即戦力として面接なく採用
以前私の職場(発注者支援業務)に、即戦力として面接なしで採用されたAさんという方がいました。
Aさんは、大手建設コンサルタントで現場監督をしていた40代の方で、技術士(鋼構造及びコンクリート)や1級土木施工管理技士、コンクリート診断士など多くの資格を保有していました。
会社としては、コンサルタント業務に必要な技術士を取得していたため、履歴書だけで採用したそうです。むしろ、なぜ発注者支援業務に?と私は思っていました。
即戦力と判断した会社は、すぐにAさんを現場技術員として現場へ派遣しました。
発注者側も有資格者、現場経験も豊富ということで、快く受け入れてくれました。Aさんは難工事の経験もあり、様々な人から相談されることもしばしばあったようです。
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「こんな退屈なことをすることではない」
ある日、Aさんは急に「技術士の仕事はこんな退屈なことをすることではない」と管理技術者に報告したそうです。
そのように報告した背景には、現場技術員が数量計算や図面など、本来発注者がしなければならないことを受注者に丸投げをしていたこと、施工者みたいに自分で計画を立てて施工ができないこと、提案しても会社が反応しないこと、打っても響かない会社であったことが原因だったみたいです。
会社としては、技術士の資格を持つAさんを手放すわけにはいきません。
必死に引き留める会社とAさんとの溝
必死に引き留める策を検討した末に、支店の役職ポストの提案を行いました。給与の増額や福利厚生面の待遇改善などを含め、会社としては最大限の提示を行いました。
しかし、Aさんの希望は賃金や福利厚生の待遇改善ではなく、自分の技術を最大限に発揮することでした。設計したコンサルタントから図面のチェックをしたり、図面修正をしたり、お金を弾いたりをしたいと申し出たそうです。
その後、Aさんは積算部署へ異動することになりました。
異動してからも不満が爆発
念願の積算部署へ異動したAさんは、要望通りの業務をやっていました。しかし、それも数か月すると「設計コンサルのミスが多すぎる」と管理技術者に報告したそうです。
設計コンサルのミスは、積算業務が尻拭いをしており、管理技術者がそのことを伝えると、Aさんは激怒したのち支店長に直談判したそうです。
支店長もそのことは知っており、黙認状態でした。
そういったことが積み重なり、会社の上層部はこれ以上Aさんが会社の不利益になってはいけないと考え、Aさんを退職させる案を考えました。
会社の不利益になると判断
その後、会社の就業規則が大きく変更され、会社の不利益になると判断された社員については取締役会の決議により退職させることができると改定されたため、改定後すぐにAさんは取締役会にかけられ、やむなく退職となりました。
Aさんは退職後、他の会社で経験を積み、自分で会社を立ち上げ、今では会社への技術指導や資格取得の指導などを行っているそうです。
――私の会社は発注者OBが大半を占めているため、新しいことに挑戦しない人ばかりです。国はICTなどの推進を進めていますが、いまだに紙媒体でのやり取りが多い、ザ・役所です。もちろん、発注者支援業務でもOBがいない会社もありますし、最先端をいっている会社もあります。
Aさんが退職した後、会社の就業規則はもとに戻り、Aさんがやってきたことはなかったことに、いや、いなかったことのようになっています。今後はこういったことがないようにしてほしいと切に願います。