フードロッカーに鍵をかけてクマをシャットアウト
最近、クマ被害のニュースをよく見かけます。怖いですよね。サーカスでライオンに口輪はしていませんが、クマには口輪がされています。これは、クマが危険だからです。ライオンには高い知能と社会性があり、ライオンを子どもの頃から育てると、育ててくれた人間には「反抗してはいけないし、勝てない」と学ぶそうです。それを成獣になっても記憶しているそうです。
ところがクマは子どもから育てても成長すると、育ててくれた恩も勝てなかったことも忘れて突然、凶暴性を発揮します。危険なので口輪が必要なのだそうです。
北海道では、冬眠から覚めたヒグマを駆除する春クマ狩りがあり、クマは人間を恐れていましたが、1989年度をもって廃止しました。クマは人間を恐れなくなり、人間の食べ物のおいしさを覚えると、人間に接近してくるようになります。人間になれたクマは大変危険なようです。クマの生息地域に食物を放置することは厳禁です。
ヒグマが高密度に生息する知床では「食糧管理はヒグマとの事故を避ける重要ポイント」と表明しています。テント内に食べ物や匂いのついた食器やゴミを持ち込むとヒグマを誘引してしまう恐れがあるため、知床連山の各テントサイトでは、1~2基ずつフードロッカーを設置しています。ヒグマが開けられないような仕組みでつくられているステンレス製の食料保管庫です。鍵をかけることができ、クマが開けることはできません。鍵が人間とクマの命を守ります。
ジェットコースター修理中は電源小屋そのものに鍵をかける
ジェットコースターの点検中にジェットコースターが動いてしまう事故は定期的に発生しています。ある遊園地では、別の従業員が誤って車両を動かしたことが原因で、点検作業をしていた従業員が車両とレールの間に挟まれて死亡しました。この事故を受け、「ロックアウトシステム」が導入されました。ロックアウトシステムは、作業員が機械の電源スイッチのカバーに鍵をかけ、第三者が操作できないようにする仕組みだそうです。
さらに、「うちは事故を起こしません」とおっしゃっている遊園地では、この電源スイッチがある建物そのものにも鍵をかけ、その鍵を作業員が持ったままで作業をするそうです。安全については二重、三重の措置で、やりすぎるということはありません。
マンションの購入者に対する建築業者の占有回収請求も鍵がポイント
建築業界の実務においても、鍵は極めて重要な意味を持ちます。
マンション建築業者が建築代金の支払いを担保するために施主からマンションの鍵や登記に必要な書類を留置する場合があります。
建築業者Xは、マンションの完成にあたり分譲建物(総戸数33戸)のうち11戸の各3本の鍵と所有権移転に必要な売渡証書、登記承諾書、資格証明書、印鑑証明書を施主Aから受領しました。
その後、AはXに対して「購入希望者を物件に案内するために11戸のうち7戸の鍵を貸してほしい」と依頼し、Xは各1本の鍵を貸与しました。
そして、Aは借りた鍵を販売代理店Bに渡しましたが、Bは必要書類を「偽造して」Bの関連会社名義で所有権保存登記をしました。さらに、BはYら7名に各室を販売し、所有権移転登記まで済ませました。
Yらに所有権移転登記がなされていることを知ったXは、各室の鍵を取り替えたうえで、弁護士名義で「当住戸はXが留置・占有しているものであるので許可なく立入りを禁ずる」旨の告示書を貼付しました。
しかし、購入者であるYらはXが設置した鍵をさらに取り替えて、各室に入居しました。
Xは、Yらに対し、占有権に基づく本件各室の返還(占有回収)を求めて提訴しました。
【判決】鍵を貸しただけで「占有権」は失われるのか?
一審の横浜地裁は、「Xの請求は信義則に反し許されない」として請求を棄却しました。Xは控訴しました。そして高等裁判所もまたXの控訴を棄却しました。
判決の要旨としては、XはAを信頼し、各室の鍵の各1本を交付してしまったことによって、各室に対する独占的な占有を失ったと認定されました。留置権は、占有がその成立要件であるとともに、存続要件でもあります。
一方で、YらはXに留置権があることを知らずに各室を購入し、その代金も支払って所有権を取得しています。そのため、Yらは所有権に基づいて各室の鍵を取り替えて入居したので、Xが平成11年8月末ごろに取得した新たな占有権(※鍵の取り替え)に基づいて占有回収請求をしても、これによってYらの占有を転覆させるのは信義則上相当でない、と結論付けられました。(平成14年2月5日 東京高裁)
この件は、販売代理業者Bが登記必要書類を偽造した特殊な例です。判決の要旨に「XはAを信頼し」とあります。Aは、信頼に足り得る人物だったと思われます。しかし、販売代理業者Bの悪質さを見抜けませんでした。その後、Aは販売代理店Bの代表者らを私文書偽造等及び業務上横領の罪で告訴しています。
鍵を保管することによって建物に対する留置権を行使する場合に、鍵の管理には万全の注意が必要だという判例になっています。
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