業務で手が離せない時、施工管理はまず現場を終わらせてから、残業をして書類作成を行う人が多いだろう。
しかし、この所長の場合は、「○○さん、光波見れるんかいな?見れるんなら今日は悪いんじゃが、測量して現場進めといてくれぇや」と、職人さんに現場を頼んでいた。頼まれた職人さんも、「所長さんが言うならわかりましたよ」と笑顔で答えていた。
この所長は、相手に好かれるまで自分から話しかけ、信頼関係を構築するようにしており、現場でも強い信頼関係が確立されていた。
施工管理が下請けに測量を頼むというのは、一般的に考えれば腹立たしいと思う人もいるだろうが、それを普通にできる能力は、素晴らしいことだと私は思う。
病むくらいなら人を頼るほうが100倍マシ
私は思い切って、その所長に質問を投げかけてみた。
「なんでそんなに、いい意味で適当にできるんですか?周りの目とか気にならないんですか?」
すると、笑顔でこう答えてくれた。
「ワシは、会社で色々言われてるのも全部わかっている。でもそんなんでいちいち病んでたら、この仕事はできない。責任がある仕事だし適当にとは言えないが、頼れるところは頼って助けてもらえばいい。その代わり、自分も助けてもらえるような人間にならないとな。病んでしまって辞めるより100倍マシだと思うがなぁ。」
私はこの言葉にハッとした。
それ以降、所長の言うように、自分が全てを解決するのではなく、人に頼ることにしてみた。すると、そこから徐々に仕事がうまくいくようになり、次第に精神的にも楽になっていくのがわかった。
もし、同じような悩みを抱えている施工管理者がいるとしたら、現場であなたがやるべきことは「人に頼ること」なのかもしれない。