「橋梁補修が進まないのは、補修費ならびに技術者の不足が大きな要因」をデータで裏付け、やってみたけれど・・・

まず遭った逆質問。畳みかけられ、取材も頓挫

これは私が橋梁補修の技術開発を手掛けているIT会社の社長にインタビューをした時の話だ。

人手不足やDX促進、生産プロセスや維持管理の高度化——あれもこれも?あれよあれよ?とIT系先端技術と建設業界は親和性を高めてきた。

なので、私は油断していた。

「その質問、よく耳にするんですけど、前提のエビデンスってどうなってます?」

質問に入る前置き——「橋梁補修が進まないのは、補修費ならびに技術者の不足が大きな要因」といわれていますけれども——、に先方が反応。業界内の取材では共通認識としてほぼスルーされるこのひと言、畑違いのIT業界はゼロベースでグイグイ精査してくる。それも、にこにこさわやかにだ。にわかにはつまびらかにできない事態だが、今ここで根拠を説明できるとしたら、——あれとあれか。

国土交通省さんの道路メンテナンス年報にあるアンケート結果資料と、NHKさんの調査報道。国交省さんは地方自治体さんへのアンケート結果を社会資本整備審議会の資料として複数アップしている。

NHKさんは「“橋がトンネルが崩れる” 74万のオープンデータを調べると」という特集を公開、「全国道路施設点検データベース」と情報公開請求で得られたデータをもとに、2022年3月時点での対策状況について管理者別に分析を行った結果として主に3点を示し、

  • 国、都道府県、市区町村と、行政の規模が小さくなるにつれ、着手できていない橋の割合が高くなる傾向が見られる(5年を超えて対策に着手できていない橋についても同様の傾向)
  • 都道府県においては、対策ができていない橋の数が多い=対策が進んでいないとは一概に言えず、もともと管理する橋が多い都道府県が対策できていない橋も多い傾向が見られる(5年を超えて対策に着手できていない橋についても同様の傾向)
  • 政令市・市区町村においては、川の多い地形で、もともと管理する橋の数が多かったり、海岸線や雪が多く、塩害などによって橋の老朽化が進みやすかったりする地域の自治体で、対策できていない橋が多い傾向が見られる(5年を超えて対策に着手できていない橋についても同様の傾向)

とする自治体順位の一覧表と、国交省さんの「特に小規模な地方自治体で予算や人員が厳しく、対策が十分進んでいない現状は認識している」というコメントを報じている。

読後、先方はなお続ける。

「なるほどですね。一覧表とかももちろん1つのわかりやすさでは良いとは思うんですけど、もっとこうゴリゴリしたデータっていうか、一見して傾向がつかめる図、例えば日経平均とドル円と日銀保有国債残高を一枚にまとめたみたいなイメージのが僕的にはわかりやすいんですけど、ないですか?」

心でつぶやく、そんなのあったら私も欲しいよ・・・。2人でしばらく検索したものの掘り当てられず、記者が宿題として引き取ることに。

そして取材は頓挫した。

むしろ、生産性の観点からみれば、この時点で取材を打ち切ったほうがよかっただろう・・・。

※文中の図表は、国土交通省資料などをもとにすべて筆者が作成

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たやすくできる未来感はあった

ただ、着手当初は楽しかった。データで裏付けがたやすくできる未来感があったからだ。

アウトプットのイメージもできていて、やることもはっきりしており、インプットするデータの見当もついている。あとは材料(データ)を引っ張ってくるだけで良い。それさえ済めば、エクセルのボタンをクリックするだけで、先方が求めるものはすぐにできる。

見取り図はこうだ。

「橋梁補修が進まないのは、補修費ならびに技術者の不足が大きな要因」ということなら、橋梁補修の進捗と、補修費、技術者数のデータがあればよい。

そして、生産性の視点も加えておけば、先方の納得感もアップするだろう。その理由は2つ。そもそもこの維持管理の一連の事業の主な要素の1つは生産性。そして「橋梁補修が進まないのは、補修費ならびに技術者の不足が大きな要因」は生産性を内包している。だから集めるデータの追加も不要。

整理すると、橋梁維持管理の一連の取り組みのミッションはインフラの安全安心な長寿命化。その実装がメンテナンスサイクルの展開で、今の問題は市町村を中心に修繕が遅れているとされている。修繕が遅れている——、これには2つの側面があり、1つは修繕そのものが遅れていること、2つに修繕したが再劣化して再修繕が必要となりなかなか要修繕数が減らないこと。そしてその原因が補修費不足、技術者不足といわれている。現下では人手不足も加えるべきだろう。

3W1Hで図化してみると——。

原因が補修費不足、技術者不足、人手不足に対して、量平準化や生産性向上を打ち手として、長寿命化修繕計画策定とか、点検支援技術活用促進とか群マネとか諸々の施策が推進されている構図。そして建設業界では生産性革命(i-Construction)で2割生産性を上げて新3K(給料が良い、休暇がとれる、希望が持てる)を実現するとか、ずいぶん前からやっていた。

だから、原因とされている補修費不足、技術者不足、人手不足はつまり投入するリソースで分母、分子のリターンは維持管理の進捗。「橋梁補修が進まない(=維持管理の進捗)のは、補修費ならびに技術者の不足が大きな要因」は分子分母を内包している。分母を減らし分子を増やすと生産性は改善する。

つまり、リソース1単位当たりのリターンが上がる。

逆に分母を増やすってどういう感じか、現場では肌感でよく知っていることだけれど、工程がきつめになってきたときに、間に合わせようとして、どっさり人や資機材を投入すると、収益が急激に圧迫されるあの感じ。できるものは同じ=分子の成果は不変だから、増員増額で分母が増えれば生産性が低下する=付加価値が減る=収益が縮小するあの感じ。

だから通常、分母を増やそう!という判断にはなりにくいし、そもそも人手不足だし予算不足なんだから、技術革新で省人数省コストでさばける数を増やせる手法に置き換えよう!(点検支援技術の活用とか省力施工)、となる。

だが数さえさばけばよいとはならない。分子に橋梁補修を進めることが鎮座しているから、施工品質が大きなカギを握ることとなる。分母で数をさばいても、施工品質が伴わなければ早々に再劣化するから、いつまでたっても要補修橋梁数は減らず、分子の橋梁補修は進捗(再劣化の削減と長寿命化)しないからだ。

そもそも要措置橋梁(Ⅲ・Ⅳ判定)は長くて5年後の次の点検までに修繕することになっているから、時間軸で見れば、このメンテナンスサイクルを回せば、理論的にはⅢ・Ⅳは激減すると考えられる。そして、傷みが進んで修繕費がかさむ、あるいは修繕不能にまで追い詰められて架け替えるしかなくなる(撤去費+新設費)これまでの事後保全状態から、放っておくと傷みにつながる個所を未然に軽微な手入れをすることで安全性を保つ予防保全に転換することになる。そうなると少ない修繕費で長く安全にインフラが使える(長寿命化する)ようになる。

つまり、事業自体の生産性が上がり、税のコスパが上がる。

そして、以前やりくりのマネジメントを取材したときに耳にした。予防保全は、資源とか、エネルギーとか、原材料とか、輸入に頼るそれらのものに多くのお金を吸収される新設とは異なり、既存の資産を生かして少ない補修材料と修繕技術ならびに手間にお金を払うものだから国内・地域でお金が回るし、CO2やごみも少ないからエコ、地域社会にも環境にも持続可能——、節約マネジメントでシュリンクするとか、生産性というと真っ先に人件費削減のイメージを持つ人も多いけれど、予防保全の場合は実は資源エネ・原材料から人への富の移転になるって。

散布図にするとこんなイメージか、きっと。「橋梁補修が進まないのは、補修費ならびに技術者の不足が大きな要因」ということなら、 投入したリソースが多いほどリターンも多くなり右肩上がりとなり、リソースは都道府県>市区町村だろうから、右上側に都道府県、左下側に市区町村が多く位置するだろう。そして生産性が高いほど左上(リソース<<<リターン)、低いとその逆に位置し、1枚の図で傾向がつかめるはずだ。

しかし、政治資金収支報告書のような洗礼が

そして、橋梁補修の進捗と、補修費、技術者数のデータを集める。

データは道路メンテナンス年報、道路統計年報、公務員定数、地方財政状況調査関係資料、工事成績優秀企業認定、国土交通省登録資格、e-Statに公表されているすべて無料のオープンデータを利用。解析もエクセルと、Googleがいずれも無料で提供しているスプレッドシートならびにLooker Studioを使った。

最新の公表年度にばらつきがあるため、今回は橋梁補修の進捗に影響する要因にフォーカスしているから(「橋梁補修が進まないのは、補修費ならびに技術者の不足が大きな要因」)、道路メンテナンス年報で公表されているデータを基準に、橋梁補修費のデータを準備した。公務員の土木技師数は直近公表のもの、工事成績優秀企業認定は直近5年間分(ただし近畿地整は直近3年分しかアップされておらず、沖縄総合事務局はデータのアップはなし)、国土交通省登録資格は2024年公表分を使った。

なぜこんなに多岐にわたったのか。

それは、1つのデータにすべてが収録されてはいないからだ。公表年度が毎年のものもあればそうでないものもあったり、市町村分と都道府県分が表題すらも別のデータに収められていたり——。

さらに、まさかの洗礼。

信じられないが、オープンデータとして活用されることを想定して公表されているはずの国のデータなのに、なぜか政治資金収支報告書の調査で検証作業を著しく困難にさせたデータの公表手法として批判を集めた、PDFや画像で公開されているデータ群も・・・。だから、エクセルやGoogleスプレッドシートにデータを作り変える作業、つまり分析の前準備に想定外の手間を取られた。

元データが違えば、同じエクセルに見えても保存形式が違うなどしてエラーが出るし、同じ保存形式でも例えば文字の後ろに半角スペースが入っているかいないかで——北海道と北海道 では後者に半角スペースが入っているので、関数で北海道(半角スペースなし)で反応するのは前者のみ——下準備の基本のき、自治体を団体コードで紐づけるにしても、これでは関数で期待した通りの働きをしてくれず、結果としてこの種の紐づけエラーが続発。

Google Looker Studioもとても便利なツールだが、エクセルをスプレッドシートに変換して、例えばGoogle地図に反映させるにも、中国の同じ地名のエリアが反応するとか(同じセル内に都道府県を入れることでエラー解消)、手戻りの嵐だった。ただこのGoogle Looker Studioは機能が充実しているので、複数の現場を管理するとか、あるいは1現場を複数の業者でやり遂げるとかいう場合に、リアルタイムで進捗と利益率などを把握するなどには重宝しそうだった。

手始めにOSINT(Open-Source Intelligence)的にやってみようと決めていたので利用しなかったが、財団が有料で販売している全国道路施設点検データベース・xROADを利用すれば、有用な詳細データが手間なく手に入ったかもしれないし、今はやりのバックオフィスのDXみたいなサービスを利用すれば、形式が混在したデータをドローしてアップするだけで、目当ての図化ができたのかもしれない。

ただ、あくまで取材の前準備だったので、選択肢は無料でできる手法しかない。

ダメだ。でも、これはあの言説の裏付けか?

やっとマスターデータができた。あとはリターンを計算して、散布図をクリックすればゴールできるはずだった。

ん?

なにこれ?

嫌な予感がする・・・。

リターンとして、管理橋梁に占める要措置橋梁の割合が時間の経過とともに(1巡目(2014-2018)と2巡目中間年度末の2021年度末時点で比較。無料の公表データ利用ではこれが限界。2024年度に2巡目(2019-2023)のまとめが発表されることを期待)どのくらい減ったのか(1巡目割合マイナス2巡目中間年度末割合のポイント差)関数を入れてクリックすると・・・。

言説からすれば、自治体の規模が小さくなるとポイントの改善幅も小さくなるものとみられる。だが・・・、地方自治体で、特に市区町村でむしろ改善傾向が強くなっている。

言説の蓋然性は乏しかったのか・・・。

1巡目(2014-2018年度)要措置橋梁割合 2巡目中間年度(2019年度)末要措置橋梁割合 要措置橋梁割合比較(1巡目ー2巡目中間年度末) 管理橋梁数
国土交通省 9.2% 10.9% 1.7ポイント悪化 37,867橋
高速道路会社 11.2% 12.0% 0.9ポイント悪化 23,507橋
都道府県 12.0% 10.4% 1.6ポイント改善 137,894橋
市区町村 10.8% 8.7% 2.2ポイント改善 520,876橋

地域性があって、どこか外れ値みたいに大きな数値の地域があるとかなのか?

管理者別に都道府県エリアごとに、管理橋梁に占める要措置橋梁の割合の1巡目と2巡目中間年度末のポイント差を見てみると、NEXCO九州管内の福岡県内・佐賀県内・鹿児島県内・沖縄県内エリア、都道府県の埼玉県・東京都・新潟県・鳥取県・大分県、市区町村の鹿児島県内エリアで改善傾向が強い。

管理橋梁に占める要措置橋梁の割合を比較すると(1巡目の要措置橋梁割合-2巡目中間年度末の要措置橋梁割合)単位ポイント

都道府県 国土交通省 高速道路会社 都道府県 市区町村 全管理者平均
北海道 0.7P 0.1P 0.5P 3.6P 1.2P
青森県 1.0P 2.3P 5.3P 1.4P 2.5P
岩手県 3.5P -1.0P -1.1P 1.2P 0.7P
宮城県 1.6P 3.1P -5.8P 0.4P -0.2P
秋田県 1.5P -1.4P -0.4P 2.1P 0.5P
山形県 -0.4P 0.3P -7.8P 0.2P -1.9P
福島県 2.5P 2.4P -4.7P 2.9P 0.8P
茨城県 -3.0P -0.5P -0.1P 1.2P -0.6P
栃木県 -4.7P 0.4P 0.1P 0.3P -1.0P
群馬県 -2.0P -3.5P 2.0P 1.1P -0.6P
埼玉県 -3.8P -3.1P 6.8P 1.3P 0.3P
千葉県 -6.2P 0.0P -2.6P 2.1P -1.7P
東京都 -10.7P -1.2P 9.8P 3.0P 0.2P
神奈川県 -13.0P 2.1P 0.8P 1.2P -2.2P
新潟県 -1.4P -3.0P 9.9P 1.2P 1.7P
富山県 -0.8P -6.0P 0.3P 0.4P -1.5P
石川県 -0.2P -24.1P 5.6P 2.4P -4.1P
福井県 -3.3P -3.9P 0.3P 2.7P -1.0P
山梨県 -2.6P -7.3P 1.9P 1.3P -1.7P
長野県 -3.4P -5.2P -1.1P 0.9P -2.2P
岐阜県 3.8P 0.4P 2.0P 1.5P 1.9P
静岡県 2.6P 1.0P 3.1P 2.2P 2.2P
愛知県 -0.2P 3.4P 2.6P 1.8P 1.9P
三重県 2.8P 0.7P 1.3P 2.7P 1.9P
滋賀県 -1.9P 1.5P 2.0P 2.2P 0.9P
京都府 0.6P 0.5P 2.2P 1.2P 1.1P
大阪府 0.5P -2.4P 4.7P 2.4P 1.3P
兵庫県 -0.7P -5.0P 3.3P 4.1P 0.4P
奈良県 -0.9P -0.3P 0.8P 2.3P 0.5P
和歌山県 -0.6P -4.9P 1.2P 3.8P -0.1P
鳥取県 0.5P 4.2P 10.7P 2.7P 4.5P
島根県 -1.5P -8.4P 0.2P 0.5P -2.3P
岡山県 0.0P -8.2P -0.4P 0.9P -1.9P
広島県 -1.3P -9.2P 1.1P 1.6P -1.9P
山口県 -3.0P -11.7P 3.0P 1.4P -2.6P
徳島県 -3.1P 0.9P 1.4P 2.3P 0.4P
香川県 1.1P 0.6P -2.0P 2.6P 0.6P
愛媛県 -0.8P 0.9P 5.9P 2.7P 2.2P
高知県 1.3P 0.0P 1.5P 1.8P 1.2P
福岡県 -3.8P 9.6P -0.6P 2.0P 1.8P
佐賀県 -7.7P 9.5P 0.8P 1.1P 0.9P
長崎県 -7.6P 2.4P 0.0P 3.1P -0.5P
熊本県 -3.8P 0.6P -1.2P 1.4P -0.7P
大分県 -5.0P 2.6P 6.7P 4.6P 2.3P
宮崎県 -2.2P -0.2P 4.0P 2.4P 1.0P
鹿児島県 -5.5P 12.8P 1.0P 6.7P 3.7P
沖縄県 2.0P 7.5P 0.1P 2.0P 2.9P
平均 -1.7P -0.9P 1.6P 2.2P 0.3P
中央値 -0.9P 0.1P 1.1P 1.1P 1.0P
最頻値 -3.8P 0.8Pと2.0P 0P 0P

しかも・・・。都道府県と市区町村は中央値が同じ1.1ポイントなのに、最頻値が都道府県は0.8ポイントと2.0ポイント、市区町村は0ポイント。都道府県、市区町村とも0ポイント近辺を頂点とする山型のヒストグラムに。

管理橋梁に占める要措置橋梁の割合が1巡目と2巡目中間年度末で変化がない(改善も悪化もない)かほとんど変化がない市区町村が多いことにより(約3分の1の市区町村が1巡目の割合から2巡目中間年度末の割合を引いた差分が-1~+1ポイント内に収まる)、事業の効率や効果が数字の上からとらえにくくなっている。

当然といえば当然だが、管理橋梁数が多い自治体で、1巡目の投入橋梁修繕費(2014-2018年度の合計)も多い傾向がある。投入橋梁修繕費が多いほど管理橋梁に占める要措置橋梁の割合が1巡目と2巡目中間年度末で変化がないか変化が少ない傾向が強くなっている。未着手橋梁数が多いと管理橋梁に占める要措置橋梁の割合が1巡目と2巡目中間年度末で変化がないか変化が少ない傾向が強くなっている。そして管理橋梁数が多いと土木技師定数も多い傾向となっている。

取材でよく耳にする言説をもう1つ思い出す。

これが「予算に合わせた(ⅡとⅢの)調整」——ということなのか・・・。市区町村で予算に合わせた調整の度合いが強い傾向が出ているということだろうか・・・。昨年に公表された社会資本整備審議会(2023年10月開催)の議事録にも、このⅡとⅢの調整について発言がある。

時間の経過とともに改善するイメージを持っていたため、リターン(橋梁補修の進捗)がマイナスやゼロを想定していなかった。

当初の想定とは逆に、近似線は右肩下がりのマイナス、そして管理橋梁数の少ない自治体さんほど管理橋梁全数に占める1橋の割合が高まることも影響してか、20ポイント超悪化から70ポイント超改善まで振れ幅が大きいものの、生産性が高いエリアには小規模自治体が占めることとなった。

市区町村はその規模の幅がとても広いので、都道府県でみてみると言説通りの傾向となるだろうか・・・。

投入橋梁修繕費(2014-2018年度の合計)が多いと、あるいは土木技師定員数が多いと、管理橋梁に占める要措置橋梁の割合が1巡目より2巡目中間年度末が改善する傾向がある(かろうじて近似線は右肩上がり)。言説からは外れていないといえそうだ。左上の生産性の高いエリアにも複数の自治体が。

そして、市区町村と都道府県を比較すると、管理橋梁数が同程度の自治体でも、1巡目に投入した橋梁修繕費が数倍から数十倍の開きが出ている(管理橋梁の橋長や種別が違うから一概な比較はできないけれど・・・)。

つまり、管理橋梁数が多い市区町村ほど、同程度の都道府県に比べて、その数に見合う予算確保がむつかしくて(急に増額できないから)、修繕が追い付いていない?から、予算に合わせて判定区分ⅡとⅢを調整?して、橋梁補修の進捗が遅れている?とみると、ある程度言説に寄ってくる?

マスターデータで数値の関連が強く出る組み合わせもある。管理橋梁数が多いと要措置橋梁数も多く措置未着手橋梁数も多い。

工事成績優秀企業の点数を直近5年度分集計してみたものの…

最後に受注者側の傾向との関連はどうか。国土交通省登録資格の保有者数を活用しようかとも思ったが、資格を保有していても稼働していないケースなどは追いきれない。建設業者数も同様だ。

稼働していて品質も捕捉できるデータとして国土交通省の工事成績優秀企業の点数を直近5年度分集計した。

工事成績優秀企業は北海道開発局や地方整備局などの地方ごとに毎年公表している。工事成績優秀企業の選定は、まず、管内で過去2カ年度に完成した土木工事の工事成績評定結果をもとに工事成績評定点の平均点(小数点第一位を四捨五入)を算出し、企業の工事成績評定結果のランキングを作成(過去2カ年に3件以上、所定の11工種の土木工事を受注した業者に限る)する。この工事成績評定が80点以上の企業を対象に、優良工事等選定委員会が工事成績優秀企業としてふさわしい企業を認定する。所定の11工種は、1.一般土木工事、2.アスファルト舗装工事、3.鋼橋上部工事、4.セメント・コンクリート舗装工事、5.プレストレスト・コンクリート工事、6.法面処理工事、7.河川しゅんせつ工事、8.グラウト工事、9.杭打工事、10.維持修繕工事、11.橋梁補修工事。

例えばA社の本社が東京にあり、北陸支店があたった工事が北陸地方整備局管内で工事成績優秀企業に認定されると、本社が認定対象となる。よって全国のいくつかの地方で80点以上で工事成績優秀企業に認定されることもあり、1カ年度で800点超となることも理論的にはある。

今回集計したのは直近5年度分。ただ近畿地整は直近3年度分のみのホームページアップとなっているほか、沖縄総合事務局はホームページに常設アップがなく、これらは5年度分はそろっていない。

工事優良認定企業は1416社で、全国1741市区町村のうち556市区町村に分布。都道府県でみると、沖縄総合事務局分のデータがないこともあり、沖縄県以外の全都道府県に分布。全社が本社所在地の地整から工事優良企業の認定を受けており、毎年度認定されると5年度で400余点となる。複数の地整から工事優良企業の認定を受けている企業は400点未満では数社にとどまる。

そこで、点数の集計と、管理橋梁に占める要措置橋梁の割合の1巡目ー2巡目中間年度末の差分の関係性を見ると、市区町村単位では差分が0や0前後の自治体が多いためかほとんど傾向はとらえられない。都道府県単位でもはっきりとした傾向はつかみきれない。

工事優良認定企業の直近5年度分の請負工事成績評定平均点の都道府県別集計(近畿地整は直近3年分のみ、沖縄総合事務局はなし)
請負工事成績評定平均点合計
総計 330000
北海道 40262
東京都 28852
福岡県 19950
新潟県 17263
熊本県 17026
鹿児島県 12435
宮崎県 9848
岐阜県 8510
秋田県 8431
兵庫県 8321
広島県 8064
佐賀県 7522
長野県 7298
大分県 7100
島根県 6910
宮城県 6577
静岡県 6563
富山県 6093
岡山県 5958
鳥取県 5947
石川県 5926
山形県 5604
京都府 5520
長崎県 5396
茨城県 5309
福島県 5065
愛知県 5060
大阪府 4931
青森県 4819
福井県 4779
岩手県 4410
千葉県 3779
埼玉県 3612
和歌山県 3476
三重県 3454
山口県 3143
奈良県 3097
滋賀県 2619
高知県 2560
群馬県 2171
神奈川県 1529
徳島県 1442
栃木県 1366
愛媛県 882
山梨県 561
香川県 560
工事優良認定企業の直近5年度分の請負工事成績評定平均点の企業別集計(409点超の上位と408点以下で複数の地整から認定されている企業。近畿地整は直近3年分のみ、沖縄総合事務局はなし)
総計 北海道開発局 東北地整 関東地整 北陸地整 中部地整 近畿地整 中国地整 四国地整 九州地整
総計 330000 40580 42942 25231 33761 26986 35021 34857 6410 84212
大有建設株式会社 1527 400 320 320 165 322
東亜道路工業株式会社 1451 160 321 240 163 406 161
フジタ道路株式会社 1376 240 81 160 250 322 323
日本道路株式会社 1291 162 80 320 246 80 403
株式会社安部日鋼工業 1212 321 82 320 160 329
川田建設株式会社 1208 242 162 160 242 160 242
株式会社NIPPO 1204 402 160 241 401
株式会社ピーエス三菱 1132 80 241 160 168 160 160 163
株式会社横河ブリッジ 1130 243 322 80 242 243
オリエンタル白石株式会社 1128 322 80 80 81 160 405
株式会社日本ピーエス 1053 240 160 246 244 163
大成ロテック株式会社 1050 161 80 240 245 162 162
株式会社佐藤渡辺 1042 401 321 80 80 160
株式会社ガイアート 1041 160 160 240 160 241 80
株式会社IHIインフラ建設 967 240 404 82 81 160
世紀東急工業株式会社 965 81 401 321 162
ショーボンド建設株式会社 892 322 80 247 163 80
株式会社新井組 888 240 323 80 245
日特建設株式会社 881 400 241 240
福田道路株式会社 815 81 402 80 252
大林道路株式会社 727 80 241 165 80 161
ライト工業株式会社 725 160 160 245 160
極東興和株式会社 725 80 162 403 80
北川ヒューテック株式会社 724 400 244 80
株式会社植木組 722 320 402
株式会社森組(大阪市中央区) 722 240 240 160 82
会津土建株式会社 650 243 407
戸田道路株式会社 650 241 80 248 81
松尾建設株式会社 646 81 80 162 323
前田道路株式会社 646 162 160 324
日本ファブテック株式会社 646 404 80 81 81
昭和コンクリート⼯業株式会社 644 161 160 323
岩田地崎建設株式会社 642 400 80 162
株式会社福田組 570 407 163
奥村組土木興業株式会社 567 161 163 243
清水建設株式会社 566 81 322 82 81
大日本土木株式会社 564 161 240 163
JFEエンジニアリング株式会社 562 402 160
株式会社三浦組 562 562
穴澤建設株式会社 561 400 161
日瀝道路株式会社 560 160 400
株式会社富士ピー・エス 488 81 407
株式会社池田土木 487 487
株式会社加藤建設(海部郡蟹江町) 485 83 402
株式会社加賀田組 484 80 404
前田建設工業株式会社 484 322 162
戸田建設株式会社 483 243 240
川田工業株式会社(南砺市) 483 81 80 80 80 162
三井住友建設株式会社 481 80 160 80 80 81
鹿島道路株式会社 481 161 80 80 160
大旺新洋株式会社 480 240 240
松山建設株式会社 413 413
株式会社駒井ハルテック 412 248 164
岐建株式会社 409 160 249
株式会社鴻治組 409 409
松鶴建設株式会社 409 409
徳澤建設株式会社 409 409
日本ハイウエイ・サービス株式会社 406 80 80 246
株式会社ノバック 405 163 80 80 82
株式会社本間組 404 162 242
東亜建設工業株式会社 403 161 242
高田機工株式会社 401 240 80 81
みらい建設工業株式会社 400 80 320
⼤成建設株式会社 328 245 83
株式会社安藤・間 326 162 82 82
常盤工業株式会社 325 245 80
株式会社横河NSエンジニアリング 324 162 162
大勝建設株式会社(大阪市) 323 160 163
株式会社竹中道路 322 82 240
りんかい日産建設株式会社 323 241 82
石黒建設株式会社 322 160 162
株式会社鹿熊組 321 160 161
株式会社森本組 321 160 161
三井住建道路株式会社 320 240 80
株式会社大林組 247 84 80 83
株式会社IHIインフラシステム 243 81 162
名工建設株式会社 242 80 162
三井住友建設鉄構エンジニアリング株式会社 241 80 161
若築建設株式会社 241 160 81
東洋建設株式会社 240 160 80
株式会社吉⽥組(姫路市) 162 81 81
ドーピー建設工業株式会社 161 80 81
宮地エンジニアリング株式会社 160 80 80
佐田建設株式会社 160 80 80
地崎道路株式会社 160 80 80
東興ジオテック株式会社 160 80 80

その図示は本当に必要か?

「橋梁補修が進まないのは、補修費ならびに技術者の不足が大きな要因」について、先方の求めるゴリゴリしたデータによる図示はできなかった。

2023年度までの2巡目のまとめ資料が公表されるのをひとまず待つこととなった。

ただ、あまりにも作業量が膨らみ、生産性は著しく悪化したため、図示が必要かどうかの是非をまずは詰めたいと思う。

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  • 「橋梁補修が進まないのは、補修費ならびに技術者の不足が大きな要因」をデータで裏付け、やってみたけれど・・・
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