政府はこのほど、財政支出約39兆円、事業規模71.6兆円程度を見込む「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を閣議決定した。岸田政権発足後2度目の経済対策となる。
「防災・減災、国土強靱化の推進と国民の安全・安心の確保」(財政支出10.6兆円)、「物価高騰・賃上げへの取組み」(同12.2兆円)、「新しい資本主義の加速」(同6.7兆円)、「円安を活かした地域の”稼ぐ力”の回復・強化」(同4.8兆円)、「今後への備え」(同4.7兆円)と経済再生に向けた政策を4本柱で構成、財源の裏付けとなる2020年度第2次補正予算案は総額約29.1兆円を見込み、現在会期中の早期成立を目指す。
経済対策としては、直接的な実質GDPの押し上げ効果を4.6%と試算。また、電気・ガス料金や燃料油価格などの負担軽減策を通じ、消費者物価は1.2%程度以上の抑制が見込まれる。
岸田文雄首相は、経済対策を決定した後の記者会見で「物価対策と景気対策を一体として行い、国民の暮らし、雇用、事業を守るとともに、未来に向けて経済を強くしていく」と語っている。
強靭化基本計画を改定へ
ここから、建設関係の政策の中身を紹介していく。気候変動の影響などにより、2022年も線状降水帯による豪雨や記録的大雨が相次ぐなど、自然災害の激甚化・頻発化が顕著であった。これまでの「防災・減災、国土強靱化」の取組みにより、被害が防止・抑制された地域もあり、着実に効果を発揮しつつある一方、激しさを増す自然災害やインフラ老朽化などの国家の危機に打ち勝ち、国民の生命・財産・暮らしを守ることの重要性を説いている。そこで最近の資材価格の高騰なども踏まえ、必要・十分な予算を確保し、自助・共助・公助を適切に組合わせ、ハード・ソフト一体となった取組みを強力に推進する。
また、中長期的かつ明確な見通しの下、継続的・安定的に国土強靱化を進めていくことの重要性なども勘案して、更なる取組みを推進するための次期基本計画の検討を進める。引き続き、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき、流域治水などの人命・財産の被害を防止・最小化するための取組みや、災害に強い交通ネットワーク・ライフラインの構築などの経済・国民生活を支えるための取組みを推進するとともに、予防保全の考え方に基づく老朽化対策を進める。
賃上げ支援、資材価格高騰の価格転嫁も
また、インフラ・防災分野におけるDXを推進し、災害関係情報の予測・収集・集積・伝達、現地対応などでのデジタル技術の活用を加速化する。
賃上げの促進の分野では、2022年度から抜本的に拡充した賃上げ促進税制の活用促進、賃上げを行った企業の優先的な政府調達などに加え、中堅・中小企業・小規模事業者における事業再構築・生産性向上などと一体的に行う賃金の引上げへの支援を大幅に拡充する。また、公共事業について、資材価格の高騰を踏まえ、適切な価格転嫁が進むよう促した上で、必要な事業量を確保し、社会資本整備を着実に進めるとともに、建設会社の適正な利潤の確保と建設労働者の賃上げにつなげていく。
地域活性化では、持続可能性と利便性の高い地域公共交通ネットワークの再構築に向けた取組みを支援するとともに、生産性向上などに資するインフラの戦略的・計画的な整備に取組むほか、コンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくりや都市再生、市街地再開発などにより条件が不利な地域の振興を推進する。
「人への投資の強化と労働移動の円滑化」では、建設キャリアアップシステム(CCUS)を通じた技能者のスキルアップや処遇改善に取組む方針も示した。
また、DXの分野では、新しい付加価値を生み出す源泉であり、社会的課題を解決する鍵であることから、DX投資促進に向けた政策を強力に推進する方針を示した。デジタル田園都市国家構想を推進するため、「デジタル田園都市国家構想交付金」を創設し、民間事業者の施設整備も支援対象とするなど支援内容を拡充する。あわせて、スーパーシティ構想などの推進を図るほか、光ファイバーや5G基地局などのインフラ整備などを進める。さらに、新たな「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を2022年12月に策定する。