「女は役に立たない」建設現場に渦巻く男性作業員の建前と本音
建設現場の朝は早い。作業現場が遠ければ、早朝からの移動も仕事の内となる。そして夏は暑い、冬は寒い中での過酷な労働条件を強いられる。
20〜30㎏の重い道具を運ぶ事はざらであり、時には100㎏以上の資材を数人の現場作業員で運ぶ事もある。
グラビアアイドルを女性の仕事と位置づけるなら、建設現場の仕事は男性の職場といえるだろう。
だが、建設現場で時折みかける女性作業員。力仕事の多い職場で、非力な女性がなんの役に立つのだろう?――この疑問は工事現場で働く男性たちが、最初に思う本音であり事実である。建設業に携わる女性技術者や女性技能者のことを「けんせつ小町」と呼ばせようとする、日建連のプロモーションについても、実際の現場の反応は冷ややかだ。
「6K」の建設現場に増える女性作業員に怒り
建設現場の環境は最近「6K」とも呼ばれている。「きつい」「汚い」「危険」の3Kに、「給料が安い」「休暇が少ない」「カッコ悪い」が加わって6Kだ。しかし、そんな悪条件の職場なのに、なぜか女性作業員の数が増えているいう。
私も建設現場で長年働いてきた。もちろん圧倒的な男性の職場である。たまにみかける女性作業員はといえば、図面を片手にサイズの合わないぶかぶかのヘルメットをかぶり、汚れひとつない作業着姿で施工状況を確認している。いわゆる現場監督的な立場である。
といっても、まだ見習いに近く、男性現場監督の補佐的な役割だ。そんな女性の現場監督をみていると、こっちは汗水流して働いてるのに、エアコンの効いた事務所でのんきに楽な仕事してんな!と、やり場のない怒りの感情を抱いたものだ。
重労働の建設現場に秘められたエロパワー
しかし、机上での事務処理ではなく、汚れた作業着、すっぴんの顔、ヘルメット跡のついた髪型で、汗まみれになり、働く女性作業員もいる。過酷な環境下で行う作業は、時に体力の限界を通り越して、気力だけで仕事をすることもある。そんな状況で、見た目を気にする人はいない。体力に自信がある男性でも現場の作業に根をあげる時もある。
「この娘、明日は来ないだろうな」——女性作業員と一緒に現場に入ると、私はいつもそんなことを思っていた。実際に次の日からこなかった女性作業員もいる。建設業界での仕事が長かった私にとって「三日坊主」とは、主に建設現場で働く女性のことを指すものだと考えていた。
女性の立場になって考えれば、重労働の建設現場で女性が生き残っていくのは、相当きついだろうなといつも思う。が、一緒に働いている間は不思議とやる気が沸く。エロパワーといえば聞こえは悪いが、そんな火事場の馬鹿力的なスタンスで仕事をしている時もあるのが真実だ。そんなエロパワーを包み隠したいという意図が「けんせつ小町」というキレイな呼称にも出ていると指摘する作業員もいる。深読みしすぎだと思うが、たまに現場でみかける女性と一緒に働く男性作業員の本音は、そういう側面も否めないのではないだろうか。
女性技術者の活躍にジェラシー
しかし、私の女性に対する見方は、とある現場で一変した。女性現場監督がとりしきる作業間連絡調整会議に参加したのがきっかけだ。建設現場では様々な職種の作業員が働いており、各々の仕事には関連性がある。ひとつの作業をする場所の上下左右で、別の作業が進んでおり、このような混在作業の工程をしっかり把握し、作業員が怪我や事故に遭わないように連絡調整する会議が作業間連絡調整会議である。
この会議を仕切る女性現場監督の発言は、すべての作業項目において細かいものだった。他の作業員との言葉のやりとりを聞いて思ったのが、その負けん気の強さだ。昔ながらの職人は頑固者と相場が決まっているが、工程内容に少しでも危険を伴う調整や作業日程の変更が行われる場合、彼女は首を縦に振らない。細かい調整を注文する彼女に、職人たちはなにかとケチをつけていたが、すべての責任は私がとります、と力強い言葉でそのケチを跳ね返していた。
職人の長所はその職に対してのクオリティの高さにある。でも、それゆえに他は大雑把なところが多い。例えば、整理整頓。自分の使う道具類はきれいに整理整頓をするが、休憩時の後片付けや作業時のごみなどは適当にすませる職人が多い。それに納期を気にせず、自分の納得ができる形ができるまで体を酷使し作業する職人もいる。なかにはだらだらと仕事をして納期を守らない職人もいる。
その点でいえば、この女性監督は仕事もきめ細かく、細かいところまで気が回った。それに安全性を重視するのが女性の特徴だともいえる。女は現場で使えないという声は、確かに存在する。だが、それは筋肉しか取り柄のない男の負け惜しみ、という側面もあるのではないだろうか。
建設現場に女性は必要?
高齢化が進む日本では職人の数が足りない現場は多い。無理を強いる現場も多い。建設技術者、技能者の人手不足は、これからも現場の悩みだろう。だからこそ、男性主体の職場を改革し、積極的な女性雇用の採用を取り入れていったほうがいい。しかし、キレイごとでは済まない問題も多い。
負けるな、けんせつ小町!
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施工管理で採用して一年以内、あるいは数年で半人前のまま辞めちゃう男の子が多い中、非力だけど職人さんにも信頼を得たしっかり女子の方が残ってて会社でも現場でも重宝されてる現実をどう思いますか?性別より資質と志向です。