静岡県・熱海市での大規模な土石流災害の教訓をもとに、施策の更なる充実・強化を図ることを指示した斉藤鉄夫国土交通大臣

静岡県・熱海市での大規模な土石流災害の教訓をもとに、施策の更なる充実・強化を図ることを指示した斉藤鉄夫国土交通大臣

2022年度は”再度災害防止”と”初動対応”がテーマ【国土交通省の防災・減災プロジェクト】

国土交通省はこのほど、「防災・減災対策本部(第6回)」(本部長:斉藤鉄夫国土交通大臣)を開催、2021年度に発生した災害の教訓などを踏まえ、施策の更なる充実・強化を図る「2022年度 総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」をとりまとめた。

2021年度災害対応で明らかになった課題などを踏まえ、「再度災害の防止」と「初動対応の迅速化・適正化」の2点を2022年度に強化すべきテーマとした。

盛土災害の防止などを強化

「再度災害の防止」では、激甚化・頻発化する災害などに対し、同様の被害を繰り返し発生させないために、「盛土による災害の防止」「同地域で繰り返し発生する被害の防止・軽減」や「多発する同種の被災形態の被害の防止・軽減」の観点に基づきハード・ソフト一体となった事前防災対策をより一層加速化させる。

赤羽一嘉国土交通大臣(当時)が、2021年7月の静岡県・熱海市の被災状況を視察した時の模様 / 出典:国土交通省HP

「盛土による災害の防止」では、2021年7月に静岡県・熱海市で大規模な土石流災害が発生し、危険な盛土などに関する規制が必ずしも十分でないエリアが存在することなどを踏まえ、土地の利用区分に関わらず、危険な盛土などを包括的に規制し、盛土による災害を防止する。この災害では、死者・行方不明者28名、住宅被害98棟の甚大な人的・物的被害が生じている。

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“盛土規制法”により効果的な施策を展開へ

政府は「宅地造成等規制法の一部を改正する法律」を公布し、危険な盛土などを全国一律の基準により、包括的に規制する法制度・通称”盛土規制法”を制定した。人家・公共施設などに被害を及ぼすおそれのある盛土について、地方自治体が行う詳細調査や応急対策、抜本的な危険箇所対策について支援する。

次に、法律の円滑な施行のため、都道府県などによる基礎調査や区域指定などの実施に向けた運用ガイドラインの策定・周知や助言などを行う。これにより「スキマのない規制」「盛土などの安全性の確保」「責任の所在の明確化」や「実効性のある罰則の措置」などの施策を展開する。

流域治水をさらに強化・推進へ

「同じ地域で繰り返し発生する被害の防止・軽減」では、内水対策などの事前防災対策を加速化するとともに、2021年11月に施行された流域治水関連法を活用し、あらゆる関係者が協働して行う流域治水の取組みを強力に推進する。地震や大雨などで一度被災し復旧した箇所が再度被災を受けた事例が発生したことを踏まえ、対策などを検討する。

今後は、排水機能の強化、土地利用規制、流出抑制対策、浸水状況の迅速な把握などについて新技術を活用し、内水対策のより一層の強化を図る。また被災した施設について、将来、同規模の地震や大雨などが発生しても、その施設が繰り返し被災しないための対策などを検討する。

流域治水の概要 / 出典:国土交通省北陸地方整備局HP

 

豪雨災害による鉄道橋梁や道路橋の災害リスクにも注視

「多発する同種の被災形態の被害の防止・軽減」では、近年、激甚化・頻発化する豪雨災害により、河川に架かる鉄道橋梁や隣接する区間の道路の流出などの災害リスクに対応するため、対策優先度を踏まえた根固め工などの流失防止対策、「道路土工構造物点検要領」の見直しなど、必要な対策を実施する。2021年8月の大雨では、JR東海の橋脚傾斜や国道41号の道路流出などの被害が発生している。

そこで国土交通省は、鉄道橋梁について翌月の9月に「JR河川橋梁対策検討会」を開催し、「鉄道河川橋梁における維持管理の手引き」に基づき、被災時に影響の大きい橋梁を対象とした総点検を実施している。今後、点検結果に基づき、橋脚根固め工などの必要な対策を実施する予定だ。次に、道路橋や河川に隣接する道路構造物については、道路構造物の流失防止対策を実施し、「道路土工構造物点検要領」に河川隣接区間の盛土および擁壁を点検対象として追加した。

国道41号下呂市萩原地区の被災箇所 / 出典:国土交通省中部地方整備局高山国道事務所HP

2点目のテーマである「初動対応の迅速化・適正化」では、一刻も早く、被災地域の状況を把握し、通常の平穏な暮らしを取り戻すことができるよう、「被災状況の早期把握」や「交通インフラなどの早期利用再開」観点に基づき、災害発生時の初動対応をより一層強化する。「被災状況の早期把握」では、防災ヘリの即応体制のほか、衛星やドローンの活用について検討を推進する。「交通インフラなどの早期利用再開」では、鉄道運転再開の早期化には、引き続き地震計の増設や他機関震度の情報の活用などの取組みをさらに推進することが有効であることを確認した。

斉藤大臣指示「施策を可能な限り前倒しで実施」

施策の充実・強化に当たっては、関係省庁や企業なども含めたさらなる連携促進、リスクコミュニケーション、DXを積極的に活用していく方針。なお、斉藤鉄夫大臣はとりまとめを受け、「施策を可能な限り前倒しで実施するとともに、必要な予算要求や制度改正にしっかりと取組むことや既に出水期に入っており、緊張感をもって災害対策に万全を期すこと」という指示を幹部に示した。

国土交通省は2020年7月に、気候変動の影響により、激甚化・頻発化する自然災害などから国民の命と暮らしを守るため、「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト」として施策をとりまとめている。これまで、プロジェクトのPDCAサイクルを回しながら、施策の実行に必要な予算要求や制度改正を行い、プロジェクトを着実に推進するとともに災害対応などを踏まえ、プロジェクトの充実・強化を図り、今年度も引き続きとりまとめた。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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