「意匠系の古民家再生業者」は嫌いだ!曳家職人からの警告

「意匠系の古民家再生業者」は嫌いだ!曳家職人からの警告

「意匠系の古民家再生業者」は嫌いだ!曳家職人からの警告

曳家職人とは?曳家のライバルは、大工と工務店?

建設業界でも「曳家」という言葉を知らない方が増えています。曳家とは、お城や旧首相官邸、古民家など保存したい建物を、解体せずにそのまま動かす技術。家を曳く(動かす)だけでなく、地震で変形した建物や、地盤沈下した家屋の修復も手掛けます。

曳家の技術が必要とされる代表的な現場は、古民家修復再生の現場ですが、曳家の最大のライバル業者は、実は同業の曳家職人ではなく、大工さんです。「修復するより建て替えた方が安いですよ」――大工さんは、よほどのマニアでない限り、「古民家修復再生」よりも「新築」を選びたがります。新築案件のほうが、自分のペースで仕事を進めることができ、売上も大きくなるのだから当然です。

しかし最近は、にわか業者とも言うべき「意匠系古民家再生業者」も増えてきました。大手ハウスメーカーとの差別化のために、「古民家再生」を謳っている地方の工務店、ちょっとラジオCMを流しているような地方の工務店などが目立ちます。そして、こうした工務店、古民家再生業者の中には、誤った方法で「古民家再生」を行っている業者が少なくありません。


「意匠系古民家再生業者」の間違った施工方法

「安く仕上げたい」と考える工務店や設計者は、簡単な不陸調整(建物が沈下しているのを直すこと)を、大工工事の一環として、大工さんに依頼します。そして、こういう工務店で手間請けをしている大工さんの中には、厳しい日数で施工をやりくりさせられている方も少なくありません。

そのため、丁寧な刻みや金輪継ぎ(手刻みをする大工さんなら出来て当り前の、柱の根継ぎ技術)なんかできるはずもなく、そもそも技術的に金輪継ぎを出来ない大工さんもいらっしゃいます。

床下で根腐りが起っている状態

根継ぎが出来る環境を作るため、柱を専用の金具で掴んで持ち揚げる

根継ぎの一種「金輪継ぎ」

当り前の話ですが、家の荷重の9割は柱が負担しており、古民家再生で柱を入れ換えるのはなかなか面倒な工程が発生します。そこで、本格派では無い工務店などに、「白蟻や腐食被害で傷んでいる柱の根継ぎ」を依頼すると、柱の両側に1本2,000円程度の柱を抱かせて、それを12ミリのボルトで何か所か縫うことで「補強しました!」と平気な顔をして言っている、工務店もあります。

安い工事をしている大工さんも本心では、「曳家を呼んで良い工事を出来る環境を作って欲しい」と考えています。しかし、さわやかな営業マンは、お施主さんに「大丈夫ですよ!うちに任せてくれたら何とかします!」と耳にチョコレートのように甘い言葉を囁きます。

たしかに、安さを売りにするリフォーム会社は、エンドユーザーの選択肢として存在しても良いかもしれません。ただ、その多くは「化粧直し」であって、安心して住めるように構造に手を入れて、構造と基礎をきちんと直すことを考えていない場合がままあります。


大震災を経験した21世紀の古民家再生技術とは?

家は風情のある建物のほうが良いですが、まずは安心して眠ることの出来る場所であるべきです。

柱の上には梁や桁があり、その上に屋根があります。これらを支えるためには、柱は「あるべき場所で」きちんと荷重を受けなくてなりません。そして、その柱を抜き替える場合、復元する際にきちんとその柱が上部の荷重を受けられるように、一旦ジャッキで持ち揚げておいて、柱を入れなければなりません。

大きな梁をむき出しにして、壁を白いクロスに張り替えて、ほら、オシャレでしょう?と言うような1970年代の古民家再生を、東日本大震災や熊本地震を経験した日本で今も続けているはどうなのか、と思わざるを得ません。

「大きな梁が入っていますから、この壁を取り省いても大丈夫ですよ。そうすればリビングが広くなりますよ」――壁を取り省いた分の荷重はどこが余分に負担するのでしょうか?複数の柱で分け合っていた上部構造の負担を、1本の柱に負わせることで地盤沈下は起きないのでしょうか?

どんなに立派な家を建てても、地盤が悪ければ家は沈下します。上部構造のバランスが悪いと地盤に負担をかけます。

そして古民家の場合、「昔の技術は素晴らしかった」と無条件に信じるべきではありません。昔の大工さんの中にも、デザイン優先の方、下手な職人もいたことを知っておくべきです。

それでもなお、古民家を再生したいと考える場合、見た目だけはなく21世紀の技術を使って、その建物の良さを本当の意味でリフォームしてくれる業者を選ぶべきでしょう。

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曳家岡本の二代目。日本屈指の曳家職人。テレビ出演は「真相報道バンキシャ」「心ゆさぶれ先輩rock you」「ウェークアップぷらす」など多数。漫画化もされており、雑誌「週刊漫画Times」で連載中の「解体屋ゲン」にもセミレギュラーで実名登場。
自分では「日本一小心者な曳家」だと思っているが、ある建築家からは「蚤の心臓」と呼ばれている。しかし、自分が凄いのではなく、かつて昭和南海大地震や伊勢湾台風から復興するための技術として栄えた高知県(土佐派の曳家)の技術が自分の身体に残っているだけである。
東日本大震災の直後に千葉県浦安市対策本部の招聘されて上京。近年は全国の社寺・古民家修復を中心に手掛けている。
曳家岡本HP ⇒ http://hikiyaokamoto.com
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